「素描漫遊譚」
「偶然乗り合わせた一国の宰相」
随分昔の事だ。
ぼくは明治40年に、岐阜の盲学校に多額の寄付金を寄せた、盲目のニュージーランド女性を取材する為、首都ウエリントンを訪れていた。
彼女の遠い血縁にあたる老人がいると知り、ウエリントンから小型飛行機で、北島の中央に位置するパーマストンノースへと、朝一番で飛んだ。

ぼくは右側の前から5列目。
通路を挟み、2人掛けの席が左右に2列。
前後が15列ほどだったろうか。
最後の乗客として、右側最前列に品のいい老夫婦が載り込んだ。
「はて?どこかでみたような?」。
小型飛行機は、難なく大空へと舞い上がった。
軽い朝食のサービスが終わると、ぼくの後ろの席が何だか騒がしい。
こっそり振り返って見ると、女子高のスポーツチームが試合にでも向かうようだ。
万国どこの女子高生も、「賑やかで結構」なんて思っていると、カメラを片手に最前列の品のいい老夫婦の元へと向かった。
すると老夫人が席を立ち、カメラを受け取った。
女子高生は老夫人の席に座り込み、隣の老紳士に寄り添い、夫人がカメラでパシャ!
女子高生はとても満足げに、夫婦に礼を述べ自分の席へ。
これで終わりかと思いきや、次から次へと女子高生の記念写真は続いた。
ぼくの知らない、ハリウッドのスターだったろうかと思いながら、その微笑ましい光景を見つめていた。
パーマストンノースのタラップを降りると、警察官が一人、老夫婦と気さくに声を交わし、空港玄関に横付けされたステーションワゴンに導いた。

「やっぱりビップなんだ」。
そう思っていると、老紳士が助手席のドアを開け、夫人を乗り込ませて自らハンドルを握って走り去った。
その夜取材を終え、ウエリントンのホテルへと戻った。
ビールを煽って資料整理をしていると、テレビの臨時ニュースが報じられた。
『ダイアナ・デッド』

「・・・嘘だろう?ダイアナ王妃が亡くなったって?」。
信じられない気持ちで、その後の続報に釘付けになった。
しばらく時間が経ち、ニュージーランドのテレビ局の中継に切り替わった。
「あれっ!さっきの!」。
今朝の飛行機で女子高生の記念写真に収まっていた、あの老紳士が沈痛な面持ちで、ダイアナ妃の死を悼む声明を発表しているではないか!

そう、ニュージーランドのジム・ボルジャー前首相であったのだ。
「なんと・・・」。
ぼくにとっては、生涯忘れえぬ歴史的な一日となった。
ダイアナ妃の死と、一国の首相がたまたま載り合わせた機内の女子高生全員と、何の気負いもなく一つの記念写真に収まり、護衛の警官と気さくに言葉を交わし、自らハンドルを握る姿。
後で知ったことだが、その日は休日を利用して地元に夫婦で戻っていたそうだ。
しかしダイアナ妃の事故により、首都ウエリントンへと急遽舞い戻ったとか。

何とも気負いの無い、一国の首相の姿に、大らかでやさしいニュージーランドの国民性を垣間見た。
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あっちこっち旅に出ると・・
色んな出会いがあるもんですが
私なんか旅に出ても、有名人にあった事がない
あっ ❢
一度だけありました、愛知未来博?でしたか?
「ウドちゃん」を見ました。
遠巻きにテレビで見るより結構身長が高かった事を覚えています。
有名人と言えば、皆さんも知っている。
超有名人と3年程会ってない気がするねぇ ❢
えっ?誰?ってか⤴
オカダさんだがねぇ ❢
なかなか芸能人を見かけても、あっとは思うものの、ついつい知らない顔をしちゃいますねぇ。
ぼくなんて無名人ですって!
イヤぁ〜、沢山のいい体験や経験をして来たじゃないですかぁ⤴️
それに比べたら私の人生は平凡❢
この先も、多くを求めずただひっそりとほんの少しの楽しみを⤴️
オカダさん、何か楽しい事を計画してよぉ(他力本願!!)(^_-)-☆
良い体験をしたこともありますが、その分だけ言葉にしない嫌な体験だってしてるものですって!
吉凶織りなしプラマイゼロで終われればそれで十分じゃないでしょうかねぇ。