「台風銀座に、台風一家?って」

夏休みも終わり二百十日が過ぎると、「台風銀座」や「台風一家?」などと、大人たちの交わすそんな言葉に恐れを抱いたものだ。
特に伊勢湾台風で、家財を一夜にして失った我が家にとって、子どもながらにそんな言葉さえ、忌み嫌っていたのかも知れない。
「ここらあは、台風銀座やであかんわ」とか、「昨日と変わって今日は、台風一家?のええ天気やねぇ」と。
「台風銀座」って?
父が酔って口ずさむ、あの鼻歌の「たそがれの銀座」の銀座のこと?

でも「ここらあは、台風銀座やであかんわ」と言っていたが、むろんここは東京でも無い。
だが確か駅裏には、「駅西銀座通り」とアーチを掲げる、うらぶれた商店街もあるから、そこのこと?

ってことは、台風が狙い定めたように「駅西銀座通り」を通過する?
いや、それはまだしも「今日は台風一家?のええ天気や」とは?
台風が過ぎ去ると、前夜の嵐とは一転。
澄み切った空が広がる日本晴れとなることも多い。
「台風一家?」という、ヤクザのならず者を束ねる一家には、暴風雨を伴って荒れ狂う乱暴者もいれば、爽やかな日本晴れの様な穏やかな者もいるのか?
或いは、台風に親兄弟がいるとでも?
山ほど疑問が生じた。
しかしあの忌々しい、伊勢湾台風の記憶を呼び起こしてはならぬと、両親にその真意を問う事も憚られた。

だから中学生になっても「台風一過」が、「台風一家?」だと、頑なに信じ込んでいたものである。
中学1年の今頃。
夜半に襲来した台風も明け方に過ぎ去り、登校時には「台風一家?」の抜けるような青空が広がっていた。
国語の女性教諭が教壇に立ち「昨夜の台風、皆さんのお宅では、被害がありませんでしたか?それでは今日は、四文字熟語で尻取りをして、順に黒板に書き出してもらいましょう。じゃあまず先生から出題しますね。日本列島は夏から秋にかけ、昨日の様に台風の通り道となりますねぇ。ですから常に台風に備え、被害に遭わないように努めなければなりません。そうした台風や地震などがもたらすものを、自然災害といいます。そこで四文字熟語の尻取りは、まず自然災害の『い』から始めましょう!」。

先生の話が終わった途端、級長の手が上がった。
そして黒板に「異端分子」と書き上げ「『い』から始まる『異端分子』。意味は、正統から外れている人のことです。次は『分子』の『し』」と、得意満面。
すると今度は、副級長が続いた。
「『し』は、『自然淘汰』。意味は、自然環境に適応する生物は生き残り、そうでないものは生き残れない現象の事です。続いては『淘汰』の『た』です」。
そこでぼくも負けじと、黒板に向かった。
そして堂々と「台風一家」と書き上げ、「『た』は、『台風一家』。これは、ヤクザのようなならず者の台風を束ねる一家のことです」と。
ぼくは「どうよ!」とばかりに鼻高々。
しかし一瞬にして、教室内に爆笑が広がった。
慌てて黒板を振り返ると、「一家」の文字に赤いチョークで大きなバッテンが描かれ、その横に「一過」と先生が訂正しているではないか!
「聞くは一時の恥。聞かぬは一生の恥」。
母の口癖が、ことさら身に染みた。
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日本語って、難しいです。
文字に書けば何となく分かる事でも
話す言葉を聞いているだけでは分からない事もあるもんです。
特に「いいです」って難しいと思う。
「オカダさんのサインどうします?」
「いいです」
これって「欲しいのか?」「いらないのか?」
分からんねぇ!
ヤマもモのサインどうしますか?
絶対いいです!
これは分かりやすいよねぇ!
欲しくない方の「いいです!」
最も、サイン書きたいけどさぁ⤴
私のサイン無いしねぇ!
言葉って、やっぱり相手の表情を伺いながら、同音の言葉の意味をその都度、その言葉の風景を感じながら判断しちゃうものですよねぇ。
ZOOMとかTeamsとかのリモートだと、相手の表情は感じ取れても、その場の温度感とかが感じられないから、ちょっと切ない気がしちゃいますよねぇ。
世界でも一番難しい言語は日本語だとか。ひらがな、カタカナ、漢字。漢字にも音読み、訓読みがありますもんね。多分、読めない漢字、書けない漢字の方が多い(-_-;)
広辞苑とか大辞林とか虫眼鏡を使って読んでると、いかに自分の語彙が少ないかって、つくづく思い知らされちゃいますもの。
言葉って本当に難しいです。
読み方やイントネーションや方言や声のトーンなど。
わからない言葉や気になった言葉を調べると まだまだ勉強不足だなぁ〜って。
普段何気なく喋ってるけど 大勢の人の前で話す時などは 言葉の難しさを痛感したりして。
毎晩寝る前にクロスワードパズルをしてるのですが 知らない言葉がたくさんあって ズルして辞書片手に完成させてます(笑)
知らない言葉の先に、もう一つ奥深い知らない言葉が積み重なって来て、ズルズルと辞書をあっちこっちと引いてゆく、そんな辞書片手の言葉度も素敵じゃないですか!