「ギヤマンの欠片(かけら)」No.4

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まずはぼくの楽曲「花筏」をお聴きいただきつつ、物語の世界をお訪ねいただければこの上なく幸せです。

「ギヤマンの欠片(かけら)」No.4

「大殿、そして若君様。惣兵衛一生の不覚にござりました。斯くなる上は…」

控えの間の中央に坐した惣兵衛は、そう震える声で独り口上を述べ、天井を仰ぎ見た。

参考資料

長年若君の側用人として、内藤家にお仕えした遠い日々が、走馬灯のようにまざまざと蘇る。

惣兵衛はまるで、その懐かしさに抗うよう首を大きく左右に振った。

そしておもむろに白装束の前をはだけ、痩せ衰えた腹を突き出し、剥き身の脇差を懐紙に包み、逆立てたまま握り締める。

写真は参考

後は作法通り、三方を尻に宛がい、最後の力を振り絞り、刃を腹へと突き立てるだけ。

「定安、さらばじゃ。父の分までしっかりと、若君にお仕えするのじゃ。では、介錯頼む」

惣兵衛は晴れやかな表情で、一度だけ己が嫡男を見詰めた。

定安は唇を真一文字に結んだまま、父に頷き鞘を抜き払う。

参考資料

「では、ごめん」

惣兵衛は、切っ先を腹に突き立てようと、渾身の力を込めた。

「爺、早まるでない」

襖が大きな音と共に開かれ、これまで一度足りと耳にしたことも無い、喜八郎の途轍もない大声が響き渡った。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「ギヤマンの欠片(かけら)」No.4」への4件のフィードバック

  1. 侍は凄いねぇ!
    何かやらかしたら切腹って・・
    ヘタレの私は、
    「君さぁ~責任を取って、今から切腹ねぇ!」
    なんて言われた日にゃぁ⤴
    逃げ出して誰も来ないような山に身を隠すねぇ!
    現在に生まれて良かった!

  2. 学生の頃は 「ごめ〜ん」って素直に言えてたのに 社会人になると自信の無さからか 何か言われる度に「すみません」って…。返事が「すみません」になってたりして。年月を重ねたら それは無くなりましたけどね。(笑)
    今度は 子供達相手になると 時に素直になれず 分かってるのに我を張ったりして「ごめん」が言えず。ある日 娘に注意され ” あ〜そうだよね ” と反省し 「ごめん」と言えるようになりました。
    場面や内容によっては 葛藤しながらですけどね。
    でも 元々 可愛げがなくて意地っ張りな性格だから 自分でもイヤだなぁ〜って思っちゃいます。(泣笑)

    1. 自分の欠点は自分が一番わかっている分だけ、それをなかなか認めようとしていない自分がいるものです。
      素直な気持ちのまま生きられたらってつくづく思うこともあります。
      今よりは金銭的にも物質的にも貧しかったながらも、こんなにもギスギスした世じゃ無かったように感じられてならない、あの大好きな昭和のあの頃が恋しくてたまりません。

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