「遥かなるカリーテンプルへの道!」(第13話)

2000年12月12日 毎日新聞 朝刊掲載

「カリーテンプルを設計したただならぬ僧侶」

ブッダガヤ、茜色に染まるカリーテンプル。

既に工事も大半が完了。

大晦日のオープンを、待ち構えている。

カリーテンプルは、約30名を収容する宿坊(宿泊は無料だが、寄付が必要)と、釈迦成道の聖地に因み、仏像だけが安置される、宗旨宗派を超えた祈りの本堂からなる。

このカリーテンプルを設計し、昨年末から四度も足を運んび現場の監督指揮に当たった男がいる。

古本肇滋(ふるもと ちょうげん)49歳。

神戸市北区浄土宗極楽寺住職であり、カリーテンプル七士の一人である。

古本は大学時代、工学部を専攻し卒業後建築関係の仕事に携わり、13年前に住職になった変わり種。

17年前ブッダガヤの村人たちにカレーを振舞った、滋賀県八日市の内田住職から、今を遡る2年半前「ブッダガヤにちょっと用があって出掛けることになったんですわ。良かったら一緒に行かしまへんか?」と誘われたのが運の尽き。

「今思うと内田君は、ぼくの経歴を最初から知っていて、それで誘ったんやないかなあ」と古本は振り返る。

最初は雲を掴む様な話も、図面を引き出すともう止まらない。

本業の傍ら、夢中で建築に向け走り出した古本に対し「またインドやて。お父さんインドに狂うてもうたんや」。

家族の誰もが最初は無関心であった。

しかし古本は、たった一人でブッダガヤの現場に何度も足を運んだ。

まさに自分が手塩に掛けた子供の成長を見守るかのように。

今年春、ぼくは古本さんのお寺を訪ねた。

奥様と雑談を交わし「全国7~8万人ともいわれる僧りょの中でも、ブッダの聖地に自分で設計監督し、寺を建てたのは後にも先にもたった一人、お宅の物好きなご主人くらいですわ!」と笑った。

しかしその一言から、家族の理解も得られるようになったとか。

多少はこんなぼくでも、お役にたてたのだろうか?

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「遥かなるカリーテンプルへの道!」(第13話)」への8件のフィードバック

  1. 全く関係ありませんが、ちょっと気になったもんで❢
    「ブッダガヤにちょっと用があって出掛けることになったんですわ。
     良かったら一緒に行かしまへんか?」
    この発音って、関西?って事は、滋賀県は関西?
    三重県に至っては、東海三県・・?
    どう聞いても、関西の発音だと思う❢
    先日、三重県に旅行に行った時・・
    「○○です~~ぅ⤴」って、言うです。
    その「~~ぅ」が頭にこびり付いて気になって仕方なかった。
    お国言葉は・・故郷の宝です~~ぅ⤴

    1. 揖斐川を西に越えた辺りから、少しずつイントネーションに変化が感じられる気がします。
      ローカル線に揺られながら、なん県もなん県も乗り継いで旅したことがありましたが、徐々に車内の会話のお国訛りが変化してゆくのに気が付いたものです。

  2. ちゃんと考えあってのメンバー選びだったのでしょうね。内田住職、天晴れ!!

    1. 一人の力はどこまで行っても一人の力にしか過ぎないんでしょうが、一人が二人となりやがて三人となって力を合わせれば、三人分以上の力が発揮出来るって事なんでしょうねぇ。
      マンパワーも侮れませんねぇ。

  3. な〜んかいいですね( ◠‿◠ )
    「良かったら一緒に行かしまへんか?」
    そう想える人がいた!という事が。
    そして そう思ってくれる人がいた!という事が。
    なかなか出会えるわけじゃないないと思いますよ( ◠‿◠ )

    1. そんな軽いノリの繰り返しで、人生が送っていけたら、どんなに素敵なんだろうって思っちゃいますよねぇ。

  4. なにかよい影響を遺すために歩んで来られた、お坊さま。体は滅しても志はのこる、素晴らしいと思うイカじじいは馬齢を重ねて69歳になってまいました。

    1. 人間齢を重ねる度、その年齢になるまでは見られなかった景色が、それなりにご覧になれるものじゃないですか?

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