「昭和Nostalgia」(95)

飛騨市の「広報ひだ」6月号「飛騨びと 言の葉綴り」が掲載されました。

「広報ひだ」の『飛騨びと 言の葉綴り』がこちらの25710.pdf (city.hida.gifu.jp)

残念ながら広報ひだの本誌は、紙面のスペースに限りがあり、掲載文は抜粋版となっております。文字数制限のないweb版も勝田萌さん(古川町)  – 飛騨市公式ウェブサイト (city.hida.gifu.jp)併せてご覧いただければなによりです。

甚だ勝手な㊗飛騨市制20周年記念song「飛騨びと達の、SOYAな SOYAさ」をyoutubeにアップしました~っ!記念ムードで盛り上がる、飛騨市の雰囲気を歌い上げま~す!


今日の「昭和Nostalgia」はコチラ!

写真は参考

子どもの頃、わが家からほど近い公園に、たったの一度だけ「ガマの油売り」なる大道芸がやって来たことがありました。

前もって近所回しに伝えられていたのか、その日の公園は老若男女で黒山の人だかり!

ぼくも大人たちの股座の隙間から、時代がかったその「ガマの油売り」の一挙手一投足を、固唾を飲んで見詰めたものでした。

まずは口上が始まりました。

『さあさあ お立ちあい、御用と お急ぎでなかったら、ゆっくりと聞いておいで。

(中略)

これなる 此の 看板示すがごとく、筑波山妙薬みょうやくは陣中膏ガマの油。のガマの油という膏薬をば売りまして 生業なりわいと致しておりまするで。

さて、いよいよ 手前 ここに取り出とりいだしましたるが それ その 陣中膏はガマの油だ。

(中略)

さてしからば、此の蝦蟇から 此の蝦蟇の油を採るには どういうふうにするかって 言いますと、捕らえ来ましたる この蝦蟇をば、四面に鏡を張り、その下に金網、鉄板を敷く。

その鏡張りの箱の中に、この蝦蟇を追い込む。サア 追い込まれたガンマ先生、己のみにくい姿が 四方の鏡にバッチリと写るからたまらない。

我こそは今業平と思いきや、鏡に写る己の姿の醜さに、ガンマ先生、ビックリ仰天いたしまして、御体ぎょたいから油汗をば、タラーリ、タラーリ、タラーリと流しまする。

その流しましたる油汗をば、下の金網から ぐぐっとき取り集めまして、三七は二十と一日の間、柳の小枝をもちまして、トロリ、トロリ、トローリと煮炊にたきしめ、赤いしんしゃに 椰子油やしあぶら、テレメンテイナ、マンテイカというから天竺てんじく南蛮なんばん渡りの妙薬みょうやくをば 合わせまして、良く練って 練って練りぬいて造ったのが、これぞ これ、此の 陣中膏は 蝦蟇の油の 膏薬でござりまする。

(中略)

何に効くかとうなれば、先ずは しつがんがさ、火傷に効く。よう・梅毒・ひび霜焼けしもやけあかぎれだ。前へ廻ったらインキタムシ、 後ろへ廻ると 肛門こうもんの病。肛門と云っても 水戸黄門様が病気になったんじゃねいよ。

(中略)

えー、どうだい、お立ち会い。こんなに効く蝦蟇の油だけれども、残念ながら 効かねいものが 四つあるよ。

先ずは 恋いの病と浮気の虫。あと二つが 禿はげと白髪に効かねえよ。

(中略)

この刀の差表さしおもてさしうらに 手前の この蝦蟇の油塗るときには、刃物の切れ味ピタリと止まる。

塗ってご覧に入れる。あーら塗ったからたまらない。刃物の切れ味ピタリと止まった。

我が二の腕をば、切ってご覧に入れる。

ハイッ。打って切れない、たたいても切れない。押しても切れない。 引いても絶対に切れない。

(中略)

この刀に ついておりまするガマの油、この紙をもちまして、きれいに拭きとるならば、刃物の切れ味 また、元に戻って参りまする。

さわっただけで 赤い血が タラリ タラーリと出る。しからば、我が二の腕をば 切ってご覧に入れる。

写真は参考

ハイッ。これ この通り。赤い血が 出ましてござりまするで。

だが、お立ち会い、血が出ても心配はいらない。なんとなれば、ここに ガマの油の膏薬がござりまするから、この膏薬をば 此の傷口に ぐっと 塗りまするというと、タバコ一服吸わぬ間にピタリと止まる 血止めの薬とござりまする。

これ この通りで ござりまするで。

さあて、お立ち会い。

此のガマの油、本来は一貝が二百文、二百文ではありまするけれども、今日は、はるばる、出張っての お披露目ひろめ

写真は参考

男度胸で、女は愛嬌あいきょう、坊さんお経で、山じゃ、うぐいすホウホケキョウ、

筑波山の天辺てっぺんから 真逆様まつさかさまにドカンと飛び降りたと思って、その半額の百文、二百文が百文だよ。

さあ、安いと思ったら買ってきな。効能こうのうが分かったら ドンドンと買ったり、買ったり。』と!

写真は参考

本当にガマの油売りのオッチャンの二の腕から、血が滴り落ちたように見え、何とも恐ろしい思いがしたものです。

しかしその後、お父ちゃんにせよお母ちゃんがガマの油を買ったとは、記憶に残っておりませんから、どうせ眉唾もんだろうと、買わなかったに違いありません。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「昭和Nostalgia」(95)」への6件のフィードバック

  1. ガマの油売りと外郎売り。
    どちらも長~い口上ですね~!
    朗読か何かのセミナーで、テキストだった記憶があります。

    1. へぇーっ、そんな口上が朗読セミナーのテキストとして使われてたんですかぁ!
      今度一度、そいつぁーご披露いただかなきゃ!

  2. 中略があるくらい長いのに 楽しかった〜です。今なら聞けそうですけど 今年いちばんの暑さでしょうか こんな日にはよく冷えた炭酸水でも飲んで もうひと頑張りします。

    1. 何だか時代が買った江戸前風の洒落も効かせた、ついつい聞き耳を立てたくなっちゃうような口上ですよねぇ。
      当時は、そんなことも大いなる娯楽の一つだったに違いないんでしょうねぇ。

  3. お祭りの定番?
    ではなかったんだぁね。
    いつの時代もこの手の商売はあったんやね(笑)
    講釈を聴くのが醍醐味!
    そんなところですか。
    親が人込みを嫌うので、
    まぁこんな所へは行った記憶は無いのですが、
    時代劇や寅さんの映画やなんかでは拝見してるから、
    大よその感じはね・・・
    昔、
    駅の地下道での露店で、
    1本1000円のネクタイが売られてて、
    そのネクタイを買おうとすると、
    ネクタイに隠れたところに0がもうひとつ。
    まっ、
    こんなのはいつの時代もありますわね(^-^;

    1. 何だかとっても怪しげな感じがしても、どうにも気になっちゃうんですよねぇ。
      しかしそんな、東三河の王城恋太さんが出くわされたネクタイ売りのような、半ば騙し討ちさながらの危ない商売もありますよねぇ。
      今は電話やメール一つで騙すんですから、ご用心ご用心ってぇとこですねぇ。

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