「昭和懐古奇譚~『TVに釘付け!世界40か国以上、5億人以上分の1のぼくの眼(まなこ)』」(2017.7新聞掲載)

「TVに釘付け!世界40か国以上、5億人以上分の1のぼくの(まなこ)

写真は参考 朝日新聞 1969年7月21日付け 人類月に到着 アポロ11号/号外

今も忘れない。小学校6年の夏休みに、入ってすぐの事だった。

人類が月を闊歩すると言う、あられもない大事件が、TVの生放送で世界中に中継されたのは!

わが家の茶の間に居座るカラーテレビは、その日の未明から延々とこの大事件を伝え続けていた。

たまたまその日は日曜日。

まだ日も昇らぬうちから布団も上げ、家族全員が寝ぼけ(まなこ)をこすりながら、歴史的な瞬間の目撃者たらんと、(まばた)きすらためらうように、ブラウン管に食い入った。

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そうあれは、昭和44年7月20日の日曜。

アポロ11号から切り離された、月面着陸船イーグルは、日本時間の午前5時17分に月面へ、無事着陸を果たした。

この映像は世界40か国以上に、瞬時に同時中継され、この地球上で5億人以上の人々が、固唾を呑んで見守ったとされる。

着陸成功時の瞬間視聴率は、なんと68.3%にも及んだそうだ。

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ただただ天晴れ!

その後、アームストロング船長の地球に贈ったメッセージが、通訳を介して伝えられると、ぼくでさえ心が震え、思わず目頭が熱くなったのを、今でも鮮明に記憶している。

そうあの名台詞。

「これは一人の人間にとっては、小さな一歩だが、人類にとっては、偉大な飛躍である」だ。

ぼくは夏休み中、連日報道される一連の新聞記事を丁寧に切り抜き、それをB紙に貼って、アポロ11号の「月までの旅」と題した、夏休みの自由研究をまとめ上げた。

いつもの年ならば、夏休みが残り後3日になっても、まったく手も付けられなかったのに。

だからお母ちゃんなんて、こともあろうに「あんたが進んで夏休みの宿題やるなんて、なんぞ悪い事でも起こらにゃええが」と、真顔で首を傾げたほどだ。

いよいよ二学期の始業式。

初めて自力でやり抜いた、自由研究のB紙を筒状に巻いて、意気揚々と登校した。

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ところが教室に入ってビックリ!

だってクラスの男子生徒の大半が、同じようにB紙を丸けた紙の筒を、自慢げに机の上に置いているではないか!

あまりの光景に目を疑うと同時に、自分があまりに平均的な凡人であることも悟った。

とは言え、所詮はまだまだ子どものこと。

放下時間になろうものなら、校舎の階段の踊り場は、月面着陸船イーグルから、人類初の月面への第一歩を踏み出す、アームストロング船長のあのシーンを、皆が真似た。

口を少し手で覆い、あたかも遠く離れた月から地球への無線交信を装い、アームストロング船長の台詞を口々に真似るのだ。

特に男子生徒たちは、誰もが想像を超えた月への第一歩に、果てしない未来への希望と、大いなる憧れを抱いたものであった。

あの月面に印した、人類初となった第一歩のTV中継に心振るわせた者たちは、あの日の澄んだ心を見失ったのだろうか?

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少なくとも、人類が一つになって、大いなる夢が垣間見られたあの時代のあの瞬間を。

人類が人類を殺め合う愚かしい戦争や紛争、それにテロや暴動など、これほど頻繁にはなかったはずだ。

あの瞬間に心振るわせた、当時の少年少女たちが紛れもなく、今世界中の舵取り役を果たしているのではないのか。

そろそろもう一度、あの時の瞬間の様に、眩いばかりの希望を、全ての人類が抱き合えた、そんな地球に戻して欲しいものだ。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「昭和懐古奇譚~『TVに釘付け!世界40か国以上、5億人以上分の1のぼくの眼(まなこ)』」(2017.7新聞掲載)」への8件のフィードバック

  1. 月か~ぁ⤴
    地球みたいに普通に生活が出来るんだったら
    行ってみたい❢
    富士山だって登った事はないけど、石ころばかりで
    登っていても本当に富士山なの?と思いたくなる。
    月も富士山も、遠くから見ている方が綺麗だからさ~ぁ⤴
    でもさぁ~、やはり一番は我が家が一番イイねぇ!

    1. そうなんですって!
      何でもかでも、あまりに近づきすぎると、見えなくって良かったものまで見ちゃうことになり、ちょっと・・・。
      そんなことって大いにありますものねぇ。
      コロナで学んだのは、なんてったってお家が一番!ってことですねぇ、ぼくは!

  2. 遂に日本で初の民間人が宇宙へ!!そんな時代が来たんですねぇ⤴️しかし、気が遠くなるようなそのお値段。しかも、太っ腹⤴️マネージャーの分もだってよ。ある所にはあるんですねぇ。

    1. 見果てぬ「夢」はあくまで手の届かぬ「夢」だからこそ、ロマンティックな「夢」のままでしょうが、果たしてその夢を現実のものとしてしまったら・・・。
      でもお金持ちの方は、また果てしない「夢」をご覧になるんでしょうねぇ。
      まあ、どーせ無い者の僻みですけどねぇ。

  3. 小さい頃の夢は お花屋さん・保母さん・美容師さん。
    出会った方が素敵だったから。
    今の子供達は 夢を持つ事が出来てるのかなぁ〜。
    誰もが予想しなかった世界になり 飛び出す事も儘ならないこの時代…
    ブログラストの文章 
    正しくその通り!

    1. 昭和は今ほど豊かじゃなかったですが、明日の夢を信じられた時代でしたものねぇ。

  4. 学校で授業を中断してテレビを付けてもらって観てました。月面着陸もさることながら西山千さん、鳥飼玖美子さんらが通訳で出てござって、同時通訳の凄さに驚きました。人類が月に行って半世紀以上ですか。あの微妙に揺れる画面。中原中也の「サーカス」をほうふつさせる映像でした。隔世の感があります。

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