今日の「天職人」は、岐阜県羽島市竹鼻町の「蓮根蒲焼職人」。(平成21年2月17日毎日新聞掲載)
夏の盛りは沼一面 お盆のような葉が覆う 朝陽にポンッと花咲かせ 夕陽に閉じる蓮の花 腕白小僧泥だらけ パンツ一丁で泥鰌(どじょう)追い 種が宿って立ち枯れりゃ 蓮根掘って得意顔
岐阜県羽島市竹鼻町、蓮根料理の店「竹扇(ちくせん)」の馬場文親(ふみちか)さんを訪ねた。

「2年前やわ。弟子が暖簾分けで店を開いたもんやで、家の店2週間閉めて、皆で手伝いに行きました。20年勤め上げ、助けてもらったお礼に」。
トヨタショックに震撼する昨今。
世界有数の優良企業ですら、社の存亡を優先し、形振り構わず弱者を切り捨てる末世。
それに引き換え、この男の生き様はどうだ。
暖簾分けで店を休業し、それまでの弟子の献身に報いた、その潔さたるや。
これぞまさしく、激動の昭和を支えた労使像ではないか。
白衣に身を包み、わずかに背を丸める謙虚な男が、一層大きく見えた。

文親さんは昭和19(1944)年に次男として誕生。
「私が母のお腹に出来た途端に父は召集され、昭和20年1月にルソン島で戦死したんです。だで一度も抱いてもらってもなきゃ、顔すら知りません。でも文親ゆう名は、父が戦地で名付けたそうです」。
父は眠れぬ戦地で、夜毎未だ見ぬ我が子に思いを馳せた。
そして男女どちらが産まれても困らぬよう、それぞれの名を手紙に認(したた)めたと言う。
戦後は育ち盛りの男子2人を抱え、祖父母と母が野良仕事で支えた。
「ここらは沼地が多いもんやで、昔は家でも蓮根作ってましたわ」。

地元の商業高校を出ると、航空機部品製造会社の営業職に就いた。
「昔から30歳前後には、自分で商売やりたいと思っとったんやて」。
昭和43年に同級生の妹、修子さんと結ばれ、一男一女を授かった。
世は高度経済成長の真っ只中。
仕事に子育てと、充実した日々が続いた。
33歳になった昭和52年。
突然、アメリカへの赴任話しが持ち上がった。
「アメリカまで行って、家族がバラバラに暮らすのも」。
文親さんは悩み抜いた挙句、ついに昔の夢であった自営の道を選択することに。
スポーツ用品店やカラオケスナックが候補に挙がった。
しかし「母が、『夜の商売やと、昼間はどうすんや』って反対するもんやで」。
文親さんは知り合いの和食店を頼り、無給で半年間の修業を始めた。
「とにかく店出すことが前提やったで、修業しながら開店準備やわ」。
翌年ついに、現店舗を開店。
それから16年ほどが過ぎた平成6年。
羽島市から地元特産品を使った料理開発の話しが持ちかけられた。
「もう特産と言うたら蓮根やで、何店舗かが寄り合って試行錯誤して」。
そしてついに蓮根蒲焼丼が誕生。
まず蓮根を摩り下ろし、繋ぎに上新粉を入れ、渋み消しに砂糖を足して練り上げ、焼き海苔の上に厚さ5㍉程に敷き詰め油で揚げ、あっさり目のタレを塗った逸品だ。

蓮根のモッチリ感は、鰻の柔肌そのもの。
「蓮根汁を綿棒で鼻の内側に塗ったら、花粉症もイチコロやて」。
それにビタミンCは蜜柑の1.6倍とか。
「先人が植えた蓮根を、次の代に引き継ぐのが務め」。
それを信条に、愛弟子へと暖簾を分け、料理を伝授する。
「いつ私が引退してもいいようにな」。
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自分で作るのは、せいぜい天ぷらかきんぴらくらい。蓮根の蒲焼き丼、美味しそう⤴️食べたい!!据え膳で(^o^)v
ぼくも取材後、見よう見真似で作って見ましたよ。
なかなかモッチリとした食感で、かば焼きのタレを塗ってしまうと、小骨の無い鰻と思えなくも無かったものです。
でもやっぱり竹扇の親父さんの味とは違いますねぇ。
本物はもっと香ばしくって美味しかったですよ。
自営の道に進む際 昔から○○をやりたかったから…ではないって事に ちょっとビックリしてしまいました。
でも 元々器用な方だったんでしょうね。
普段 蓮根料理を作る時 摩り下ろした事がないから 試してみようかな⁈
敢えて 蓮根のみじん切りか千切りを混ぜると 食感がまた変わってくるかも⁈
確かに仰る通り!
蓮根のみじん切りか千切りを混ぜると、食感に深みが出て、これまた堪りませんねぇ!
今晩は。
蓮根蒲焼き職人のお話ですね。
蓮根の蒲焼き美味しそうですね。固いのかな?
私は、蓮根の蒲焼きは、知りませんでした。ブログで知りました。
こんばんは(^-^)/
地元から隣が羽島市で良くモーニングにも出かけます(^-^)
実は私羽島市でヘルパーをやっていたので仕事の仲間説くに仲良しの友達2人で竹扇屋さんに寄ってれんこんカツ丼を食べていましたよ(^-^) れんこんカツ丼はコリコリしてとっても美味しかったですよ(^-^) また行きたいです(*^ー^)ノ♪
そうでしたかぁ!
竹扇さんは、有名店ですものねぇ。