加茂野駅界隈「一日たった百五十分しか商わない、白い大判焼の木野屋」
兎にも角にも不思議な光景が、駅前のわずかな一角に存在した。
駅の西側、富加坂祝線の車道に出るまでの、ほんのわずか10mにも満たない場所に。
真っ先に目に入るのは、畑の一角に据え置かれた、直径3mほどのトランポリンだ。

残念ながら未だに一度も、そこを舞台に飛び跳ねる子らの姿を見たことがない。
だが、ネットで覆われた入り口には、遊具使用の注意事項が掲示されており、利用を希望する者は、隣のたこ焼木野屋で受付するようにとある。
さて、その隣りのたこ焼木野屋であるが、これが何度訪ねても開いていたためしが無い。
どうやら訪ねた時間帯が悪かったのかと、お昼時や3時のおやつの時間を見計らって出向いても見た。
しかし、いずれも空振りに終わった。

そうなると、しがない物書きの哀れな習性とでも言うべきか、何としてでも確かめずにはいられなくなってくるから困ったものだ。
刑事ドラマの地取り捜査員気取りで、さっそく周りで聞き込みを開始した。
「ああ、あれは家の息子が片手間にやっとるんやて」。
何と!
あろう事か、たちまち有力な情報に接し、あまりにも呆気ない結末を迎えた。
まさに労せず、棚ボタそのもの。
「あっ、丁度ええとこに、本人が家から出て来たわ」。
そう言うと老婆は、木野屋の主人である息子と引き合わせた。
「本業はサラリーマンで、仕事を定時で終えて帰って来てから店を開けるんやわ。だで平日は、夕方の5時半から8時まで。土曜日は午後1時から夜の8時。日祝日は家族サービスせんなんで休みにしとるんやて」。
たこ焼木野屋の主、小関徹郎さん(42)だ。

だから昼間やおやつの時間に来ても、店のシャッターが降りたままだったのだ。
やっと謎が解けたと一人ごちていると、徹郎さんが傍らで大笑い。
「昔からたこ焼屋に憧れとって、やっと3年前に店開いたんやて。家族の生活を脅かさんように、サラリーマンやりながら、片手間の空き時間を使うならという条件付きで」。
人気の商品は、たこ焼も然ることながら白い大判焼とか。
「餡にカスタード、ビターチョコに生キャラメル、それに餡カスタードが定番で、夏限定の冷たいクリームチーズにマンゴープリン、それからイチゴヨーグルトと北海道メロンが好評なんやて」。
さらに夏場は、かき氷とソフトクリームまで楽しめるとあっちゃあ、フル営業のたこ焼屋も真っ青だ。

ところでトランポリンは?と切り出してみた。
「最初は家の子のために設置したんやけど、そのうち店のお客さんの子どもたちも遊びたいって。だで今は10分100円もらっとるんやて」。
道路を挟んだ向かいのガレージでは、簾にペンキで「やさい無人販売」の文字が。
トマトにキュウリ、ピーマンからインゲンにトウモロコシまで、どれでも100円ポッキリだ。
「あれはオヤジとお袋が、畑で作った旬の野菜を並べて販売しとるんやて。オヤジとお袋のもぎたて野菜も美味いけど、やっぱ白い大判焼にはかなわんって」。
一日にたったの150分しか商わない、欲の無い主が自信たっぷりに笑い飛ばした。
たこ焼木野屋/美濃加茂市加茂野町木七五二
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私が小学校時・・
岐阜の火葬場の近くの空き地に
本格的なトランポリンが3台ありました。
確か?10分50円くらいだと思います。
友人に誘われて一度行った事がありました。
中々難しかったけど面白かった。
全くの初心者だったので着地に失敗して
顎から落ちて顎が擦り切れ血が滲んで
痛かった思い出があります。
子供の頃って
痛かったり、ちびったり、何故か多いよねぇ!
それは大変な目にあわれましたねぇーっ。
でもある意味、昭和半ばにトランポリンを体験されるなんて、なんて恵まれたことでしょう!
ぼくなんて子どもの頃は元より、大人になってからも、ましてや初老になった今の今まで、一度もトランポリンを体験したことがありませんもの。
まぁ、体験できたにせよ、とても怖くって大きくジャンプするなんて、出来っこありませんけどねぇ。