
プッシュー プッシュー
砦岬行きのバスは、峠に差し掛かったところで真っ白な水蒸気を噴き上げて止まった。

「ありゃりゃ・・・またオーバーヒートかいな!」。
ワンマンカーの運転手は、取り分け焦った様子も無く鼻歌交じりに前方ドアからバスを降り、水蒸気が最も噴出しているフロントグリルを覗き込んだ。
車内に乗り合わせた3人の乗客たちも、全く驚いた気配すら見せない。
ただ木乃葉と老人だけが、何事が起こったのかと不安そうな表情で座席から立ち上がった。
「お客さん、すんませんなあ。このポンコツまたオーバーヒートしてもうたようで・・・、なっともなりませんで、すんませんがこっから歩んで行ってもらえるやろか?本社から代わりのバス呼んでも、何時になるか知れへんしなあ。ほんま、すんまへんなあ」。
運転手はあきらめ顔で「すんまへん」を繰り返した。
「おおきになあ」。
乗り合わせた老婆が、背中に風呂敷包みを背負ってバスを降りていった。

「まあ、しゃあないし。ボチボチ歩んで行くわ」。
そう言いながら子供の手を引いた母親もバスを降りていった。
「どうやら故障のようじゃ・・・」。
「うん、おじいちゃん歩いて行こう!」。
木乃葉と老人も席を立った。
「すんませんなあ。どこまでおいでんなる予定やったんかなあ?」。
バスから降り立った木乃葉と老人の背中に、運転手が話し掛けた。
「終点の砦岬だよ!」。
木乃葉は振り返ってバスの運転席に向って答えた。
「そっ、そうか・・・」。
「なんで?」。
「ここから砦岬までは、徒歩でどれくらい掛かるんかのう?」。
老人が木乃葉の横から尋ねた。
「こっからですと・・・おじいさんとお嬢ちゃんの足やったら、まだまだかかりますやろなあ・・・次のバスはあらしませんしなあ」。
「おおよそ何時間ほどですやろう?」。
老人は再び不安げに尋ねた。
「そうさなあ、まだこっから砦岬までは10㌔以上もあるから、あんたらの足やったら5時間ほどかかるんやろうなあ」。
「5時間も!ねえ、おじちゃん今何時?」。
「今は・・・4時10分前やわ」。
「って・・・ことは、ぎりぎり9時ってこと?」。
「そうなるのう。さあコンチャン、とにかく先を急ごう!」。
「うっ、うん!」。

木乃葉と老人は砦岬へと続く峠の一本道を歩き始めた。
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懐かしい風呂敷ですね。東京ボン太さんが、よく背負っておられました。
唐草模様の風呂敷なら兎も角、高山の鍛冶橋近くのお蕎麦屋さんの玄関に、全体が唐草模様に塗装されたスーパーカブを拝見したことがありました。
最近の車って
交差点で車が故障して動かなくなって
周りの人が手助けして車を押している姿って
見かけなくなりましたねぇ!
その代わり・・
車両火災が最近ニュースで結構見かけます。
私の場合、最近長年乗っていたマイカーを手放して
今の愛車は電動アシスト自転車♬
その名も「エミリーもモ吉号」
これ最高!お勧めします。
電動アシスト自転車なんて、なんとも贅沢な!
でも結構なスピードを出して、前後に子供を乗せたお母さんが、ものすごい勢いで急に交差点を曲がって来てビックリしたものです。
どうかスピードの出し過ぎにはくれぐれもご用心を!
10キロ以上の道のり 意外と歩けるかも。でも歩く場所にもよるかな。
散歩したり 観光地等で何かを見ながら歩くなら 気付くとたくさん歩いてた…となるんだろうけど 大型ショッピングセンター内で商品を見ながら長時間ウロウロ歩き続けるのは苦手だなぁ〜。と言うより出来ない。
でも このコメントを書きながら思いました。
自分の年齢とこの先の事を考えると 足腰が弱らないように無理なく身体を動かす事を意識しないといけないなぁ〜と。( ◠‿◠ )
そうそう、何事も自分の体と相談してほどほどに!
ぼくも2年前は、歩き過ぎで股関節を痛めて、5分続けて歩くこともままならなくなったことがありました。
健康のためとか足腰のためとかって、歩け歩けって無理したのが祟っちゃったものです。
整形のリハビリに通って、なんとかなりましたが!
まぁやっぱり、のらりくらりとそこそこが一番ですって!