
毎朝すれ違う小学生。
うなだれ気味にランドセルを背負い、重そうな足取りで行く。
だが今朝はいつもと違う。
バックパックを軽々と背負い、足並みも軽快そのもの。
満面に笑みさえ浮かべ。
「そうか!」。
見上げれば雲一つない秋晴れ。

絶好の遠足日和だ。
「お父ちゃんの弁当箱借りて、ご飯におかずと果物も詰めたるで、残さんように食べるんやで」。
小学4年の遠足の朝。
母は新聞紙に包んだ弁当箱を、ナップザックの中へと仕舞い込んだ。
目的地は歩いて片道2時間の、隣り町にある大きな観音様。
だが、誰一人ブツクサ言ったり、弱音を吐く者はいない。
なぜなら、最大の楽しみである弁当の時間が待っているからだ。

誰もがそんな幻想に魅入られ先を急ぐ。
それもそのはず。
弁当の持参は、運動会に遠足と決まっていたから、もうそれだけで立派な一大事件なのだ。
軽快な足取りで、11時頃には目的地に到着。
「昼まで自由時間!」。
教師の声と同時に、境内の外れにある林へと駆け込み、枝を拾ってさっそくチャンバラゴッコ。
ナップザックを背負ったまま、斬って斬られてスッテンコロリン。
「さあ皆、昼にするぞ!」。
皆、教師の掛け声に歓喜の声を上げ、ぼくも弁当箱を取り出した。
「………」。
何と包み紙の新聞紙がベトベト。
水筒のお茶でもこぼれたかと、鼻を近づければ煮汁の匂い。
アルミニウム製の弁当箱を開けてビックリ。

当時、汁物を入れるような密閉容器は、それ自体がかなりいい加減な物で、おまけに使い込んだせいか、肝心のゴムパッキンも緩々に伸びきっていた。
だから密閉容器に入っていたはずの、筑前煮のレンコンや人参がご飯の上に溢れ返り、その間にケチャップを掛けたマルシンハンバーグ、そして真っ赤な蛸足ウィンナーや、デザートのウサギリンゴまでが、煮汁でツユダクの状態の中に浮かんでいるではないか。


何とも例えようのない、不思議な味の弁当。
だが残すわけには行かない。
残して母の逆鱗に触れるよりはましと、不思議な見た目と味の弁当に、ぼくは勇敢にも立ち向かったものだ。

「羽島はやっぱりレンコン。筑前煮や酢レンコン。これから一番美味しい時期やでねぇ」。

羽島市竹鼻町のれんこん料理の竹扇、女将の馬場修子さん(63)は、名物のれんこん蒲焼き丼を差し出した。

「すりおろしたレンコン揚げて、タレ付けて焼いたるんやで体にええよ」。
同町生まれの修子さんは、23歳で文親さん(65)と結ばれ一男一女が誕生。
そして結婚から10年を迎えようとした時だった。
「会社員だった主人が、一ヶ月ほど食も細って元気がなく、どこか悪いんかと。そしたら脱サラして店出したいんやと。そんなことやったら何とでもなるわ、どうせ貧乏育ちなんやでって。主人の背中押したったんやわ」。
それからはや30年。
「毎日大変やったけど、店始めて良かったわ。周りの皆に支えられて楽しいし。やっぱりレンコンの産地やで、先が見通せたんやろか?」。
修子さんは泥まみれのレンコンを、望遠鏡のように掲げ持ち、穴の向こうを覗き見ながら大笑い。

笑う門には福来る!

明日からは、別のシリーズをお届けいたします。
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懐かしすぎる お弁当の中身ですね。
リュックサックを背負ったままって 若い!(子どもでした)何をするのにも真剣だったから楽しかったんですね。
子どもの頃って、呆れ返るくらい何事にも夢中で、真剣でしたものねぇ。
もちろん「遊び」のことですが!
勉強もそうだったら、もう少しましな大人になれたのかも知れませんが・・・。
あまりの暑さ続きに体力の無さに泣けてきます。
電話番号で入力すれば間違いなく目的地にたどり着くと聞いた事があったので 果樹園まで入力したら 音声案内を途中で終了されてしまい。「とほほのほ」でしたが なんとかたどり着きました。
今年は桜の花が咲くのが早かったように 梨の花も早く咲いたので20世紀梨も例年なら今頃まであるのですが今年は終わってしまっていました。
参考写真のような銀杏の葉が色づくのを楽しみにしま〜す。
秋は季節のお恵みだらけですから、大いに秋の味覚を楽しみたいものですねぇ。
遠足の前日って、夜中々寝れなかった。
今も何処かへ旅行するなんて時も同様、寝れない!
オカダさんの「ほろ酔いライブ」の前日も寝れなかった。
ホント!いつまで経っても子供だねぇ!
我ながら、そう思う!
容姿はとても無理な無相談ですが、せめて心根だけは、万年腕白坊主のままでいたいものだと、ぼくもそう思うことがしばしばあります。
「忖度」なんて糞くらえだ!
おかずの汁が滲みたご飯が好きって言う人もいるかも知れませんが、私はちょっと無理・・・だった。まぁ、今は大人ですから食べますけど(>ω<)
ぼくは今でも正直なところ苦手です。
だから鰻丼もご飯にタレを掛けないで下さいとお願いしちゃいますし、牛丼も汁なしを所望しちゃいますもの。
そうそう! うちも母親が作るお弁当は煮物が多かったので 鞄を開けるとおかずの匂いが…(笑)
今だと 優れたお弁当容器があるから 汁漏れもないですね。
長男へのお弁当作りも7年目!
毎朝出来上がったお弁当を覗き込んでチェックしてる長男は 自分好みのおかずの時は 食い入る様に見てるけど そうじゃない時は チラッと見て去って行きます。
毎日お肉じゃ バルーンになっちゃうのよ〜( ◠‿◠ )
家のお母ちゃんのお弁当は、「●●がメッチャ美味しかった」なんて言おうものなら、ずっとそのメニューがこれでもかっていう程続いたものです。
だからいつしか学習して、どんなに美味しかったとしても「●●がメッチャ美味しかった」と品目を特定するのは止めて、「今日も美味しい弁当だった」と言うことにしたものです。
Great post however I was wanting to know if you could write a litte more on this topic?
I’d be very thankful if you could elaborate a little bit further.
Thank you!