7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.30

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

とても残念ながら、お客様にもそれぞれご事情があり、2席キャンセルが生じました。もしお出掛けになろうかなってお考えの方がまだおいででしたら、ぜひご参加いただければ幸です。お問い合わせは、メールで、herakozu@yahoo.co.jp「オカダミノルほろ酔いLive 2023」係までお気軽に! Liveの詳細は、3月16日のブログをご参照願います。

ビッビーッ、ビビビビー

後方からけたたましいクラクションが鳴り響き、木乃葉と老人の直ぐ後ろに軽自動車が止まった。

写真は参考

「いゃあ、やっと追いついた」。

「あれっ?」。

オーバーヒートを起こしたバスの運転手だった。

「あれからあんたら二人のことが、気んなって気んなってしょうがのうて、会社へ戻ってから着替えて、それで大急ぎで追いかけて来たんさ」。

「へぇー」。

木乃葉は不思議そうに運転手を見上げた。

「それはそうと、おじいさんだいぶしんどそうやなあ」。

「うん、そうみたい。急にグッタリしちゃって・・・ウッ、ウッウェーン」。

今まで自分がしっかりしないとと、張り詰めていた緊張が一気に解け、木乃葉の頬を涙が伝い落ちていった。

「お嬢ちゃん。もう大丈夫だよ、心配しなくても。今からおじさんの車で、おじいちゃんを病院に連れて行くから」。

「いっ、いっやあ、びょ、病院へなぞ、行かぬとも大丈夫じゃ」。

グッタリとうつ伏せていた老人が、捻り出す様な低い声を吐き出し、顔を上げてそうつぶやいた。

「わっ、わしの鞄の中に・・・」。

木乃葉はセカンドポーチのファスナーを開け、老人に差し出した。

老人は中から、小さな丸い漆塗りの漆器を取り出し、上蓋を一捻りして開けた。

写真は参考

老人は漆器の中から、細かい薬草のような物を一摘みし、口の中に放り込んだ。

『「あっ、まただ。まるでチーン、チーンする時のお仏壇と同じ匂いみたい」』

写真は参考

木乃葉は心の中でつぶやいた。

ポーチのキーホルダーが、チリチリンと小さな音色を響かせた。

運転手は、不思議そうに老人の姿を見つめていた。

見る見る間に、老人の顔に生気が蘇って来た。

「さあ、もう大丈夫じゃ。心配かけて済まなんだなコンチャン」。

老人はヒョイッと立ち上がった。

「えらいよう効く薬でんなあ」。

「まあ、一種の漢方薬みたいなもんや」。

「さあ、それじゃあ私の車で、砦岬までお送りしますわ」。

「ええっ、本当に乗せていってくれるの?」。

「ああ勿論ですとも。だって終点までのバス代、前払いでもろたまんまだしなあ。まあバスが軽自動車に変わったと思って、さあさ乗った乗った」。

軽自動車はヘッドライトに映し出された、砦岬へ続く一本道をひた走って行った。

写真は参考

「ねぇおじいちゃん。今何時?」。

「今はなあ・・・8時40分じゃ」。

「ねぇねぇ運転手さん。ここから後、何分くらいかかるの?」。

「もうここからやったら、5分程でじきに着きますやろ」。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.30」への4件のフィードバック

  1. 一本道で思い出すのが
    バスツアーで北海道へ二泊三日の旅行へ行った時
    知床半島へ行く道
    岐阜では考えられない程の
    真っ直ぐな道・・まるで滑走路のよう
    正しく「♬果てしない大空と~♬」ってな感じ!

    1. 日本はまだまだ広いって証そのものじゃないですか!
      それに比べたら世界は、途方も無く広すぎて、限られた世界のほんの一部の一部だけしか、知らずにこの世を去っちゃうんでしょうねぇ。
      もう少し頑張って、まだ見ぬ日本を旅して見たいものです。

  2. 「気んなって 気んなって しょうがのうて…」
    ここ数年 同じような想いになった時には 即 行動するようにしてます。それが相手があっての事でも 私自身だけの事であったとしても。
    あの時 こうしておけばよかった…と思わないように。
    時が経つのってホントあっという間ですからね。

    ps . おじいちゃん きっとそうなんですよね⁈ 心配で心配でたまらないんでしょうね。
    私にも何人ものご先祖様が側に居てくださって いつも見守ってくださってるようです。

    1. 仰る通りです。
      遺された時間なんて誰にも分かりっこないんだから、それだったら残り時間だけは自分の心のままに、自分らしく消費したって、もう誰にもとやかくなんて言われる筋合いじゃないですよねーっ。
      両親やご先祖様は、きっと守護神となってそっと見守ってくれているんだと、ぼくは信じています。

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