「天職一芸~あの日のPoem 34」

今日の「天職人」は、名古屋市南区の、「庭師」。

糸の切れた凧を追い駆けた 茜空見上げ泣きじゃくる妹  鎮守の老木も木枯らしに鳴く 枝先の凧目掛け裸足で登った老木から見下ろす小さな町 鐘が鳴る 妹の心細げな顔  生傷と日焼けが誇りの腕白時代             怖さよりも勇気が勝っていた 何時からだろう      勇気を怖さが追い越したのは 何故だろう        そうまでして ぼくらが大人になったのは

名古屋市南区で高塚造園を営む庭師、庭哲、高塚徹也さんを訪ねた。

写真は参考。

「片道切符だけを持っての新婚旅行は、京都の職安でした」。高塚さんが重い口を開いた。

高塚さんは、東京の大学へ進学し、ワンダーフォーゲル部で山と出逢った。しかし危険と隣り合わせ。雪山で落石や滑落で仲間を失った。「あの頃は、『山屋』特有の、崖っぷちの緊張感に惹かれて」。相次ぐ事故を目の当たりにしても、決して山を下りようとはしなかった。そんな頃、山仲間に誘われ造園会社でアルバイトを開始。木に登るのも山登りの練習と嘯きながら。

二十五歳の暮れ。姉が保母として勤める、保育園の忘年会で栄養士だった典子さんを見初めた。結婚を目前に控えた頃、ヒマラヤ遠征の計画が持ち上がった。山の本当の怖さを知らぬ典子さんは、「ヒマラヤ行って来たら」と。しかし遠征前の冬山練習で、先輩が滑落。高塚さんは遂に山を下りた。そして結婚式を終えると、庭師の仕事を極めたいと、新妻を伴い京都へ修業に向かった。それが冒頭の、片道だけの新婚旅行の門出だった。

三千院「五葉の松」

古都の名刹では、樹齢千年に及ぶ古木や、三千院の七百年を超す五葉松が待ち受けていた。五葉松の手入れには、一度に三十人の庭師が必要。毎年春と秋に登った。春は松の芽を折り、秋は剪定と葉毟りに明け暮れたそうだ。

「自分が毎年松に話し掛けるからか、松も自分が来るのを待っとるんですわ」と照れ臭げだ。「人偏に木と書いて『休む』と読むでしょう。やっぱり人の側には、木がないと・・・」。

風雪に耐え、里の暮らしを見守り続ける、鎮守の杜の老木と話す、かつての山屋。朴訥とした口調で、魂の欠片を紡ぎ取る様に、静かに静かに呟いた。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「天職一芸~あの日のPoem 34」」への8件のフィードバック

  1. 「庭師」憧れる、職業だなぁ!
    以前勤めていた会社の近くに豪邸があって、毎年正月前になると
    職人さん達が寒さと戦いながら三脚にのって
    庭の木の剪定、芝生の手入れをしていたのを思い出します。
    庭師と言えば思い出すのがジョニーデップ主演の「シザーハンズ」
    なんか?最後は私の目から「涙がひとしずく」落ちてきたような・・
    今度、生まれて来る時は、何でもイイので「職人」になりたい!
    さしずめギター演奏の職人になりたい。
    石川鷹彦さん憧れるなぁ~!
    誰?それって!
    名曲「22歳の別れ」で伊勢正三さんの横でチャララ~ン♪
    とギターを弾いている髭の生えた方です。

    1. 職人さんの多くは、自分の道具を自分で作られる方も多かったですねぇ。
      自分の手に合う道具を!

  2. こんにちは。庭師さんのお話ですね。
    ・高塚さん庭師の修行頑張ったのですね。
    プロの方(職人さん)が剪定したら庭が綺麗になりますね。
    ・庭師さんで思い出しました。最近では無いのですがだいぶ前に庭師さんが、家に来た事有ります。剪定と木を斬りに、来ていました。
    ・自分で出来る方は良いですが、庭師さんが居ないと庭の剪定出来ない方は困りますね。庭師さんの技術,職人さん残って欲しいです。
    ・職人さんの後継ぎ探し大変ですね。
    ・(写真)三千院 五葉松綺麗ですね。

  3. 少し前のブログに 味噌蔵で艶歌を流すと”ええ味に育つ” とあったように やはり樹木も手を掛けてくれる人のことがわかるんでしょうね ( ◠‿◠ )
    季節が変わる度に待ち焦がれているかも⁈(笑)
    何かを極めたいと思い それを実行する…山登りから庭師。
    なかなか出来る事じゃないですよ。
    ブログを読みながら この方の顔つきなんかを想像してしまいました。

  4. シザーハンズ、DVDで所持していて、先日職場のデイサービスで上映して好評でした。僕には庭師といえばバカボンのパパです。個人的に庭師に憧れます。芸術家ですよね。そして自分が亡くなったあとも誰かがその庭を引き継いでいく、、、。なんとも壮大なプロジェクト!

    1. 確かに確かに、仰る通り!
      名立たる庭園の樹木は、何百年ってご存命ですものね。

  5. 追伸・石川鷹彦、木田高介はかぐや姫のアレンジをしていましたね!木田高介の企画もののCD持っています!ヤマモもさん、今度お会いした時にこの話をしましょう。

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