今日の「天職人」は、三重県桑名市の「餅匠」。(平成十九年三月六日毎日新聞掲載)
ホイサホイサの掛け声に 杵振り降ろす若衆の 頬にほんのり赤み差し 真白き湯気が立ち上る ふっくら餅が搗き上がりゃ 椀を片手に子が並ぶ 大根卸し小豆餡 黄粉黒糖お好みで
三重県桑名市、お餅の大黒屋。三代目餅匠の後藤泰雄さんを訪ねた。

「黒棒とか餅菓子は、元々『朝生(あさなま)』ゆうて、朝作ったもんをその日の内に食べるもんやったで、保存料とかは今も一切使こてません」。

大黒屋は昭和七(1932)年創業。
泰雄さんは昭和四十八(1973)年に三人兄弟の長男として誕生。
「父は商売人と職人が半々。祖父は不器用なほど一徹な職人。だからお婆さんは祖父を店頭によう出さんかったほどですわぁ。何でって?お愛想もできやんし、お客さんから『これ焼き立てですか?』と聞かれると、『そんなに冷たいんが欲しけりゃあ、明日の朝また来てくれ』って平気で言うような人やったらしい」。傍(はた)で聞いているとまるで喧嘩を売っているようだったとか。
泰雄さんが中学三年になった年、初代の頑固職人はこの世を去った。
泰雄さんは大学へと進学。しかし大学二年の暮れ、父の胃癌が再発。
已む無く中退し、家業に従事することに。
「三つ子の頃から店ん中チョロチョロして、まあ門前の小僧みたいなもんですわぁ」。
入退院を繰り返し闘病を続ける父に付き、餅匠としての極意を学び取ろうと必死。
しかし父の身体は日に日に蝕まれていった。
病室に商品を持ち込んでは、小さくした餅を父の口に運び入れ「どうや?」と問いかける。

「駄目出しばっかやさ。とうとう最後の最後まで、褒めてもらえやんだ。『巨人の星』の父、一徹みたいな人でしたから。『見て覚えて、技を盗め』が口癖やったし」。
翌年、若干二十一歳の泰雄さんに店を託し、父は還らぬ人となった。
大黒屋創業当時から続く名代の逸品「黒棒」。
幅約七㌢、高さ約五㌢、長さ約四十五㌢。艶光する焦げ茶色。巨大な海鼠のような棒状の餅菓子だ。
「北勢地域特有の、農家に伝わった冬場のおやつとか。だから『懐団子』とか、懐に入れるから『ネコ』とか、色んな呼び名があったらしい」。
上新粉と沖縄産黒砂糖だけの天然無添加。素朴で懐かしい味わいの逸品だ。

まず上新粉に湯を入れ、練りながら蒸し上げる蒸練機(じょうれんき)で生地作り。
次に熱々のうちに黒砂糖を生地に馴染ませ、上白糖を加え甘みを調える。
そうして完成した生地を、今度は臼で一分半ほど搗き、取粉を入れた半切りで成形。半切りとは、盥(たらい)状の浅く広い桶。
「ぼくも黒棒が大好きで、学校帰りに友達が遊びに来ると、必ず皆して食べよったほど。…でももしかしたら、それ食べたさでぼくん家に遊びに来とったんやろか?」。
とにかく朝生ゆえ、出来立てが絶品。
だが冷めて硬くなっても、一㌢ほどの厚さに切り、ホットプレートで焙ればこれまた香ばしさが引き立つ。
「一~二月が一番売れますわ」。毎年十一月から春の彼岸までの限定品。
泰雄さんは二十六歳の年に、東員町出身の妻知美さんと結ばれ、二人の娘を授かった。
「『帰りに黒棒持って来て』って、よう女房から電話が入るんやわ。娘らにも人気やけど、女房が一番黒棒好きかも知れやんわ」。
素朴な味ゆえ、どんなまやかしも一切通じぬ。
ただただ呆れるばかりの直向さ。
三代続く黒棒作り。
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おはようございます。
・餅師のお話ですね。
・黒棒は、職人さんの手作りなのですね。手間がかかりますね。保存料を、使ってないのですね。賞味期限が、早いかも知れませんね。
・(写真)黒棒美味しそうですね。
リピーターさんが、買いに来るのですね。地元では有名なお菓子なのですね。
・私は、黒棒を、実際に見た事が有りません。ブログで見ました。
「これ焼き立てですか?」
「そんなに冷たいんのが欲しけりゃ…」
まるで吉本新喜劇のようなやりとり。
場面を想像したら笑ってしまいました。
「黒棒」食べたことがないけど 多分私好きだろうなぁ〜。味や食感も…( ◠‿◠ )
もしかしたら ういろうにどこか似てるのかな?
十月一日(木) は 十五夜だから お団子と黒棒 いいかも!
黒棒は、めっちゃ美味しいでした!
ぼくも桑名の近くまで行った時は、店に立ち寄ったものでした。
しかし、作っている時期が違うと・・・トホホでした。
黒棒⤴
子供の頃よく食べた覚えがあります!
食感も好きでしたねぇ!
まぁ~⤴
甘い物なら「落雁」以外なら何でも好き!
最近、甘い物食べたのが「御座候」(白あん、小豆)
美味いねぇ~⤴庶民の味!
ちょっとした甘さが、何よりのご馳走でしたよねぇ!
オカダさん、お久しぶりです。
ブログを読んで、色々な人生があるのだと感心します。。
ところで、今日は私の誕生日です。
遅れてもかまいませんので、バースデーソングが聴けると嬉しいです。
オカダさんも、お体ご自愛下さい。
そうでしたか!
お誕生日、おめでとうございます。
次週の10月6日火曜日に、お祝いさせていただきます。
よろしくお願いいたします。