「遥かなるカリーテンプルへの道!」(第21話)

2001年2月27日 毎日新聞朝刊掲載

「世紀越えに集いし二十歳の群像」

世紀越え大カリーパーティーには、約50人の日本人が訪れた。

その中には、今年新成人となった5人の若者の姿もあった。

誰もが世紀越えのカレーと、素朴な村人達とのふれあいを心から求めて。

しかし会場は、日本人と村人達との間が仕切られ、ライフルで武装した警備員が配置されていた。

「なんで日本人と村人を隔てるんだろう?」。

まったく腑に落ちない。

しかしそれには理由があった。

大晦日の前日、村人達の間で抗争が起き、一人の村人が殺されていたからだ。

大半の日本人を引率してきた某旅行会社は、客に危険が及ばぬようにと、会場の中を日本人と現地人との間を分割してしまったのだ。

結局日本人は会場の奥の安全な場所に囲い込まれ、スチール製のトレイにカレーを盛り付けスプーンでカレーを食す始末。

「これじゃあ日本で、インスタントカレー食べるのと一緒だよ!」、そうぼくは呆れ返ってしまった。

確かに旅行会社とすれば、危険を回避したい気持ちはわかる。

しかしだからといって、村人達と共にカレーを食べたいと、遥々やって来た日本人たちの行動を抑制し、感動を不完全燃焼に終わらせる権利は何人にも無い筈だ。

やがて1回に付き200人ほどの村人達が入場。

地べたに整列して座り、サラサの葉を乾燥させたお皿に料理が盛られる。

会場入口を数100人の村人達が取り囲んでいたものの、何の混乱も無く子供達と小さな子を持つ母親、それに老人や障害者が優先的に席に付いたのだ。

そこには予め整理券を配ったり、大声を張り上げて誘導したわけでもなく、ごくごく当たり前の行為として、若者や男たちは外にたむろし子供や老人に先を譲っている。

警備員の間をかいくぐり、日本の若者たちは村人達が食事を始めた会場に入り込み、一心不乱にカメラのシャッターを切ったり、ボディーランゲージを駆使して「美味しいかい?」と訊ねた。

やがて年配の日本人達も一人増え二人増え、気が付いた時にはほとんどの者が村人達を囲む。

福井から参加した加藤えい子さん(19)は、「子供達の目の輝きと、細い足で大地を踏みしめ、力強く生きている姿に心奪われました。20歳の節目に来てよかった。生きてるって凄いことだと、ここへ来て肌で感じました。」と。

良かった良かった。

それがだって、何よりの心の記念になるのだから!

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「遥かなるカリーテンプルへの道!」(第21話)」への4件のフィードバック

  1. 成人式・・
    二十歳の頃は、成人式なんかに出るもんか❢
    と、思っていた、けど・・
    今思うと式に出るべきだった❕
    やはり同級生と会いたいよねぇ⤴
    同窓会にだって出た事ない・・
    最も、昔住んで居た住所には引っ越しをしている。
    昔の仲間とは音信不通ですから仕方がない❕
    老いて来ると昔の事が懐かしく思えるもんだと分かった。
    けど、今、会うとみんな老けたやろうな~ぁ⤴
    白髪の奴、髪の毛が剥げた奴❕
    それ⤴わしやないか~~ぁ⤴
    せめて、オカミノファミリーの皆さんとは繋がっていたいもんです❕

    1. ぼくは自分の成人式の日、春日井かどこかの成人式会場でお祝いの弾き語りをしていたものです。
      ぼくも落ち武者殿同様、一度も同窓会とやらに出席したこともありませんねぇ。

  2. 村人達の自然な行動…
    今の日本で 果たして同じようになるだろうか?
    ふっと考えてしまいました。
    写真に写る子供達 良い表情してますね!他の皆さん達も含め 優しい空気の中 カレーを味わいながら 喜びやワクワク感を感じてたんじゃないかなぁ〜と想像しました。
    子供達 どんな大人になったのかなぁ…

    1. 確かに屈託のない笑顔がお似合いの子どもたちばかりでした。
      みんなすっかりオジサンオバサンになっているでしょうねぇ。

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