昭和がらくた文庫28話(2013.03.28新聞掲載)~「一期一会の残り物クッキング」

昭和初期に生を受けた男には、二通りの生き方がある。

敗戦を境に、女性の地位が一変したからだ。

一つは、新たな価値観をものともせず、家族から(うと)まれようが、亭主関白を貫き通した者。

方やいち早く身を(ひるがえ)し、かかあ殿下に身を(ゆだ)ね、上座を明け渡した者とに。

父がどちらを生きたかで、昭和半ばに誕生したぼくの人生も、自ずと宿命(さだめ)られていたのだろうか。

父は典型的な次男坊。

家長の資質も無く、結婚早々、母の御旗の元に下った。

だから我が家は、「男子厨房に立ち入るべからず」など糞喰らえ。

若い頃、上方の菓子屋で、丁稚奉公の経験もあり、鬼饅頭やら蓬餅を拵えてくれたものだ。

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それが起因しているのか、ぼくの唯一の趣味も「残り物クッキング」。

つまり冷蔵庫に残った、前日や前々日の残り物を、繁々と眺め回し、新たなる逸品に仕上げる芸当だ。

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試食係は、もっぱら幼い日の娘。

中でも大好評だったのは、「ホクホクお芋のカツグラタン」。

つまり何日か前の、マカロニ入りポテトサラダと、前日の残り物であるトンカツの切れ端が材料。

写真は参考
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まずはマカロニポテトサラダを油で炒め、それをグラタン皿に盛り付ける。

その上に、微塵切りの玉ねぎを敷き、賽の目切りにしたトンカツと、とろけるチーズを加え、後はオーブンで焼くだけ。

「父ちゃん、これムッチャ美味い!絶対また作ってね」と、娘がペロリと平らげた。

冷蔵庫の残り物は一挙に片付き、美味いとまで(あが)められ、一見誠に良いこと尽くめ。

しかし最大の欠点もある。

それは二度と同じ食材が、同じ分量、残っているなど有り得ないからだ。

「また作って」と、どんなに懇願されようが、もう手の施しようも無い。

それが一期一会、唯一無二の残り物クッキングなのだから。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫28話(2013.03.28新聞掲載)~「一期一会の残り物クッキング」」への10件のフィードバック

  1. 料理してますか?最近のヒット作などありますか?( ◠‿◠ )
    私は 以前 作り過ぎる傾向にあったので 翌日に別の料理に変身させたりしてました。今では 食べる量が減ったので品数を多くして一品の量を減らしてます。運良く残ったら 毎日作る長男のお弁当のおかずに(笑)。
    オカダさんは アイディアマンだから 『残り物クッキング』めっちゃ参考にしてたんですよ( ◠‿◠ )

    1. ぼくも食品ロスをしないように、ステイホームで「残り物のそいでまた残り物クッキング」なぁ~んて、励んでますよーっ!

  2. 料理が苦手な私には残り物クッキングは無縁
    でも調理、出来ないより出来た方がイイねぇ!
    モテ男の条件かも?
    って事は、やはりオカダさんは少なくとも、私よりは・・
    モテ男だねぇ!
    羨ましいぃ⤴

  3. マカロニサラダにとろけるチーズを乗せてオーブントースターで焼いたのを作った事があります。トンカツは無かったけど。トンカツかぁ、残らんなぁ。

    1. どんなモノでもなぁ~んでも、工夫次第で美味しい残り物に七変化しますからねぇ。

  4. 幸せいっぱいの残り物クッキングですね。それにしても美味しそう〜で
    作ってみたくなりました。

  5. (‘0’)久しぶりの岡田さんのクッキング。今も残り物クッキングは楽しんでるのかな❓️おうち時間の多い今は、クッキングは良いよね

    1. ステイホームもすっかり慣れちゃって、毎日毎日残り物クッキングにいそしんでますよ。

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