徳永駅界隈「太古の恐竜王国」
長良川沿いの静かな山間に、田園風景が広がる。
徳永駅をわずかに南へ下り、西河橋を西へと渡ると、この牧歌的な風景とは不釣り合いな、決してそこにあってはならぬ光景と出くわすことだろう。
橋の中ほどまで進むと、川の右岸に放置されたままのトラックが1台、まずは目に飛び込んでくる。
ただそれだけならば、まだ救いようもある。
心ない者が、不法投棄でもしていったのだろうと。
しかしそんな悠長なことなど、言ってはいられない光景が、現実に目の前に立ちはだかっているのだ。

想像を遥かに超える巨大な青虫の幼虫が、トラックの荷台から運転席の天井へと、ボッテリと横たわっているではないか!
かつて子供の頃に見た、映画「モスラ」の一シーンのようだ。
幼虫は今まさに、好物の木の葉でも貪るように、運転席を噛み砕かんとしている!
嗚呼、なんたることだ。
21世紀の世ともあろうに。
過去に映画で見た、人々が恐怖に慄くシーンと、目の前の現実とが、猛暑のせいか綯い交ぜになって混濁する一方だ。
「どや?シッコちびっとれせんか?」。
いつのまに現れたのか、顔中髭もじゃの男が、妙になれなれしそうに大声で笑いかける。

何と無礼な!
しかもその男は、少年のように瞳をキラキラと輝かせながら。
「なぁ、もっとすっげえの見せたろか?太古の恐竜王国や。まあ一緒に付いてこやあ」。
男は昭和のガキ大将のように、くるりと踵を返し、工場のような建物へと導いた。
首の伸びたTシャツに、色褪せたジーンズが、なんとも似合いすぎる。
男の名は森藤弘美さん(69歳)。
郡上市大和町で特殊造形を手がける、郡上ラボのれっきとした社長さんだ。

「ここのD‐Boxこそが、わしが40年掛けて造り上げた太古の恐竜王国やて」。

入場料500円(子供/300円)を支払い、恐竜王国へと足を踏み入れようとした途端。
入り口脇の別棟から、アローザウルスが咆哮を上げ、今にも襲い掛かろうとして来るではないか。
「子供なんか入る前に、もうここで怖じ気付いてまって、泣き出すんやで。そんな時は、『やったあ!勝ったぞ!ざまあ見ろ』って感じで、一人ほくそえんどるんやて」。

小さな目を思いっ切り見開き、少女マンガの主人公のような、キラキラとした瞳を輝かせた。
恐る恐る館内へと分け入ると、今から約2億1千万年前から1億4300万年前までのジュラ紀に君臨した恐竜や、それ以降約6500万年前続いたとされる、白亜紀に全盛を極めた恐竜たちが、渾然一体となって巨大な姿を晒しながら蠢く。
人が近付く度、センサーがその気配を察知し、巨大な雄叫びを上げながら、襲い掛かろうと前進するディロフォザウルスや、耳を劈くほどの鳴き声を発し、巨大な羽根を広げ今にも羽ばたこうとする翼竜。
そのいずれの恐竜たちがリアル過ぎて、まるで映画の「生ダイナソー」や「生ジュラシックパーク」にでも紛れ込んでしまったようだ。
「どうや?なかなかの迫力もんやろ?」。

還暦をとおに越えた腕白坊主が、してやったりと胸を張る。
どうやらここには、時系列が存在していないのかも知れない。
ジュラ紀と白亜紀のように、数1000万年という気も遠のく程の時代の長さが、この中にあってはまるで昨日と今日のように甚だしく交錯している。
とすれば、たった数10年前の、昭和の時代に腕白振りを発揮した少年が、平成の世となって姿こそ初老のオヤジに変わり果てながらも、心だけは未だ昭和の腕白少年であったとしてもなんら不思議ではない。
いっそのこと、そんな風に納得してしまえば、これほど愉快で痛快な恐竜王国は無いのだ。
郡上ラボ/郡上市大和町島
このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。
オモシロソウデスネ!今もあるんでしょうか?
今もちゃんとやっていらっしゃるはずです!
ぜひ一度お出かけになられては?
恐竜って本当におったんやろうねぇ!
化石とかちゃんと残っているから
流石に火を噴く恐竜はいなかったと思うけど
恐竜が現在も生きてたら怖くておちおち寝てられない。
けどさぁ⤴
本当に怖いのは人間かも知れないねぇ
最近頻繁に強盗殺人事件が起きているから
皆さんも気を付けて下さい。
寝る時には必ず雨戸を閉めましょう。
確かにこの世で一番恐ろしいのは、人間かも知れません。
あのロスケのプーチ〇とか!
でも逆に一番優しいのも人間なんでしょうけどねーっ。
惜しむらくは、ここで『川口浩探検隊シリーズ』をやっていただいたら、面白かっただろうなと思います。しかしながら、オチャラケ過ぎて駄目だったかな。
いやいやーっ、まさにそんな展開ってありましたよねーっ。(笑)