今日の「天職人」は、三重県伊勢市二見町の「塩ようかん職人」。(平成22年8月21日毎日新聞掲載)
二見興玉浜参宮 大注連縄の夫婦岩 男岩女岩の間から 朝一番のご来光 禊落として伊勢詣 二見を後にする前に ちょいと一服お茶請けは 天の岩戸の塩ようかん
三重県伊勢市二見町、大正末創業の五十鈴勢語庵。二代目主の木下昌次さんを訪ねた。

「ありがたいもんですやろ。あの夫婦岩のご来光。きっと朝一番のご褒美ですに。夏至は夫婦岩の間から、冬至は内宮の宇治橋の、鳥居の真ん中から朝日が上がってきますんやで」。

昌次さんは昭和18(1943)年、5人兄弟の末子として誕生。
大学を出ると、神戸の真珠専門商社で営業の職を得た。
「神戸に行った時から、母が『帰ってきてもうたろか?』と、何べんも父に聞いとったそやわ」。
昭和45年4月、ついに呼び戻されることに。
「それまでは土産物屋をしよって、『戻ったはええが、これから何すんのや』って」。
市内の和菓子屋へと通い、伊勢菓子の教えを請い、試行錯誤を2年繰り返した。
昭和47年、市内に住む幸子さんを妻に迎え、一男一女を授かった。
そして延べ4年の歳月を投じ、主力となる銘菓「伊勢物語」や「貝合せ」が完成。
やっと販売へと漕ぎ付けた。
「親父がいつの間にしとったんか知らんけど、『伊勢物語』も『貝合せ』も、商標が取ってあったんやさ」。
息子の将来のためにと、父はこっそり先手を打っていたのだろう。
―この地の恵みを取り入れた名物を作りたい。この地で生まれた者の務めとして―
そんな想いに光が差したのは平成9年。
「製塩規制が緩和されて、岩戸館の女将が塩を焼き始めたんやさ。その天の岩戸の塩使って、何か作ろうと1年かけ試行錯誤を繰り返して。各地の塩まんじゅうを参考にしたり。でも隠し味に使うんやなしに、粗塩の旨味を出しとてな」。
翌年、「岩戸の塩ようかん」が完成した。

二見名物となった岩戸の塩ようかん作りは、糸寒天を一晩水に浸け込む仕込みに始まる。
寒天が溶けてから小1時間煮て、砂糖を加え沸騰。
小豆の漉し餡を加え、沸騰させて2時間ほど煮詰め、煮上げる直前に岩戸の塩を入れ再び沸騰。
そして型へと流し込み、1日冷ましてから竿ものや抜きものへと加工。
毎朝5時には作業を始め、1日300本が製造される。
そして竿ものは、孟宗竹の皮で大切に包み、1枚1枚商品名と、屋号を押印した和紙を挟み込む。

「製造から販売まで、みな女房と二人きりでしとんやで、どうせなら印刷したもんより、1つずつ印を押した方が、心まで受け取ってもらえますやろ。そりゃあ少々、見た目は微妙にちごとっても、それが一つの味と違うやろか」。昌次さんが妻を見つめた。
塩辛くは無く、程よい甘味に奥行きが深い。
何より後味が、さらりと小気味いい。
「店でも、お抹茶と塩ようかんを、お出ししますんさ。ちょっとお伊勢さんまで来たゆうて、わざわざ買いに来られる遠方の方もおいでやで。ありがたいこっちゃ」 。

粗塩本来の旨味を活かしながらも、決して出しゃばり過ぎはしない。
コクが命の、天の岩戸の塩ようかん。
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羊羹にちょっと
渋めのお茶で「プッハァ~⤴」
ええねぇ!
まぁ~⤴こんな気持ち・・
オカダさんには分からんやろうねぇ!
酒飲みの気持ちが分からんけどねぇ!
でもなぁ甘いもん食べ過ぎに注意しょう
小太りっちだからさぁ
オカダさんも飲み過ぎに注意ですよぉ!
実はぼくでも、この塩羊羹は、一本丸ごととまでは行きませんが、半分くらいなら一度に食べれましたぁ!
甘さと塩味の黄金比は、ただただ天晴でしたぁ!
「天職一芸〜あの日のpoem382」
「塩ようかん職人」
先日つまようじでプチって刺して食べる ようかんを見つけて 思わず
「懐かし〜い」と小さい声で言ってしまい
最後のひとつを買い求めてしまいました。
塩ようかん 美味しそう〜です。
もうそうだけではなく孟宗竹も
エコで今に通じていて魅力的ですね。
何とも手作り感があって、作り手の真心まで包み込まれているような、ありがたい羊羹でした!
甘い物なのに塩を効かせようと考えた人って凄いわぁ⤴️塩っ気が何ともいえぬ旨さ。
そうですとも!
子どもの頃、糖度の少ないスイカに、お母ちゃんが塩を一振りすると、魔法にかかったかのように甘さが増して、キツネに摘まれたようでしたもの。
この職人さんのお父さんの先手必勝って感じ。いや 先見の明があるのかも( ◠‿◠ )
「心まで受け取ってもらえますやろ」
素敵ですよね。こういう考え方。
きっとそのお人柄が 商品の味わいとして表れているんでしょうね。
お抹茶と塩羊羹 最高!
店先でも女将さんの点てた抹茶と塩羊羹が、その場で味わえるんですよ!