毎日新聞「くりぱる」2006.12.24特集 最終号

素描(スケッチ)漫遊(まんゆう)(たん)

350余回、28年。

途方もなく長い間、皆様に愛され続けた「くりぱる」も、いよいよ本号を持って最終回を迎えた。

ぼくは、その中でも終盤、わずか3年と3ヶ月を担当させていただいたに過ぎない。

しかしバックパックを背負い、あーでもない、こーでもないと、愛知・岐阜・三重の各地を旅しては、その町で出逢った方々と刹那的な逢瀬を愉しんだものだ。

ぼくの「くりぱる」は、たかだか3年3ヶ月でしかない。

しかし今こうして最後の原稿に向かい合っていると、39ヶ月の思い出が次から次へと蘇ってしまい、中々本題へと進めないでいる。

恐らくそれはぼくだけじゃないだろう。

編集に携った多くの歴代スタッフとて、ぼく以上の感慨深さでこの時を迎えているはずだ。

本号発行後にくり編関係者で、最後の打ち上げとお別れ会が開かれるとか。

ぼくももちろん参加させて頂く。

そしてフリーペーパーの先駆的な役割を全うした「くりぱる」の冥福を祈り、したたかに酔いつぶれることであろう。

活字離れが叫ばれる昨今でありながらも、多くの読者の皆様の声に支えていただけたことに、ひたすら心から感謝しながら。

ありがとう「くりぱる」、そしてサヨナラ「くり編」。

卒業とか、大晦日とか、旅行の最後の日とか、一つの事が終わる瞬間って、やっぱどことなく寂しいものだ。

名古屋駅前、ホテルキャッスルプラザの一階ロビー。

写真は参考

ぼくは「くりぱる」の初代編集長を待ち続けた。

やっぱり1978年当時の編集長って言うんだから、それなりの御仁だろう。

少なくとも28年以上経ってるんだから、当時40歳だったとしても68歳。

正面入口でホテルマンに傅かれながら、威厳を放つようにやって来たダークスーツ姿の老人。

写真は参考

まさか、あの人はどう見ても編集長って感じじゃない。どっかの名立たる企業の会長さんって感じだ。

「あれっ?あんた、もしかしたらくりぱるの?」。

さっきからぼくの隣りで、退屈そうな人待ち顔でいたちっちゃなオジサンは、どうやらぼくの独り言でも盗み聞きしていたようだ。

「ってことは?」。

「そうそう、俺がそれ!」。

「くりぱる」初代編集長の吉田哲郎さん(69)だった。

昭和31年に毎日新聞の印刷部に入社。

その後「くりぱる」発刊にあわせ、くりぱる編集室に配属された。

「印刷が間に合わんで、放り出されたんだわ」。

それから定年までの20年近くを、音楽担当として歩み続けた。

「最初の頃は媒体として誰ぁれも認めてくれんもんで、レコード会社のプロモーターやイベンターから相手にされず、『クリクリパーか?』って、よう馬鹿にされたって」。

ところがどっこい。

やがて「くりぱる」は、フリーペーパーの先駆けとして名古屋の音楽シーンを牽引し、全国的にも一目置かれる存在へ。

「昔は年間250~280本ほど、ライブの梯子したもんだて」。

名古屋の繁華街を原付バイクで、50半ばのオジサン編集長は颯爽と飛び回った。

「くりぱる」28年の歴史に、人生の20年間を惜しげも注ぎ込んで。

初代熱血編集長は「くりぱる」最終回に、止め処尽きぬ思い出談議の花を手向けた。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「毎日新聞「くりぱる」2006.12.24特集 最終号」への4件のフィードバック

  1. 初めがあれば終わりが・・
    出会いがあればお別れが・・
    それが人生か?
    なんて事、らしくもありませんが
    オカダさんのブログを通して
    きっと、皆さんと繋がっていると信じて・・
    一年に一回はエエ事言うんです!

    1. エエ事の本年総ざらえですかー!
      それにしてもちっとも年末らしさを感じないです・・・。
      でも健康で元気に今年も暮れて行けば、それだけでもシアワセシアワセ。

  2. お疲れさまでした。私も記事を読んで、『行ってみたいな』と思い、実際に行ったクチです。ありがとうございました。

    1. ぼくの拙い文章をご覧いただき、ご興味を抱いていただけるなんて、実に書き手冥利に尽きるってぇもんです。
      ありがたや、ありがたや!

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