今日の「天職人」は、岐阜県飛騨市古川町の「榑葺き職人」。(平成23年10月22日毎日新聞掲載)
飛騨の山々色付けば どこもかしこも冬支度 雪の便りが来ぬうちに 小屋に榑葺く男衆 爺が起用に榑をへぎゃ 子らが我先奪い合う 屋根の父へと手渡せば 小屋の中から牛の声
岐阜県飛騨市古川町の榑葺き職人、山口末蔵さんを訪ねた。

ミシッ ミシミシ ミシッ―
土の香りが漂う、古民家の土間。
老職人は、二尺四寸に落とした栗材を、おもむろに火で炙り、柄から直角に刃が延びる万力と呼ぶ鉈で、榑へぎ(屋根葺き用に材木を薄く剥ぐ)を続ける。

「火で炙って粘りを出したると、へぎ易いんやさ。冬は材が凍みた方がよお割れるし」。
末蔵さんは昭和2(1927)年、6人兄弟の末子として誕生。
尋常小学校が国民学校へと改称された年に高等科を卒業。
しかし右目に角膜炎を患い、3年も医者通いの日々。
その甲斐があり、失明は免れた。
昭和22年、榑葺き職人の親方に弟子入りし、3年間の奉公へ。

だがやっと修業を終えた頃には、トタン屋根や瓦屋根が急速に普及。
火災に弱い榑葺き屋根は減少の憂き目に。
「何しろ喰うてかなかんで、百姓しながら土木工事や鉄工所に石垣作り、それに乳製品の運搬やら、何でもせよった」。
昭和30年、しげさんを妻に迎え、やがて一男二女が誕生。
末蔵さんの一家に、元気な子どもたちの笑い声が響いた。
しかしそんな小さな幸せに、水を指すような出来事が襲いかかる。
「乳製品の配達途中、車で事故を起こし、障害を抱えてまったんやさ」。
重労働の出来なくなった末蔵さんに、知人が手を差し伸べた。
「遊技場の景品交換の仕事やさ。今も続けさせてまっとるんやて」。
すると今度は、同県高山市の観光施設「飛騨の里」から声が掛かった。

「56歳の時やった。榑へぎの実演してくれと」。
昭和58年から、旧中藪家の古民家を舞台に、末蔵さんの実演が今も続く。(4~10月)
榑へぎ作業は、なにはともあれ木材の確保から。
「榑葺きには、自生しとる栗の木が一番ええ。水に強いし腐らん。特に平らなところでしとなった(成長した)木は、芯が真ん中や。素性のいい木は、ひびれもええ(割れが入り易い)。だいたい100~150年の樹齢、直径20~30センチで、節も無く、すべらかい(美しい)のがええ」。

まず丸太をがんど鋸で二尺五寸に落とす。
「仕上げが二尺四寸やで。唾けの代わりに盥水しぶいて」。
次に丸太に楔を打ち入れ、両刃の大鉈で4分割へ。
さらに細かく割り、火で炙る。
そして立てた材に万力の刃を入れ、半分くらいまで両手両足を使い、柄と刃を梃子にして、そのままへぎながら万力で舵を取り割り進む。
「厚さ約2.5センチの材を、3枚の奇数で割れるようになりゃあ、やっと一人前やさ」。
後は小さな鎌で曲がりを調整し、ソバ鉈で仕上げる。
「だいたい巾が8寸になるように組み合わせ、榑葺き用に束ねとくんやさ」。

飛騨の山間に、もうすぐ冬がやって来る。
一昔も前のことなら、屋根に上った榑葺き職人を見かけただろう。
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茅葺きは知ってますが榑葺きは初めて。でも、薄い板が幾重にも重なった屋根なら見た事はあるけど、ひょっとしてそれの事かしら。
きっと大きなくくりで言えば、きっと榑葺き同様の屋根じゃないでしょうか?
「天職一芸〜あの日のpoem439」
「榑葺き職人」
木の香りがしてきそうです。
栗の木が使われているとは思いもよりませんでした。
飛騨の里 見ているとますます行きたくなりますね。ワイドビュー飛騨を見かけると
思わず手を振ってしまいます。
早くコロナが収束したら、何より出かけたいのは、やっぱり飛騨の高山や古川ですねぇ。
オカダさんは古民家で田舎暮らし出来る?
まぁ~⤴ビールがあればどこでもイイかぁ!
都会に住む人は田舎暮らしに憧れて移住するって聞くけど!
私自身はムリだと思う!
下水道がちゃんとしてないとダメ!
温水トイレでないと絶対!ダメ!
贅沢だと思うけど・・こればかりは譲れない!
でもさぁ~⤴
いつか「沖縄」へ移住したいと思っています。
そんな日が来たら、オカダさん遊びに来てねぇ!
勿論!オカミノファミリーの皆さんもだよぉ!
大歓迎!
ちゃんとオリオンビールを沢山冷やしといてくれたら、もうそれだけで大感激!
あとはスパムがあれば最高!
でも・・・ミミガーとかはちょっと・・・。
小さい頃 九州の祖父母の家に行った時 ご近所で見かけた事はあります。空き家だったり 倉庫代わりになってました。
榑葺きや茅葺きの建物って 住んでない私から見ると ” わ〜!なんだかほっこりしちゃう ” って安易に思っちゃうけど 実際に住むとなると 維持していく為のご苦労は大変なんだろうなぁ〜って思いますね。
昔はご近所の皆さんが協力して、今年の茅葺の吹き替えはどこそこの家で、来年はあそこの家でと決まっていて、ご近所中で協力し合って吹き替えたそうですものねぇ。
今となっては中々維持管理も難しいでしょうねぇ。