「大は小を兼ねる!刃傷松の廊下」

東京銀座の中央区立泰明小学校が、高級ブランド「アルマーニ」監修の制服、一式9万円にも及ぶものを採用するとかしないとかで、先だって来おおいに物議を醸しだした。
その記事に触れながら、小学6年の今頃をつい懐かしく思い出した。
「何はともあれ、3年間は持たせなあかんで。どうせならこれくらい大きい方がええんやない?」。
お母ちゃんに伴われ、小学校卒業を目前にした、バス停前の洋品店「マルエ」の店内での事。

この「マルエ」は、ぼくが通学する中学校指定の制服を扱っており、店内は同い年の男女とその母親らで、てんやわんやの大騒ぎ。
どこの家でも同じような会話が、交わされていた。
「皆さん大は小を兼ねるゆうて、3サイズくらいは大きいな、ブカブカの制服を選んでかれるよ」と、客の対応で天手古舞な「マルエ」のオバちゃん。
「さあ、いっぺん学生服に袖通して、ズボンも履いてみ!ズボンの裾とか胴回りやら、制服の袖の長さを直したらなかんで!」と、「マルエ」で買ったばかりの、ボール紙製の衣装箱から、母が学生服を取り出した。
すると「お父ちゃんも、お前の制服姿、いっぺん見せてまわなかん」と、父まで卓袱台を片隅に寄せ、ビール片手に早くも地歌舞伎の大向うの観客のよう。
すると茶の間の座敷の真ん中まで、まるで小さな舞台のようではないか!
お母ちゃんに言われるまま、試着が始まった。
学生ズボンの胴回りはどうみても、もう一人ぼくが入れるのではないか、と思えるほどのブカブカ。

しかもズボンの裾は、足の裏から優に30cm以上も長く、畳の上を引き摺る格好だ。
すると赤ら顔した父が、「いよっ、浅野内匠頭!刃傷松の廊下や。『各々方、 各々方!お出合いそうらえ! 浅野殿刃傷にござるぞ!』」と、囃し立てる。

お母ちゃんがズボンの裾を折り返し、待ち針を打ちながら笑い転げた。
ぼくはブカブカダボダボの学生服を羽織らされたまま、この先の中学校生活が妙に思いやられてならなかった気がする。
銀座の小学校のアルマーニの制服ほどではないにせよ、両親にすれば小学生から中学生に上がる時の出費は、そりゃあ並々ならぬものがあったことだろう。
現にぼくの同級生でも何人かは、お兄ちゃんやお姉ちゃんのお下がりだと言う、着古された学生服やセーラー服で、入学式に臨んだ者も間々あった。
その点わが家は一人っ子のため、何から何まで新品で揃えるしか手立てはなく、お母ちゃんの遣り繰り算段も、さぞや大変だったに違いない。
だから学生服だって、体の成長に応じ3年間で2着も3着も、その都度買い替えるなど以ての外。
となれば後は、母の得意の洋裁に物を言わせるしかない。
3サイズも大きな学生服上下を、まずは手頃なサイズに縮め、その先はぼくの成長に応じ、胴回りも袖も裾も、折り畳んで隠してあった生地を、徐々に伸ばして行けばよい。

あの時代は、どこのお母さん方も同じ考えだったようだ。
何故なら、ズボンの裾も上着の袖も、2年生になると1本線が入り、3年生になると2本線が、まるで皆で申し合わせたように、くっきりと浮き出していたのだから。

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小学校の頃の私服って
一年365日、白い体操服
今みたいに、ジャージーなんてなかったからねぇ❢
それこそ、柳ケ瀬に出掛ける時は
いっちょらいの服を着て行く・・
中学生になると、まだ、ジャージーなんてなかった。
中学2年か?3年になると、
やっとジーパンがちらほらと世間に出て来た。
憧れのBig john❢けど、中々高価ですから
小遣いを貯めてやっと買う事が出来た。
下はジーパンで、上着は何を?着ていたのか?
全く覚えていない❢
ぼくが初めて買って貰ったジーンズは、確かボブソンだった気がします。
ここ何十年かは、ユ〇クロなどの格安ジーンズばかりです。
でも安物でもけっこう長い間履けるものですよ。
私は双子なので 小学校でのブレザーの制服や体操服から始まり高校生まで 全てが2倍! 本当に大変だったと思います。
息子達が養護学校在籍中は 年に一回のバサーの時 制服や体操服が売れる売れる…。養護学校は 小学部から高等部まで一度に見渡す事が出来るから こういう時に早目に準備するお母さん方が多いんです( ◠‿◠ ) 息子達の制服も卒業後に学校に寄付しました。体操服は 今では寝間着になってます(笑)
ぼくは兄弟がなかったので、お下がりの恩恵を受けられませんでした。
夢ちゃんのご両親は、2倍のお誂えで、それはそれは大変でいらっしゃったと思います。
家のお母ちゃんも家は一人でしたが、それでも自分は着たきり雀で、その都度制服やら体操着やらを工面してくれていたものです。