今日の「天職人」は、岐阜県美濃市の「模型飛行機職人」。(平成20年7月22日毎日新聞掲載)
海を見下ろす丘に立ち 南の風を待ち受けた プロペラ回しゴム巻いて 模型飛行機掲げ持ち 稲穂揺らして風が舞う ぼくらは息を止めたまま 機体を風に横たえて プロペラ放す夢飛行
岐阜県美濃市、模型飛行機製造のヨシダ。二代目主の吉田斉さんを訪ねた。

卯建(うだつ)の家並が続き、カフェやファッション小物店も、風情ある景観を穢さぬ様ひっそりと商いを営む。
「家も何屋やろうって、よう観光客の方が硝子窓から覗いとるんやて」。斉さんは、表を漫ろ行く観光客に目をやった。
斉さんは昭和27(1952)年、二人姉弟の長男として誕生。
「親父は戦地から復員して、裸一貫で美濃和紙の行商を始めたんやて。そのうちに模型飛行機の翼用にって、強度の高い美濃和紙に手差し印刷して、メーカーに納め出したのが始まりやわ」。

小学校の高学年になると、模型飛行機の本体作りに没頭。
「プラモデルが世に出るまでは、模型飛行機全盛期やったでね。男坊主はみんな、空を自由に飛び回る飛行機に憧れたもんやて」。
昭和38(1963)年頃、取引先メーカーが倒産の憂き目に。
当然負債も負った。
「何より問屋が困り果ててまったんやて。それで親父に『模型飛行機メーカーやってくれんか?』って」。
戦後平和の象徴は、団塊の世代を筆頭として、町中に溢れかえる子どもの姿だった。
模型飛行機は学校教材としても取り上げられ、てんやわんやの大忙し。
昭和49(1974)年、斉さんは大学を出ると家業に就き、父と共に機体やプロペラの研究と改良に励んだ。

子ども達の大空駆ける夢を、ゴム動力のプロペラに託し。
「そうやねぇ。ゴムがたった0.1一㍉太いだけで、パワーは全然違ってくるんやで」。斉さんはそう呟き、プロペラをくるくると回しながらゴムを捩じ上げ、そっと手を離した。
機体が静かに上空を飛行し始める。
「だいたい1分半くらいは飛ぶようになっとるんやて」。
店内上空をゆっくり旋回する姿は、実に由々しい。

「まぁ、ラジコンみたいに自分で操縦出来んで、翼の角度で少しずつ調整せんとあかんのやわ」。
滞空時間を競う、定番商品のグランプリにスーパーアロー。
その他31~32種類の商品がここで生み出される。
昭和58(1983)年、同県羽島市出身のえり子さんを妻に迎え、女子二人を授かった。
「何の因果か、長女は航空会社に勤務しとるんやて」。斉さんは一人大笑い。
「そうそう。ちょっとこれ見てくれん?今から117年前に、この『カラス型飛行器(「機」でなく「器」の表記は、発明者である二宮忠八氏の命名)』は、ライト兄弟の実験飛行より12年も早く、空を飛んだんやて」。

ダビンチを始め、古くから人類は空への夢を見続けた。

そして明治36(1903)年、ついにライトフライヤー号の有人飛行で、空への旅を現実のものとした。
南の空から沸き上る入道雲。
少年のぼくには甘い綿菓子に見えた。
いつか大人になって大空に飛び立てたなら、雲の綿菓子を腹一杯食べようと心に決めたものだ。
遠い遠いあの夏の日に。
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ユーミンの歌にもあるように『♪空に憧れて〜、空をかけてゆく〜♪』やはり男の人はロマンチスト⤴️「オカダさんは、どう?」って、自分では言い難いかぁ(笑)
ぼくもこう見えたって、一応ロマンチストの末席に座しているように自分ではおもっていますが・・・。
但し、マザコンですけど?なにか???
誰もが昔から空への夢を持っていたんでしょうね。
それを形にして 空へと放つ…
そして 人が搭乗して本当に空へ 宇宙へ。
私も空を見上げて「鳥のように飛べたらなぁ〜」って よく思ったものです。
魔法の絨毯や魔法のほうきやタケコプター…
あっ!私 高所恐怖症だった!(泣笑)
ぼくも梯子とか、足がすくんでしまう高所恐怖症ですが、それが飛行機はぜんぜん大丈夫ですから不思議なものです!
こんにちは。
・模型飛行機職人のお話ですね。
・私は、飛行機に乗る事は、怖くないです。大丈夫です。
学生の時に、飛行機に乗って以後飛行機に乗っていません。
・私は、模型飛行機を、買った事有りません。模型飛行機で、遊んだ記憶が、有りません。
入道雲に模型飛行機は映えるでしょうね。私も少年時代、紙飛行機や模型飛行機を組み立てて社宅の空き地で遊びました。理科少年のはしりです。しかし、子や孫を相手に紙飛行機を飛ばしても関心をひきませんでした。オジイのノスタルジーかもしれないけど、オカダさんのコラムを読んで70歳にしてまたゴム動力の模型飛行機を飛ばしてみたいと思い、通販で買ったところです。
いいですねー!
その万年少年心は、何よりの若返り力だと思います。
ゆらりゆらりと上昇気流に乗って、少しでも遠くまで飛んでくれることを祈ります。
ものすごく遠くへ飛んでって、私をあの世へとやらに連れてってくれませんでしょうか。
ぼくも最期は、周りに迷惑を掛けず、ピンピンコロリと召されたいものです。