7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.1

今回からは、ぼくのたった一人の娘に毎日送り続けた、132通分の物語「明朝新聞」を少しずつアップさせていただきます。

ちょうど単身東京で、TVドラマのシナリオを書いていた時代。

遠く離れて暮らす小学1年生の娘に、毎日夕方電話をかけていたのですが、毎日の会話ときたら「今日は何をやってたの?」とか「何を食べたの?」だったり。

これもいささか寂しいと思い、娘と実在する娘のお友達を登場人物に少しでも勇気の持てる様な物語をと認めたものです。

完売御礼!!!!

皆様のお蔭をもちまして、完売いたしました。                  後は心を込めて歌わせていただくだけです。                   誠にありがとうございました!       「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」開催決定!!! ~おつまみは各自1品持ち込み、みんなでシェアー~

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.1 始まり始まり~っ!

マンションのベランダから鳥たちのさえずる声が聞こえる。

写真は参考

カーテンの隙間からは、真夏の太陽がジリジリと顔をのぞかせ始めている。

「アッ!大変」。

木乃葉は、壁の時計が7時を少し回っていることに気付き、あわてて玄関へ駆け出した。

ドアの新聞受けから朝刊を取り出し、まだ眠い目をこすりながらダイニングテーブルの上に新聞を広げた。

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そして大好きなアニメ番組のタイトルを小声で繰り返し、テレビ欄を人差し指の先で追った。

ジリリリリリ~ン!

隣りの部屋から目覚まし時計が騒ぎ出した。

「お・は・よ・う」。

ねぼけ(まなこ)のママがやって来た。

「ねぇママ。今日、土曜日でしょう。何で“わがままドミソ”やらないの?この新聞、明日の日曜日のアニメ番組になってるよ」

木乃葉は不満げに、新聞のテレビ欄を指差してママにたずねた。

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「何でって、ママだってわかんないわよ」。

ママはボサボサの髪のまま、木乃葉の脇から新聞を覗き込んだ。

「何言ってるのよ、ちゃんと6時から“わがままドミソ”って書いてあるじゃない!」。

「うそっ!書いてないん・・・だ・・・もの・・・???」。

木乃葉は、ママが指差す新聞を見つめた。

「ほら、ここ。嘘なんかじゃないもん!」。

「ちょっとコンチャン!あんた熱でもあるんじゃないの?それとも2年生になったっていうのに、まだ寝惚けちゃってるのかな?」。

そう言うといきなりママは、木乃葉の額に手を当てた。

「熱なんてあるわけないもん!何でママには見えないの…?ほらここも、あっ、ここにも。ほら、明日のテレビの番組ばっかじゃん!」。

木乃葉はどうにも納得がいかない様子で、新聞を折り畳んでは広げてみたり、ひっくり返したり。

「ネェネェ。それよりもあんた、今日モッくんとサッカーの試合に行くって約束してなかったっけ?」。

カウンターキッチンの奥からママの声が聞こえた。

「アッ!そうだった。どうしよう、遅れちゃう!」。

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木乃葉は慌てて着替えを済ませ、玄関に向かって猛然とダッシュした。

「ちょ~っと待った!」。

ママがサンドイッチと水筒を持って追いかけて来た。

「これ忘れちゃ、腹ペコさんだぞ!」。

「やったーっ!ラッキー、クルクルサンドだ!」。

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クルクルサンドとは、耳を落としたサンドイッチ用の食パンに、みじん切りにしてマヨネーズであえたゆで卵を塗り、文字通りロール状に巻き上げたものだ。

そしてロール状のパンをラップで巻き、両耳の部分をキャンディーのようにひねった、木乃葉お気に入りの定番メニューのお弁当。

「車に気を付けてね」。

「うんッ!行って来ま~すッ!」。

「転んだらチャント起きるんだよ!わかった?」。

「うん、わかった!じゃ~あネ。バイバイキ~ン!」。

木乃葉はTVアニメのキャラクターの台詞を真似て、勢いよくマンションの階段を駆け下りて行った。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.1」への4件のフィードバック

  1. サンドイッチロールかぁ!
    サンドイッチ好きには聞いただけで、そそられるぅ⤴
    私が子供の頃はそんなハイカラな食べ物なんて
    聞いた事もなければ見た事も無い!
    我が家は、もっぱら、酢飯に紅ショウガの
    「なんちゃってちらし寿司」

    1. 家だってお母ちゃんが見よう見まねで作ってくれたサンドイッチと来たら、挟まれているトマトスライスもキュウリも分厚くって、とんでもなくボリューミーでした。
      もっとも母が嫁入り道具に持参した、一本こっきりの切れの悪い菜切り庖丁では、そんな薄切りなんて難しかったのかも知れません。
      或いは野菜嫌いだったぼくに、サンドイッチと言う魅惑の言葉で惑わして、少しでも野菜を食べさせようとしてくれていたのかも。
      まぁ、今となってはいずれにせよ、闇の中ですが・・・。

  2. 娘御さんのノビノビした感じ、ご家族のほのぼの感が伝わってきます。ひるがえって、ウチはどうだったか。悔いばかりがよみがえります。もう、あの頃は戻りません。ところで、オカダさんのお髭はシラガでしたか。

    1. そうですよねぇ。
      ぼくも我が人生、本当に悔いることばかりです。
      ぼくの髭は、ゴマ塩髭になっちゃっています。
      これも加齢ですが・・・。

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