今日の「天職人」は、岐阜市徹明通の「甘納豆職人」。(平成十九年九月十一日毎日新聞掲載)
稲刈り終えた畦道を 真っ赤に染める彼岸花 「彼岸にゃ顔を見せろよ」と 母の墓参の道標 年に一度の不義理侘び 母の好物甘納豆 木箱で手向け香焚けば 傍(はた)で娘が摘み食い
岐阜市徹明通、甘納豆の岡女堂。三代目甘納豆職人の青山邦裕さんを訪ねた。

杉の木箱に納められた、色とりどりに艶を放つ甘納豆。
お正月が待遠しかった遠い日。
何とも馨(かぐわ)しく思えてならなかったお節料理に似ている。

「大納言に斗六(とうろく/大福)、それに金時、青エンドウ。同じ豆でも金時は直ぐに水に浸かるんやけど、大納言はなかなか浸かりません。だから冬場はぬるま湯に浸して」。邦裕さんが人懐っこい笑顔を向けた。
邦裕さんは昭和30(1955)年、三人兄妹の長男として誕生。
一浪の末、大学へと進学。
「家業を継ぐつもりもなく、好きなことがしたくって。だって小さい頃から、家の中では嫁姑の喧嘩ばっかりで。そりやあ四六時中、互いに顔を突き合わせとるんやで」。
ところが程なく父が入院。
大学を一年で中退し、急ぎ帰省し家業を継いだ。
「まぁ、もともと物作りは嫌いじゃなかったんやて。そう言えば、中学の時に祖父から『丁稚に行くか高校行くか』って、真顔で問い詰められたわ」。邦裕さんは懐かしそうに目を細めた。
それからは「技は見て盗め」の、言わずと知れた職人道。
「とは言え幼心に祖父や父、それに職人の後姿を見て育ちましたから、抵抗なんかありません。小さい頃はよく、おやつ代わりに工場で甘納豆摘んだり、泥饅頭捏ねて和菓子作りを真似たもんやて」。蛙の子は蛙。ものの数年で立派な甘納豆職人へ。

昭和55(1980)年、関市出身のまち子さんと結ばれ一男一女を授かった。
「取引先の事務員でして。友人たちと一緒にスキーに誘って。それからは毎週飛騨までスキーへ。それが二人のデートやて」。照れ臭そうに店の奥を盗み見た。
甘納豆作りは、北海道産の厳選された豆を水に浸すことに始まる。
翌日豆を煮て灰汁(あく)を出し渋を抜き取る。
次に編み籠に豆を移し、重曹を入れ再び煮汁が吹き零れるまで煮上げる。
「重曹を入れると皮が早く柔らかくなるんやて」。
次に柔らかく煮上がった豆を、暖めた砂糖蜜の中に一晩浸け込む。
「豆の中に砂糖が浸み込んで、皮の外に豆の含んでいた水分が出て、砂糖蜜がしゃびしゃびになるんやて。それで砂糖蜜を濃くしてもう一晩浸け込むんやわ」。
翌日、蜜浸けの釜のままとろ火で温度を上げ、豆の芯まで温まったところで再び甘みを高め、火を落とし三十分程置いてから編み籠を上げ蜜を切る。
そして仕上げに、切りだめと呼ぶ大きな盆に紙を敷き、その上に豆を広げて二十分程晒し、冷めたところで上からグラニュー糖を塗せば完了。
「時間だけはかかっとるけど、手間はそれほどかかっとらんのやて。ただボ~ッとしとるだけやし」。
保存料や添加物は一切無い。
だから日持ちも一週間ほど。
「昔は砂糖の量が多かったから、一ヵ月は日持ちしたんやけど、今は何もかも糖分控えめの時代やで」。
豆と砂糖と水だけを原料に、時間と手間と己の技を、職人は惜しみなく注ぎ込む。

硬質な一粒の豆は、至福の柔らかさを纏い、名代の甘納豆へと生まれ変わる。
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おはようございます。
・甘納豆職人のですね。
・甘納豆は、手作りなのですね。
・色々な色の甘納豆が有るのですね。
・私は、甘納豆好きですね。甘さが丁度良いですね。出来るなら個包装のタイプが良いですね。甘納豆を、専門店で買った事有りません。買うとしたらスーパーですね。
甘納豆は好きです。無性に食べたくなる時があるので時々買って来ます。
チョツと渋めの緑茶と一緒に美味しいよ。
やさしい美味しさに、ついつい惹かれちゃうものですものねぇ。
甘納豆は子供の頃は甘すぎて口に合わないお菓子でありましたが、大人になって歳を重ねるようになってお茶請けに最適なお菓子なのであります。コーヒーや紅茶はもちろんのこと梅昆布と合わせて食べると甘納豆の美味しさが際立ちます。秋も深まっていくこれからは甘納豆が美味しく感じる季節ですね。
へぇーっ、梅昆布と甘納豆ですか!!!
思いもよらぬ組み合わせにビックリです。
まあ、何と言うお上品な甘納豆でしょう。スーパーで見かけるのと、ちと(ちょっと)違うな。
いやーっ、どれもこれもふっくらとしていて、それはそれは美味しかったものです。
とは言え、他の甘納豆を語れるほど、普段好んで食べる方ではないので、それはいささか・・・。(笑)
岡女堂さんの前を通ると、つい甘納豆の詰め合わせを買ってしまいます。
大昔のバレンタインデーのお返しが、こちらのお店の甘納豆だったことがありました。一瞬、驚きましたが、食べてみたら、とても美味しくて相手のことも見直したものです。若い頃からの私のオババ気質を見抜いていたのですね。
バレンタインのお返しに、甘納豆とは、何とも粋な御仁ですなぁ。
見習いたい思いです。
甘ぁ~~い⤴
口の中!いっぱいに、ほうばりたい!
甘納豆なんて値段が高くて買えない!
でも、粘りのある納豆はお値打ちだから、いいねぇ!
身体にも良いしねぇ!
まぁ~⤴人生、甘納豆の様に甘くない!
いつか・・あたしの前頭部の髪だってフサフサになると信じて
えっ!その考えが甘い!
それを言っちゃぁ~~終わりだよぉ!
けど、夢は持とうよぉ~~⤴
現実を直視してばかりいると、ついつい悲愴的になるばかりの昨今。
こんな時こそ、落ち武者殿の仰る通り、叶わぬ夢でも描きながら、好きな物を肴に、ササッ一献!
ああっ、下戸な落ち武者殿ならば、ササッ茶でも一啜り!かぁ。
甘納豆 シンプルだけど やっぱり手間暇掛かってるんですね。
作業場は もちろん大変なんでしょうけど ほんわか甘くて優しくてまあるい空気感漂う場所なんじゃないかなぁ〜って勝手に想像しちゃいました( ◠‿◠ )
自分が香りに包まれたいだけなんですけどね(笑)
息子達のおやつを買う時 小袋に入った甘納豆に目が行く時があります。普段 お菓子を食べない私だけど そういう時は本能に従って 買っちゃいます(大笑)
大粒より小粒が好きな私です。
ぼくの子どもの頃、駄菓子屋で小豆の甘納豆が赤い紙の小袋に入っていて、それがボール紙の台紙にビッシリ貼ってあったものです。
そして子供たちは、オバチャンに5円払って、その小袋を手にしたものです。
記憶が曖昧ですが、小袋の封の部分か中だったかに、当たりやハズレと印字されていて、当たりが出ればもう一袋美味しくいただいたものです。