今日の「天職人」は、津市大門の「カステヒラ職人」。(平成23年7月9日毎日新聞掲載)
津の殿さんもお気に入り 南蛮渡来カステヒラ ほんのりあもて柔らかと 城下じゃ噂もちっきり 欲に眩んだ餅菓子屋 南蛮辛子練り込んで 店に出したはいいけれど 客はたちまちヒーリヒリ
津市大門で大正12(1923)年創業の三華堂。二代目カステヒラ職人で、伊勢の国、藤堂藩家老中川蔵人の日記から嘉永時代のカステヒラを復元した阿部真三さんを訪ねた。

―天保九年九月十六日 夕刻藤太方へ塩片口遣わし候処、カステイラ子り養甘種々貰ふ 当地初めての精品也―
―嘉永六年十月二十六日 御上への御土産昨日来登手製のカステヒラ一重、御熨斗代り御肴相添え、その余種々持参―
伊勢の国、藤堂藩家老中川蔵人の日記である。
この表紙裏には、「カスデヒラ法」と題し、配合表が添えられ、息子の登が手製したカステヒラを、藩主に持参したと記録されている。

文中には「カステイラ」「カステヒラ」「カスデヒラ」と、その都度表記も異なり、いかに当時の珍品であったかが偲ばれる。
「平成15年のことですわ。商工会で地元の歴史について、三重大の大橋剛先生から、家老の日記にカステヒラ作りが書いてあるゆうて聞きましてな。それでいっぺんに虜になってもうて」。
真三さんは昭和24(1949)年、6人姉弟の長男として誕生。
「父が50歳の子でしたで、そりゃあもう跡取りがやっと出来たって、大変な喜びようやったとか」。
高校を出ると、岐阜市の洋菓子店に住み込み修業へ。
「創業当初は和菓子一本やったんが、戦後になって洋菓子も始めてましてな。昭和30年代に入ると、ロールケーキがえらい評判で、行列も出来るほどやった」。
昭和46年、喜寿を目前にした父に乞われ家業へ。
家伝の和菓子作りを、年老いた父から学び取った。
昭和60年、知人の紹介で裕子さんと結婚。
残念ながらもその前年、跡取り息子の婚儀を一番待ち侘びた父が、力尽き静かに息を引き取っていた。
やがて父と入れ替わるように、一男一女が誕生。
寿ぎがもたらされた。
「蔵人の配合表で、息子の登が作ったカステヒラは、今しとちゃいますで、そりゃあ大変でしたやろ。竃に薄い丸鍋を載せて、そこへ小麦粉に鶏卵と砂糖を加えて練った生地を入れ、上から鉄板を被せ、そのまた上に炭火を載せて焼いたとか。当時はオーブンもありませんし、砂糖かて白砂糖なんて手に入りませんやん。サトウキビ搾っただけの原糖ですわ。せやで黒砂糖の色が勝ってもうて卵の色が出やん。ましてや水飴も加えやんで、パサッパサでシットリしとらん。でも黒砂糖の風味があって、なとも言えやん素朴な味わいやさ」。
日記と出会い、わずか3ヶ月後には発売へと漕ぎ付けた。
「蔵人さんの末裔に許可をいただいて、日記の表紙の写真を包装に使わせてもうて」。

真三さんは出来たばかりの完成品を携え、四天王寺の蔵人の墓前へと真っ先に手向けた。
「今のしっとりしたカステラと比べたら話にもならん。せやけど嘉永の頃は、殿さんでも中々口に出来やん、そりゃあ高価な南蛮菓子やったんやろな」。
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およそ190年前の味 カステヒラ。
黒砂糖の風味で 少しだけパサしっとりなのかな?
口に入れると しっかりとした食感で ゆっくり味わえる気がします。
当時は どんな方がどんな風に作ってたのか?あまりにも遠すぎて 想いを馳せれな〜い(笑)
でも食べてみたい( ◠‿◠ )
道具も材料もままならない、そんな文明開化以前の日本でも、苦心惨憺、美味なるものを追求した熱血漢たちがいたんですねぇ。
「天職一芸〜あの日のpoem 425」
「カステヒラ職人」
色が?と思って見ていましたけれどもこの時間に見ると黒砂糖味に負けてお腹がグッグッと空いてきました。
高校生の時に何度作ってもカピカピのロールケーキ作りましたわ。
それも懐かしいです。
カピカピのロールケーキとは、これまた斬新なもののようですねぇ!
カステラ
いいよね~~ぇ⤴
美味しいよね~~ぇ⤴
お酒呑めないけど
洋酒でしっとりとしていたら言う事なし!
そうそう、でもそれってカステラと言うよりも、ブランデーケーキとか?
まるで絞ったら、ブランデーが滴り落ちてくるような!
ぼくも今度、ラム酒入りのパンケーキでも焼いてみよっかな?
以前は、カステラは頂くもので自分で買ってまでは食べなかったような。せいぜい買ってもカステラの切り出し。しかし最近、何故か良く買うようになりました。「歳のせい!」なんて言わないでぇ〰。
子どもの頃、お母ちゃんが買ってくれたカステラは、切り出しのたっぷり詰まったお徳用袋入りの物ばかりでした。
でもたまのたまのたま~に、どなたかからの頂き物とおぼしき、しっとりもっちりとした濃厚なカステラを口にすることが出来た時にゃあ、そりゃあもう大喜びだったものです。