今日の「天職人」は、愛知県碧南市吹上町の「菊師」。(平成23年11月26日毎日新聞掲載)
秋の祭りも花盛り 子らが露天で立ち止まる 地団駄踏んでねだり声 親はそ知らぬ振りで行く 誰の目当ても菊人形 牛若丸に弁慶と 鍾馗髭した武者人形 子らはたちまち怯え顔
愛知県碧南市吹上町の菊師、鳥居慶昭さんを訪ねた。
「まあ碧南じゃあ、昔は4人おった菊師も、わし一人残っとるだけらあ」。菊人形の骨組みとなる、昔の巻き藁を手に、老人が笑った。

慶昭さんは昭和4(1929)年に、農家で4人兄弟の長男として誕生。
国民学校高等科を出ると、昭和19年に予科練を志願。
昭和20年1月15日、晴れて三重海軍航空隊に入隊し、奈良県天理市に配属された。
しかしその2日前には、三河地震(最大震度7、死者2306名)の巨大地震が発生。
混乱の最中での入隊となった。
「ほんでもあんたあ、航空隊に入隊したって、もう飛行機が練習用の赤とんぼ(九三式陸上中間練習機)しかあれせんだでかんわ。だもんでいつまでたったって、塹壕掘りばっからあ」。
各地の航空隊を転々とし、奈良県で終戦を迎え帰郷。
家業の農作業に従事した。
昭和27年、近所からきみゑさんを妻に迎え、一男を授かった。
「そしたら吉浜で菊師の親方をやってござった、女房方の叔父から、農閑期の間に菊師せえへんかって。年老いても仕事出来るでってなもんで」。

昭和29年、10人の先輩に教えを受け、名古屋城の菊人形展へと通った。

「まあ、今はそんなことせえへんけど。昔はガラ組(骨組み)に使う巻き藁も、細い竹を芯にして、藁を添えて糸で括っただ。菊は根付きのまんま、水蘚を藁で括って、ガラ組した胴の中へ付けるだ。花持ちがええで。でも10月の20日よしか前に付けると、蕾がまだ固いであかん」。

菊人形作りは、まず寸角を組むガラ組から。

「昔はそれこそ、歌舞伎の名場面が多かっただ。ほんでもだんだん時代が下ってくると、歌舞伎自体を知らんもんが多なってまって。しゃあないで、NHKの大河ドラマでも、ぼってかんと」。

次に寸角で組んだガラに、番線を加工して胴周りを形成。
「昔は番線代わりに、竹を篭状に編んどっただ」。
そして下準備が整えば、大分の人形師の手による、顔・手・足・襟・刀などの小道具を取り付け、菊師の腕の最大の見せ場となる菊付けへ。

根付きの菊を胴に付け、7分咲きの菊の花を衣装の形に合わせながら摘芯。
「菊が咲き切ってもあかんし、蕾ばっかじゃ、今度は客に叱られてまうだ。それに気温が上がれば、花が直ぐに開いてまうし、中々思うようにはならんもんらあ。菊だって生きとるだで。それと、衣装の色具合を出すのが大変。なにしろ菊の花には、黒色なんてあれへんだで」。

丸々1日を費やし、1本の菊人形が完成する。
「菊付けで一番難しいのは、袖や裾の尻仕舞いだわ。これが根付きじゃないと、菊の茎を捻りもって、上手いこと付けれんらあ。だで洋服はスッポンポンで、やぬくいでかん」。
最盛期は1年で100本も製作したという。
この道57年の老菊師は、今も全国を飛び回る。
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「天職一芸〜あの日のpoem444」
「菊師」
じつに潔い「天職名」ですね。
澄んだ青空のもと 菊人形展に
行った事を思い出します。
着ていたカーディガンの色まで
思い出してします。
子どもの頃って武者姿の菊人形が怖くって、お母ちゃんの手を力一杯握り締めていた思い出があります。
うっ〜!かわいいですね。
あの くりくり お目々の
オカダしゃんですもんね。
菊の香りもしてきそうな素敵なブログをありがとうございます。
小学校の遠足で、岐阜公園の菊人形展に行った事があります。
確かに!オカダさんが言われるように、ちょっとだけ怖かった!
マネキンなんて見るの初めてだったので
そりゃ~!不気味だわ~さぁ~⤴
蝋人形はもっと不気味!
そうやぁ⤴
オカミノファミリーの皆さんの為に
「ヤマもモフィギュア」でも作るかなぁ!
そうすれば、皆さん淋しくないでしょう!
いいねぇ~⤴
し、し、しかし!
落ち武者フィギュアは、ちと怖すぎじゃあ??
目、見えてるんじゃぁないの?と思わせる人形は怖いよぉ。おひな様だって、夜 一人では怖かったナ。
確かに確かに、それってありますよねぇ。
まるで魂が入っているように感じたりして・・・。
人形の目力ですねぇ。
小さい頃 一度だけ名古屋城菊人形展に行った事があります。
たくさん並んだ菊の花を見た後に 突然の菊人形。暫くの間 動けなかった記憶があります(笑)
どうしても 菊より人形の顔を見てしまうので 怖くて全然楽しめなかったです。
うる覚えだけど バスも装飾されてたような気が…。
名古屋まつりの頃、市バスを菊や他の花で飾った、花バスなるものが家の近所のバス路線にもやって来るって、お父ちゃんとお母ちゃんとバス通りまで見に行ったことを思い出しちゃいましたぁ。