昭和がらくた文庫51話(2015.02.19新聞掲載)~「国会は茶番の芝屋(しばや)か?」

父は温厚で、いつも母の尻に敷かれっ放し。

だから陸軍歩兵部隊として、中国戦線を戦い抜いたとは、到底信じ難かった。

昭和の半ば。

白黒テレビの「コンバット」が始まると、って何もゴキブリ駆除の話しではない。

参考資料

それは第二次世界大戦下、米軍歩兵部隊の活躍を描いたテレビドラマである。

毎週欠かさず、父と食い入るように見入ったものだ。

写真は参考

当時の男坊主の遊びと言えば、チャンバラゴッコに戦争ゴッコが相場。

友と戦争ゴッコに高じていた時の事だ。

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ヨッチャンが、野良犬に(ふくら)(はぎ)を噛まれる事件が勃発。

狂犬病を恐れ直ちに病院へ。

当時家の近所を根城にする野犬が3匹もいた。

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友を噛んだ一番獰猛(どうもう)な、通称「ボス」。

尻尾を丸めその後に付き従う「子分」。

そしていつもヨタヨタと、片足を引き摺る老犬の「爺」。

ぼくらはヨッチャンの仇討を誓い合い、お宮の境内で戦争ゴッコに高じていた。

するとヨタヨタと「爺」の姿が。

正に飛んで火に入る夏の虫ならぬ老犬。

まずは銀玉鉄砲の集中砲火。

玉が尽きるや、生垣の竹の棒を引っこ抜き、友の一人が見事に尻を打ち据えた。

キャイ~ン。

「こらっ!やめんか!」。

突然自転車の軋むブレーキ音が響き、野太い声が遮った。

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「あっ!」。

物凄い形相の父が現れ、「爺」を庇った。

「お前ら寄って集って、体の不自由な老犬を甚振(いたぶ)るとは何事だ!」と一喝。

敢え無くぼくらの戦意も喪失。

「爺」はヨタヨタ薮へと消え入った。

「噛み付いたのは、あの老犬やないやろ?罪の無いものに、そんな仕打したらあかん」。

いつの間にか温厚な父に戻っていた。

あの憤怒の形相は、負け戦で多くの戦友(とも)を失った父が、ぼくらを諭そうと演じた、一世一代の茶番劇だったのか。

父は老いた野犬の姿に、戦地を追われ逃げ惑った、若き日の自分の姿を、重ね合せたのかも知れぬ。

だがそんな茶番ならまだ許せよう。

これがもし、国の行く末を論ずる国会の場で、そんな慣れ合いの茶番が演じられているとしたら、この国の先行きは…。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫51話(2015.02.19新聞掲載)~「国会は茶番の芝屋(しばや)か?」」への6件のフィードバック

  1. 昔は野良犬っていましたねぇ。野犬狩りもありました。家の向いにちょっと大きな衣料品店の寮があり、犬を飼っていたのですが、時々脱走しては野犬狩りに捕まってました。笑っちゃいましたよ⤴️

    1. 家の老犬ジョンは、首輪抜けの達人で、野良犬と間違われることもしばしばでしたぁ。

  2. そう言えば最近「野良犬」見なくなりましたねぇ!
    子供の頃には、結構、野良犬がいたと思う
    よく学校帰りに見かけて、口笛吹くとついて来た。
    私達の子供の頃は、棒切れがあれば何でも出来た!
    順番にヒーローにもなれたし、悪者にもなれた。
    今の子供達から見れば幼稚だと思う!
    遊びの原点は、ひょっとしたら「棒切れなのか?」

    1. 今どきは、そんな魔法の棒切れだって、そんじょそこらに落ちちゃいませんものねぇ。

  3. 言われてみれば見ませんね。
    時々 猫を見かけるぐらい。なんならイタチや川にはヌートリアがいたりして。
    ここはどこ〜(笑)
    息子達が 散歩中に猫を見つけようものなら「猫ちゃん!」と言いながら飛び跳ねて逃げております( ◠‿◠ )
    予測無しに現れる物には対処出来ないのである。

    1. 昨日、ある老人ホームの庭に茂る木々の周りを、赤とんぼが群れになって気持ちよさそうに舞っていました。
      施設の中のご老人は、黄昏れゆく西の空と赤とんぼを、どんな思い出眺められていた事やら。
      いずれにせよ、やがてゆく道ですねぇ。

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