昭和がらくた文庫74話(2017.01.26新聞掲載)~「三寺まいり~千の灯りと、千の恋」

川面浮かべた 灯篭は 初雪よりも穢れない

芽生えた恋の渡し船 三寺まいり 雪の宵

瀬戸川揺れる 恋灯り 二人屈んで手を合わす

千の灯りと千の恋 飛騨古川は 雪の中

まずは、ぼくの楽曲「三寺まいり」をお聴きください。

これは他紙の連載で、10年以上も前に、和蠟燭職人の三嶋さんの取材記事に添え、ぼくが(したた)めた一編の枕詞のような詩である。

当時は、三寺まいり当日に飛騨古川を訪ねたわけでも無く、観光案内の中にあった、一枚の写真だけが頼りで、詩を捻り出したと記憶している。

その写真には、雪が深々と降り積もる中、白壁土蔵の居並ぶ瀬戸川沿いに、着物姿の女性たちが一列に並んでいた。

そして紅い(ほむら)を揺らす和蝋燭を、川沿いに献灯し、一心に両手を合わせ、祈りを捧げる。

そんな姿がぼくの脳裏に鮮明に焼き付いたものだ。

奇しくも今ぼくの目の前に、その恋絵巻が惜しげもなく再現される。

今年は例年になく雪が少なく、関係者をやきもきさせたとか。

しかし満を持してこの冬最大級の寒波が、1m30cmほどもの大雪を運んだ。

「只今より、雪像ロウソの点灯式を執り行います」。

屋台会館前のお祭り広場の一角には、雪を固めて造られた、直径約1m、高さ約2mにも及ぶ巨大なロウソクが聳え立つ。

すると中折れ帽に黒マント姿の粋な御仁が、どこからともなく現れ出でたではないか!

よくよくそのお顔を除き込んで見れば、山高帽に黒マントに身を包んだ飛騨市の都竹市長だ。

着物姿のお嬢様から松明を受け取るや否や、直径10cmはあろうかと言う灯心に、松明の火を翳した。

ついに飛騨古川の風物詩、「三寺まいり」が幕を開けた。

古川ヤンチャ男が、奇祭の「動」なる「起し太鼓」なら、(しと)やかな女は「静」なる「三寺まいり」。

古川に、今なお連綿と受け継がれる、男と女の恋絵巻。

千の灯りと 千の恋

飛騨古川は 雪の中

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫74話(2017.01.26新聞掲載)~「三寺まいり~千の灯りと、千の恋」」への8件のフィードバック

  1. 三寺まいり
    ちょっと、季節外れだけど、残暑厳しから涼し気でイイかも?
    しかしさ~ぁ⤴
    近年、暖冬で雪ロウソクを作るのも一苦労だと思う!
    コロナウィルスが終息したら・・
    飛騨古川観光大使のオカダさん企画
    飛騨古川絡みで何か?イベント出来るといいですねぇ!

    1. そんな日が訪れてくれるのを心から願うばかりです。
      身近に忍び寄るコロナの恐怖に、なんとしても打ち勝ちましょうね。

  2. 初めて三寺まいりを知ったのはオカダさんと出会ってから⤴️ご一緒は出来ませんでしたが、たまたま見てた情報番組でオカダさんが雪像ローソクに点灯する姿が懐かしいく思い出されますʕ•ٹ•ʔ

    1. 黒いマントをはおらせていただいての、恐れ多い雪像ローソクに点灯でした。
      もう一度、雪が深々と舞い降りて来る三寺まいりの和蝋燭の揺れる、幻想的な灯りを眺めたいものです。

  3. 今 コロナ終息や平和を願う 8月2日と3日に打ち上げられた 長岡の花火の様子をBSで見ています ☆☆☆ 

    朝晩は少しだけ 秋を感じられる心地良い風が フワ〜ッ と ♥ 

    三寺まいり まで あと 5ヶ月を切りましたね ☆☆☆ 

    瀬戸川沿いにずらーり並んだローソク
     ロマンティック でした
    あの時は 白いローソクに灯しましたが
    今度は 赤いローソクを灯に行けたら ♥ 

    1. こんな混迷の時代ですが、希望の赤い灯を燈しに行かなくっちゃいけませんよねぇ。

  4. ロマンティックで神秘的…
    恋物語がなくても そっと手を合わせたくなりますね。
    一度も行った事はないけど もしも その地を歩く事が出来たなら 心静かに願いを呟いてみたいものです。

    1. シーンと町全体が静まり返り、ひそひそ声の話し声すら、降りしきる雪が包み込んでしまい、ただただ千の灯りが仄かに揺れる姿には、心の奥底までが洗い清められるようです。

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