今日の「天職人」は、三重県伊勢市の「生姜糖屋」。(平成十九年八月二十八日毎日新聞掲載)
「お伊勢詣りのお裾分け」 玄関越しに声がした 餡ころ餅か生姜糖? 子供心は有頂天 母はこっそり茶箪笥に 気付かれぬよに仕舞い込む 鬼の居ぬ間に引き戸開け ちょっと一欠け生姜糖
三重県伊勢市で明治43(1910)年創業の岩戸屋、三代目当主の牧戸福詞さんを訪ねた。

伊勢神宮内宮の参拝を終え、多くの老若男女が御札を片手に宇治橋を俗世へと渡る。
茶店で一服するも良し、土産の品定めに講ずるもこれまた良し。
古(いにしえ)から今日に至るまで、連綿と続くお伊勢詣りの光景だ。
「あらっ、この生姜糖昔のまんま。お多福の絵も懐かしいわ!」。
店頭のショーケースを覗き込み、年老いた妻はそうつぶやき夫を引き寄せた。

「まずはこのまま食べてもうて、残ったらお魚の煮付けに使こてもうたり。ホットコーヒーにも砂糖代わりに入れてもらうと、またおいしさが引き立ちます」。
たまたま店頭に顔を出した紳士が、柔和な笑みを浮かべ遠来の客をもてなした。
さすがに間も無く百年を迎える老舗。
さり気ない売り口上一言にも、百年来の巧みさが感じられる。
福詞さんは昭和24(1949)年、四人兄妹の長男として誕生した。
「創業者の祖父は、家具屋の長男として生まれたのですが、やがて弟に家督を譲り、まるで夜逃げのようにお婆さんと二人でリヤカー引いてこの地へ。そして引っ切り無しに訪れる参拝客を相手に、剣菱型の御札を模った生姜糖を売り出したのが始まりで、他のお菓子と違って日持ちが良く遠来の方に喜ばれたそうです」。
東京の大学を出ると、四日市市の百貨店に就職。
進物売り場で外商を担当した。
「伊勢から四日市まで電車で通勤してましたんやさ。最初の頃は急行で。でもそのうちだんだんと疲れて来て、ちょっと贅沢して特急で通うようになって」。
同じ特急電車で名古屋へと通学していた、女子大生を見初め恋心を打ち明けた。
昭和50(1975)年、百貨店を辞し家業に戻り、美知世さんを妻に迎えて三人の男子を次々に授かった。
百年前と何一つ変わらぬ生姜糖は、水と砂糖に生姜汁だけという素朴な完全無添加商品。
「鍋で水と砂糖を煮て生姜汁を絞り、職人の勘で御札型へ流し込んで固まれば出来上がり。湿気の高い時より、からっとした天気の日の方が日持ちは良くなります」。
夏場は五十日、冬場で九十日とか。
最盛期の正月前後は、六人の職人が朝から晩まで、ひっきりなしに生姜糖を製造。
三箇日ともなれば、店売りだけでも一日千枚を越える。
「昔は関東・関西・中京圏からの修学旅行客や、団体ツアーのお客様が一杯で、観光バスも夥(おびただ)しい数でした。それが十年ほど前から修学旅行客が途絶え、団体ツアーの観光バスも減り、今はほとんどマイカーですわ」。
明治・大正・昭和、そして平成の世へと、刻々と移り変わる世相。
その時代その時代にあって、ただ直向きに生きる参拝客を、そっと通りの上から見つめ続けたお多福。

「伝統の灯を消したらいけません。再びお伊勢さんに帰って来られた旅人が『なんや懐かしいなぁ』と、そんな郷愁感に浸ってもらえることも伝統と違いますやろか」。
お多福印の生姜糖。
一欠け口に含んだら、遠いあの日がよみがえる。
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子供の頃、剣菱型の白や桃色の生姜糖を良くお土産で貰っていました。子供心に、「何故生姜糖?」と思っていましたが、日持ちがするからだったのですね。懐かしい⤴️
あんな甘さでも、とっておきのご馳走でしたものねぇ。
何か?
食べた事があるよう?ないような?
見た事はあるけどなぁ~⤴
伊勢と言えば!
どうしても「赤福餅」を思い浮かぶ
♬いせぇ~のめいぶ~~つ♬赤福餅で良いんじゃないかぁ~♪
子供の頃CMソングで良く聴いたけど・・最近、聴かなくなった!
ヤン坊マー坊の天気予報も聴かなくなった!
オカダさんの生歌⤴生ライブ⤴
ボチボチ観たいし聴きたいもんですぅ!
ボチボチ様子を見ながら、やってみますかぁ!
今晩は。
・生姜糖屋のお話ですね。
・生姜糖は、水と砂糖と生姜汁だけで、出来ているのですね。材料は、シンプルですね。
・コーヒーの砂糖にしても魚の煮付けにしても良いのですね。色々使えますね。
・私は、生姜糖は、実物見た事有りません。生姜糖が、有る事知りませんでした。ブログで、勉強になりました。
さり気ない売り口上… 「砂糖の代わりに」 目から鱗じゃないけど 感心しちゃいました。
そんなん言われたら 間違いなく1分後には 私の手の中に(笑)
きっと私の好みの味の予感( ◠‿◠ )
生姜大好きだし 今からの季節の必需品だし 御札さんの型をしてるなら どんな菌からも守ってくれそう!
今では時代に合わせて、珈琲味やら色々あるようですが、ぼくもやっぱり昔ながらの素朴な生姜糖が好きです!
「天職一芸〜あの日のpoem246」
「生姜糖屋」
お口の中にひとかけら…
甘い生姜糖の味になっています。お土産にいただいて箱を開くと
太陽と雲と山 淡い赤色と白と緑に色分けされた一箱の絵の世界になっているものと記憶していたのですが 白色だけのもあったのですね。
ぼちぼちのお言葉に
夢かしら
ほっぺをつねってみると
あ〜夢なんだと思っていると
あっ!!まんまるく なりすぎたほっぺに じんわり あいた あいたたた!
夢じゃない!! もう 朝になってました。
白色の生姜糖はスタンダードで、色とりどりのカラフルな物もありました。
そんな絵画のような生姜糖もあったんですねぇ。