「 世界家紀行」⑫

04.7.23中日新聞三河版フジケン連載広告掲載

「一家に2軒、夏の家と冬の家」

過酷な自然に逆らうことなく、大らかな気持ちで向き合う人たちがいる。

トルコの北東部。標高500㍍に位置するサフランボルの町。

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「冬の家並(やな)み」と「夏の家並み」が、イスタンブールへと続く街道を挟むように広がり、一つの町を(かたど)る。

この町に暮らす人たちは、まるで冬服を夏服に衣替(ころもが)えするように、住まう家を引っ越す。

100㍍も下ったギルムシュ谷。

谷底を這うように『冬の家並み』が広がる。

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谷がこの地方特有の、冬の厳しい寒さを運ぶ季節風から町を(さえぎ)るからだ。

逆に『夏の家並み』は、バー・エヴィ(トルコ語で郊外の果樹園の意)と呼ばれ、街道から100㍍も上がった山の斜面に広がる。

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夏の強い陽射しと涼風を受け、棚のぶどうもたわわに色づく。

「ただいま!」とでも、トルコ語で言ったのだろうか。

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家族はぶどう棚の下に集い、(つま)しい食卓を囲み酒を(あお)る。

嗚呼(ああ)、何とありきたりな幸せの瞬間。

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でも待てよ!

ぼくらの国では、いったい何人の人が、この小さくありふれた幸せを手にしていると言うだろうか?

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「 世界家紀行」⑫」への8件のフィードバック

  1. 別荘ですか。いいですね、と思いきや、掃除もしないといけないのでそれはそれで大変なのかな。相応の固定資産税もかかるのでしょうか。神戸町は朝から冷たい風が強く吹いております。風が吹かないところ、ついでに隙間風のない家に住みたいです。

    1. 隙間風ですか!
      でも適度に隙間風が忍び込んでくるからこそ、練炭や七輪で家の中で暖を取っても、昔は一酸化炭素中毒になったりせずに済んだんでしょうね。
      密閉度の高いマンションなんぞでは、それこそ一酸化炭素中毒でやられちゃいますもの。
      昔々、両親と寄り添って暮らした隙間風の家がとっても懐かしくて仕方ありません。

  2. 冬は海の観える沖縄
    夏は梅雨が無い北海道
    たまに岐阜に帰って来る。
    そんな生活憧れるよねぇ!
    一層の事、
    自家用ジェット&自家用クルーザーとかで移動
    夢は膨らむけどねぇ!
    けどさぁ⤴免許取るには歳取り過ぎだぁねぇ!
    次世代に生まれ変わった自分に託そう・・

    1. 見果てぬ夢は、来世の自分に託そうなんて、なかなか落ち武者殿も悟られましたねぇー。
      ぼくも落ち武者殿にあやかって、そう悟ることといたします。

  3. パエリアに入れるサフランは、この地方の原産でしょうか。また、むかし歌った『赤いサラファン』のサラファンとは関係があるのでしょうか。

    1. 調べて見ましたが、どうやら原産地はイランとか。
      でもまぁ、近くと言えば近くですよねぇ。
      また、赤いサラファンとはロシアの女性がルバシカ(ブラウス)の上に着る、ジャンパースカートに似た民族衣装だとか。
      サフランとサラファン、似て非なるものとは、世界は全くもって広いんですねぇ。

  4. おっしゃるとおりです。埼玉県蕨市内の会社借り上げのマンションに住んでいた頃は、この季節になると結露が目立ちました。外気を取り込もうとすると街の喧騒や『土や植物のにおい』がしない、どんよりとした空気でした。田舎出身の私には苦痛でした。土日は郊外へひたすら家族を連れて逃げていきました。いまの、隙間風ハウスが最高です。大地震が来たら、直ぐおだぶつだし。

    1. 「郷に入っては郷に従え」とは言え、何から何まで従えないこともありますよねぇ。
      生まれ落ちた故郷の空気感や味覚など、ソウルフルな部分でどうしても受け入れがたい点もある気がします。
      ぼくの母は鹿児島出身ですが、どうにもあの甘ったるい醤油の味だけは受け入れがたかったものです。
      それ以外の母の故郷鹿児島は大好きですが!

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