昭和がらくた文庫55話(2015.06.25新聞掲載)~「梅雨の最中のハイカラ野球盤ゲーム」

梅雨の真っただ中では、三角ベースの草野球もままならぬ。

となればお目当は、新発売の野球盤ゲーム。

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ご近所でもハイカラと評判の友の家。

そこに野球盤が入ったと聞きつけ、仲間と興味津々で押し掛けた。

本物さながらの野球場を模した、60㎝四方の盤には、ダイヤモンドが描かれている。

投手役が、ボールに見立てたパチンコ玉を、レバー操作で打者に向かって放つ。

一方の打者役は、指先でバットのレバーを手前に引き、投球に合わせボールを打つ。

打球が内野と外野に設けられた穴凹に入ると、その表示に従いゲームを進めるのだ。

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野球小僧4人にとって、それこそまさに垂涎の的。

本物の野球盤を目の当たりにし、もう誰もが大興奮。

早速野球盤でのプレーが始まった。

まずは皆でジャンケン。

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対戦相手と順番を決めるためだ。

夏に始まる高校野球を真似、自分の好きな名門校を選ぶ。

しかし当然、皆が我先にと選ぶのは、郷土愛もあり地元東海三県の名門高校に絞られる。

しかも一番人気は、その前年に春夏連続優勝を果たした、中京商業と相場は決まっていた。

しかし所詮ゲームはゲーム。

草野球の上手い下手など以ての外。

ただ偶然の運の良さだけが頼り。

高校野球の名門だろうが、そんなの糞喰らえ。

あれほど血眼になって一番籤を引き当てた、優勝候補の中京商業など、初戦で敢え無く敗退。

優勝は、ジャンケンで一番カスを掴んだ、野球盤の持ち主の友だった。

本物の草野球では、いつも精彩を欠くのに、野球ゲームだけは別格。

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恐らくこっそり、一人で練習を繰り返していたのだろう。

だがそんな野球盤ゲームのブームも束の間。

擬似的な野球に飽き果て、梅雨が明けるや否や皆一斉に、いつものどんぐり広場へと飛び出し、三角ベースの草野球に興じた。

だから唯一野球盤ゲームだけが自慢だった、お金持ちの友の家へなど、もう誰一人足を向けることもなかった。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「昭和がらくた文庫55話(2015.06.25新聞掲載)~「梅雨の最中のハイカラ野球盤ゲーム」」への4件のフィードバック

  1. 私達の悪ガキ達は
    誰一人、高価な野球盤ゲームを持ってる奴は居なかったです。
    「あんな子供だましの野球盤ゲームなんて面白ないてぇ!」
    と、悪ガキ同志、慰めあっていました。
    だから、この歳になっても一度も野球盤ゲームした事はありません!
    それに、この自粛期間で「ボードゲーム」の人気だとか?
    自慢しますが「人生ゲーム」だってやった事ない!
    まぁ~⤴あたしの場合「リアル人生ゲーム」だからさぁ!

    1. 正直ぼくも子どもの頃は、野球盤を買って貰えませんでしたが、いい加減大人になって、ってかすっかりオッサンになってから、まるで息子の玩具を買う振りをして、自分用に衝動買いしたことがあります。
      息子なんていないのに!
      でも野球盤は一人じゃできなくって、一人娘に相手を頼んでもまったく興味がなく、一二度相手をしてくれただけでもうそれっきり・・・。

  2. 私は ボウリングゲームかな。
    レーン手前の人形の手にボウリング玉に見立てたパチンコ玉?を乗せて…。
    2,3人でお友達の家にお邪魔して遊ばせてもらってました( ◠‿◠ )
    でもすぐに飽きちゃうから 結局外に出て走り回って。
    当時は それだけで十分楽しかった気がします。

    1. そんなもんですよねぇ。
      やっぱりしょせん子供騙しってやつですものねぇ。
      それよりも外を走り回った方が、どんなに楽しかったやら。

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