7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.17

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「ごめんくださいな」。

老人は駅前の外れにある観光案内所の、重そうな引き戸を軋ませながら開け、中を覗き込んだ。

写真は参考

「はいはい、只今。ちょっとお待ちを」。

カウンター奥の事務机で、パソコンの画面と向かい合っていた、50代前半と思われる事務員が“ドッコラショッ”と大儀そうに立ち上がり、老人と木乃葉の前へとやって来た。

「あらーっ、おじいちゃんと旅行?いいわねえ」。

事務員は老人に手を引かれて立ち尽くす木乃葉に問い掛けた。

「・・・・・」。

木乃葉は何と答えるべきか思い悩み、老人の顔を見上げた。

「お宿でもお探しやろか?」。

今度は、老人に事務員が問い掛けた。

「あっ、い、いや。オート・・・なんちゅうたかいなあ・・・コンチャン?」。

老人は木乃葉に助けを求めた。

「オート・キャンプ場でしょう」。

ぶっきらぼうに、木乃葉は応えた。

「まあ、ハイカラなおじいちゃんだこと!オート・キャンプなさるんですか・・・ヘエー」。

事務員は勝手に、一人合点している。

写真は参考

「いっ、いや、わしらは・・・その・・・」。

老人は照れながらしどろもどろになった。

「お友達の家族がオート・キャンプに来てるんだけど、その場所がわからないの」。

木乃葉は気忙(きぜわ)しそうに用件を告げた。

「場所かいな・・・この辺にはなあ、オート・キャンプ場が6箇所あるんやさ。なんちゅうキャンプ場か、名前は知っとんかいな?」。

老人は新聞の切抜きを、ポケットから取り出し読み上げた。

「・・・三重県英虞湾のキャンプ場に・・・」。

「英虞湾のキャンプ場ゆうたら、・・・そうさなあ、ここの砦岬オートキャンプ場と違うやろか?」。

写真は参考

事務員は観光案内マップを取り出し、その中の一箇所を指差した。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.17」への4件のフィードバック

  1. 志摩磯部駅はこんな瀟洒な駅に変わってまったのですね。ワシはスペイン村ができる前に、降りたったことがあります。御座か相差に行くバスに乗るためだったかと記憶しています。ひなびた駅やったのに変わりましたね。
    それにしても、観光案内所の50代前半の事務員さんが、「ドッコラショ」と大儀そうに立ち上がる場面には苦笑してまいました。ワシは70代前半のオジイです。いまは(ドッコラショ)の2乗になってまいました。

    1. 一つの動作をするにしても、知らず知らずにそんな妙な掛け声のような合いの手のような言葉がついつい口を衝くようになった気がします。
      それも両親そっくりの言葉で!
      所詮どこまで行こうと親子に違いない証かも知れませんが!

  2. オートキャンプ場
    いいねぇ!
    BBQしながら一日のんびりと・・
    命の洗濯になる。
    *独り言
     我が家のさくらんぼの花
     今年は花の付きが今一ですが、今が満開
     今年もサクランボ・・
     鳥との争奪戦になる。

    1. 準備も後片付けの大変さも含めてのキャンプ飯ですから、その苦労の産物としてビール片手に大自然に抱かれ、大自然の癒しパワーに抱きしめられて楽しめたら最高でしょうねーっ。
      でもその大変さを克服する体力が・・・。
      やっぱ若い頃の楽しみ方かもねーっ。

      サクランボ争奪戦に参加する鳥たちは、今か今かと毎日観察を怠らないんでしょうねーっ。

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