今日の「天職人」は、三重県松阪市新町の「結納調進(ゆいのうちょうしん)屋女将」。(平成23年1月8日毎日新聞掲載)
姉は朝から髪を結い 晴れ着を纏い淑やかに 杯親が持ち来る 三畳飾り結いの品 水引細工鶴と亀 襦袢の鯛に日の出樽 御侠な姉がしおらしく 三つ指ついて澄まし顔
三重県松阪市新町、明治8(1875)年創業の、結納調進「魚齊商店」四代目女将の森慶子さんを訪ねた。

「ただいま~っ」。
黄色い通学帽を被った小学生が、引き戸を開け店の中へと駆け込んで行く。
しかも次々と男女合わせて5人もだ。
「ああ、お帰り」。
花鰹製造機のモーターを止め、主は迎えに出ながら白い紙袋に、削り立ての花鰹を詰め込み、子どもらに手渡す。

何と子宝に恵まれた、今時珍しく孫の多い家であろう。
すると「オッチャン、おおきに!」「ああ、また明日おいな(おいで)」と。
「主人は子ども好きなんやさ。せやで毎日ここいらの子が来ると、ああして花鰹をオヤツ代わりに持たすんやさ」。
「この花鰹製造機が子どもらには不思議みたいで、最初はたいがい『オッチャン、何しとんの?』ゆうてやって来て」。主の禎二さんは、鰹節を削り始めた。
途端に花鰹の香りに包み込まれる。
「元々祖父は戦前、結納から婚儀までと、それに纏わる礼儀作法全般も司ってましたんさ。せやで聞いた話しやけど、皇室の伊勢参拝なんかやと、式部職の方とお料理の準備から、お宿の世話までさせてもうたとか」。慶子さんが、創業当時の縄暖簾を懐かしげに見詰めた。

慶子さんは昭和19(1944)年、一人娘として誕生。
名古屋の短大を出ると実家に戻り、花嫁修業。
昭和43年、禎二さんを婿に迎え、やがて三女に恵まれた。
「あの頃は、まだ自宅で式を挙げられる方もよおけ見えましてな。家で料理こさえて、お婿さんの自宅へ運んで。全ての段取りから、一切合切指図しましてな」。
三重県中川以南の結納の手順は、まず婿の家が結納飾りを用意。
それを仲人が嫁の家へ持参し結納開き。
「婿さんとそのご両親は、仲人さんからの吉報を家で待つんやさ」。
婚約が晴れて整えば、嫁の家から結納の1割に相当するお引きが仲人に託される。
「その後、嫁の家で仲人に振舞われた料理が、披露宴当日の料理となって。土産として手渡された焼物、菓子、果物が、引き出物となるんやさ」。

目出度い席で、料理や引き出物がいくらと、生々しい会話をしなくても済ませる寸法だ。
しかし昭和40年代半ば以降には、専用の結婚式場が誕生し始め、自宅での挙式は減少へと向っていった。
「それも時代の流れやで。もう今しは、結納調進どころか、こうしてボツボツ鰹節削ってますんさ」。禎二さんがボソリとつぶやいた。
「昭和60年頃までやったろか。日柄の良い時やと、1日17組も世話させてもうたの。今となっては夢のようやね」と妻。
「中には『小袖料(結納金)は普通でよろしいで、お飾りだけは、気張ってもうて8畳一杯に』と、お仲人さんに頼み込む方までおったほどやさ」と夫。
これまでに、奈良に接する同市飯高町から伊勢まで、約1万組の縁結びを陰で支えた。
遠くを見詰め、往時を偲ぶ共白髪。
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結婚には結納は当たり前の事のように思っていましたが、今は何処にお金を使うかを二人で決めているようですね。
お葬式もお寺さんのいないお葬式場とかもあるようですから、これからの時代は結納を交わす家も減ってしまう一方でしょうねぇ。
それに一緒になっても直ぐに離婚しちゃったりしますから、再婚の結納はさすがに聞きませんから、どうなっちゃうんでしょうねぇ。
令和の時代
結納ってどうなんでしょう?
由緒正しき儀式ですけど・・
因みに、私はやっていません!
でもねぇ!婚約指輪は、奮発したよぉ!
店の人に予算を聞かれて、だいたい「この位かなぁ~」
と言ったら、別室に連れて行かされました。
値段は言えんけど・・
ちょっと!プチ自慢だねぇ!
そいつぁーまた、お気張りになって張り込みましたねぇ!
やっぱ男は、やる時にゃあやるもんですねぇ。
で、元は取れましたか?
結納も その土地によって違うんでしょうね。古い習わしを重んじる地域は 今もなお昔のまま行われているのかな?
いろんな結びが込められているんでしょうから。
でも結婚式やお葬式も ごくごく身内だけというふうになってきましたよね。
一番何を大切にするか?なのかも知れません。
結納品の数々には、「幸あれ」と願う両家の願いと、両家の繁栄のご縁が解けぬよう、硬く結うための祈りや願いが込められているんでしょうね。
Superb post but I was wondering if you could write
a litte more on this topic? I’d be very grateful if you
could elaborate a little bit further. Kudos!