「社会の窓?から覗く昭和の原風景」

昨年の今頃か、電車内での出来事だ。
行儀よく靴を脱ぎ揃え、5~6歳の少女が車窓を流れ行くネオンの灯りを眺めていた。

若いお母さんの躾けの良さに感心していると少女の声が。
「ねぇママ、ほらあそこ、社会の窓が開いてる!」。
ぼくはパブロフの犬のように、我が股間を覗き込んだ。

すると隣にもう一匹、パブロフの犬が!
まったく同時に、隣のサラリーマンも股間を覗き込んでいた。
そしてバツ悪そうに互いに顔を見合わせ「どうも」と。
確かにどう見てもご同輩である。
「私ら子どもの頃は、女の子に『やだ!社会の窓開いてる!』何て指でも指され様もんなら、一日中クラスの笑い物でしたねェ」。
「やっぱりお宅も、昭和半ばのお生まれで?」。
小声で言葉を交わしていると、「やだ、里奈ちゃん。社会と会社が反対こじゃない!」と。
「まずはやっぱりビールですよね。お姉さん、瓶ビールと栓抜きもお願いね?」。
「せ、栓抜きですか?抜いて来ちゃダメなんですか?」。
「ダメに決まってるよ!瓶ビールにもちゃんと、抜き方ってもんがあるんだからさあ」。
電車で意気投合したサラリーマンは、ネクタイを緩めながら「本当今時の若い子は、何にも分かっちゃないんですよねぇ」と、徐に内ポケットから煙草を取り出し、マッチ棒で火を点けた。
やがて社会の窓から昭和談義へと発展。
乗り換え駅が同じこともあり、どちらからともなく、裏通りの鄙びた赤提灯へと縄暖簾を分け入った。

「おっ、来た来た!」。
彼は瓶ビールと栓抜きを受け取りご満悦。

やおら栓抜きの角で、王冠を上からカンカンと叩き出した。

「やっぱり昭和のビールは、こうじゃなきゃ」。
確かに、どんな効能があったかはともかく、誰もが皆、王冠をカンカラカンカラ叩いたものだ。
「それってもしかして、何かの呪いだったんですかねぇ」と問うた。
「さあ?でもこうやって叩くだけで、美味くなる気がするから不思議ですわ」と。
昭和談義に花が咲き千鳥足で店を出ると、なんと初雪が!
車もまばらな路地裏は、薄ら雪化粧。

彼はコートの襟を立て、駅へと先に歩き出す。
しばらくして真っ白な空き地で立ち止まった。
「こう急に冷えると、つい催しちゃって」。
「いやー、実はぼくもです」。
「じゃあ昔を思い出したついでに、並んで連れションと洒落込みましょうか?」。
「だったらどっちが遠くへ飛ばせるか、久方ぶりに一丁やって見ますか?」。

酔った勢いで、今にも昭和半ばの飛ばし合いが始まろうとしていた。
「でも子どもの頃みたいに、勢いよく飛びますかね」。
二人で股間をゴソゴソしながら、そんな事を囁きあっいると、突然懐中電灯に照らされた。
「ちょっと旦那さん!こんな所で立小便はこまりますなあ」。
不意に警邏中の巡査に咎められ、一気に酔いも吹き飛び、出るものも出ずにタジタジ。
「もう今は昭和半ばとは違いますから、こんなとこで用を足してもらっちゃ困ります!」。
巡査に侘び駅へと歩き出した。
すると「あっ旦那さん。ちゃんと社会の窓だけは、締めてお帰り下さいね」だって。

誰が呼んだか「社会の窓」。
確かに言い得て妙な言葉だった。
しかしそれもまた、遠い昭和のあの日の中へと、いつの間にか埋もれ入ってしまったようだ。
このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。
社会の窓?
多分、今の若い子は、全く分からないでしょう?
昔は何故か?
社会の窓、全開で歩いている人が居たけど
今はあまり見かけなくなった?
って言うか!そんな事気にしなくなったのか?
若い時は・・
「オイ⤴おめ~ぇ!社会の窓、開いとるてぇ!」
「オレの暴れん坊将軍!チャックまで開けるやてぇ!」
「元気やろぅ!」
なんて言って笑わせたもんですぅ!
今日は下ネタの投稿になってしまった。
これしか思い浮かばんかったやてぇ!
ともかく何かにつけ、大らかで寛容な時代でしたねぇ。
この情景をドラマ化して欲しいものです。ほっこりしますねえ!
縄暖簾を分け入って、熱燗のコップ酒と洒落込みたいものです。
社会の窓が開いてる人に気付いちゃった時、笑い合える相手なら良いけれど、知らない人ならどうしましょう⁉早く自分で気付いてぇ〰〰。
確かに教えてあげられる相手と、見て見ぬ振りを決め込まねばならない、そんな相手だってありますものねぇ。
ぼくも見て見ぬ振りしたことがあります。
逆に見て見ぬ振りをされたことも!
アッチャー
最初から最後まで 風景が目に浮かんじゃいました。ホントTHE昭和( ◠‿◠ )
言えるか言えないか?
身内なら言えるけど そうじゃないなら言えないですね。ん!言えなかった(笑)
でも以前 駅で スカートのチャックが開いてる女性を見かけた時は さすがに声をかけちゃいました。
もし私なら「開いてますよ」ってサラッと声を掛けて欲しいから(笑)
確かに確かにデリケートな問題ですものねぇ。
相手の方の風貌にもよって、受け取り方自体も変わっちゃいそうですねぇ。