毎日新聞「くりぱる」2005.1.30特集掲載②

素描(スケッチ)漫遊(まんゆう)(たん)

「金城ふ頭界隈」

今回の「素描(スケッチ)漫遊(まんゆう)(たん)」は、昨年10月6日に開業した、名古屋駅と名古屋市港区の金城ふ頭を結ぶ「あおなみ線」沿線が舞台です。

人を惹き付けてやまない、観光スポットやショッピングスポットで賑う土地柄でもない。

いや、だからこそ、緩やかな人と町の関係に、きっと出逢えるはず。

金城ふ頭行き、あおなみ線。

運転席のすぐ後ろにぼくは陣取った。

写真は参考

思えば小さな頃から、ぼくはこの場所が好きだったのかも知れない。

こうして運転席の後ろから、どこまでも続く2本のレールを、父の肩車の上で飽きずに眺めたものだ。

そして家に帰ると、折り畳み式の飯台をひっくり返して壁に立てかけ、飯台の足を運転席のレバーに見立てて、指差し確認を真似、すっかり運転手気分にひたったものだ。

写真は参考

もちろん小学校の入学式に被ったっきりの、学生帽を取り出して、きっちりとあご紐までしめる念の入れようで。

でも小さな我が家の隅々まで、甘辛そうな醤油の匂いが立ち込め始めしばらくすると、必ず台所から母のがなり声が飛んだものだ。

「ちょっと!いつまでそんなことして遊んどるの!ご飯だから、飯台ちゃんと用意しといて!」。

ぼくだけの小さな心の旅は、その途端に現実の世界へと連れ戻された。

一人っ子だったぼくは、一人遊びで色んな職業を真似たものだ。

電車やバスの運転手さんや車掌さんに始まり、うどん粉を練るうどん屋の職人さん。

中でもお気に入りは、「へいっ、らっしゃい!」の台詞つき、寿司屋の大将。

「いらっちゃいませ。お一人様でしゅか?ご注文をどーじょ」。

「???」。

その声にふと振向くと、電卓片手にあどけない娘の姿。

親が親なら子も子だ!

さっき家族で出かけた、ファミレスのウェイトレスを娘が真似ていた。

名古屋駅から24分。

金城ふ頭駅に差し掛かると、眼前には名港トリトンの壮大な雄姿。

写真は参考

さあそれでは、あおなみ線沿線の界隈を、一足お先にのんびりと漫ろ歩いてまいりましょう。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「毎日新聞「くりぱる」2005.1.30特集掲載②」への4件のフィードバック

  1. 一人遊びって子供の頃には誰しもきっと一回はしたと思います。
    多分?誰も知らないと思いますが・・
    私なんか「忍者部隊月光」を明けても暮れても
    一人で遊んでいましたよぉ ❢
    宿敵は妄想した、悪の軍団
    でも!いつも、何故か?ボスを取り逃がしてしまう。
    心の中で、次回に続く・・でした。
    妄想って、何歳になっても楽しいよねぇ!

    1. 「忍者部隊月光」ぼくも大好きで欠かさず見ていたものです。
      もちろんゴッコも落ち武者殿同様、よくやりました。
      しかし!
      話の筋をまったく覚えていないのです・・・。
      その点、落ち武者殿の記憶力には脱毛!
      あっ、いや「脱帽」の誤りでしたーっ!

  2. 先日、あおなみ線に乗ったら、以外にも外国人が多く、港北駅で降りてぞろぞろ歩いて行くので「あれっ!!」って思ったら『名古屋出入国在留管理官』がある駅だったのです。普段は目にしない光景だったのでビックリ!!

    1. なるほどなるほど。
      確かにぼくら日本人は、あまり馴染みのない場所ですものねぇ。

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