今日の「天職人」は、三重県津市の「朧染(おぼろぞ)めタオル職工」。(平成十八年九月十二日毎日新聞掲載)
小さな君は横向いて すやすやすやと夢心地 ピンクのタオル口に寄せ 時折り吸って満足げ いつしか君も中学生 クラブで疲れうつ伏せ寝 布団を掛けて覗き見りゃ 顔の下にはあのタオル
三重県津市、おぼろタオルの職工の小林正さんを訪ねた。

「娘がまだ小さい時、乳離れするまでタオルの端っこをよう吸うとったもんやさ」。正さんは、懐かしそうな表情を浮かべて笑った。
正さんは会社員の家庭で、昭和十五(1940)年四人兄弟の長男として鈴鹿市に誕生。
高校の紡織科に学び、卒業後は縁あって昭和三十四(1959)年に、おぼろタオルへと入社した。
「当時はガチャマン景気も終わった後の、鍋底景気の時やったで、就職口があらへんでなぁ」。とは言え、当時は現在の三倍、百八十名の社員数を有した。
おぼろタオルは、明治四十一(1908)年創業。
創業者の森田庄三郎が、文字や図柄を横糸だけで描き出す織り方「元祖朧染め」の専売特許を得たことに始まった。

その名の通り、文字や図柄がおぼろげに浮かび上がる、独特な織り加工技術で、タオルが水分を吸うと意匠が色鮮やかに浮かび上がった。
「伊勢型紙と伊勢木綿をひっつけて、何かええもんが出来やんかと、それが発明のきっかけやったらしい」。
正さんは入社後、機織・加工の一貫工程の現場で一年間実習に明け暮れた。
その後三年、織りの製織部門を経て現場管理へ。
管巻(くだまき)と呼ぶ、ビームに糸を揃えて巻く整経作業や、動力織機の整備と修理に追われた。
昭和四十二(1967)年、二十六歳で職場恋愛を実らせ、洋子さんを妻に迎え娘二人を授かった。
「今じゃ、孫が五人もおるんやで」。好々爺(こうこうや)が微笑んだ。
「昭和四十五(1970)年までは、朧染め一本やったんさ。企業の社名を刷り込んだものや、慶弔事に使てもうて」。
しかしその後は時代の波もうねり、ファッション性が問われ、刺繍入りやブランド商品が台頭。
「濡れた顔や身体拭けれたらよかったもんが、次第に付加価値が求められるようになってったんやさ」。

昭和四十八(1973)の最盛期には、一日で一万枚を製造。
しかしオイルショツクを境に、中国等からの輸入品に押され、次々と国内のタオル工場は閉鎖を余儀なくされていった。
「それでも海外の技術では、極細四十番手の高級綿糸による加工が出来やんのさ」。
細番手の糸を使うほど、ボリューム感が出て、柔らかく肌触りも良く、吸水性も高まる。
「太番手は綿の質が悪いんさ」。
国内のタオル生産は、愛媛県で六割、次いで大阪府南部の泉州で三割、残りの一割が三重県とか。
「三重県にも昔は二十社ほどあったけど、今しは三~四軒ほどやろか」。
平成十二(2000)年、小林さんは晴れて定年退職。
しかし会社は、タオル作りの熟練工を引き止めた。
「今はタオルの設計やら、問屋にデザインの提案したり。これしか出来やんでなあ」。
巨大な自動織機が居並び、規則的な音を刻みながら綿糸が織り込まれてゆく。
純白の小さな綿埃が、工場の上空へと舞い上がる。
そしてやがて梁や柱に、ゆっくりゆっくりと舞い降り、雪のように静かに降り積もる。
「タオルはその家その家で、家族の匂いが染み込むもんやで。娘が小さい頃、タオルの端っこ吸うとったんは、母親の匂いを感じて、安心しとったからやろなぁ」。

タオル一筋に約半世紀。
老職工は今日もせっせと、穢(けが)れを知らぬ純白のタオルを紡ぎ上げる。
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タオルを誕生日プレゼントに渡した事が一度だけある。普段使いにしてもらえる物が良いと思ってね。満面の笑みで『ありがとう。助かるわ』と言ってもらえました。
あらら、それってやっぱりあのお方でしょうか???
隅に置けませんなぁ!
はい、そうですよ(*^-^)格闘技好きの汗かきですよ(笑)
一途だなぁ!
おはようございます。
・朧染(おぼろぞ)めタオル職工のお話ですね。
・朧染めタオル デザインが素敵ですね。(お洒落ですね。)
・今治タオルのハンドタオルを、使った事が、有ります。結構吸水しますね。
・私は、朧染めタオルを、実際に見た事が、有りません。
・私は、フェイスタオル,ハンドタオル,バスタオルは、使います。
・タオルは、使うので貰うと助かりますね。有難いですね。
タオルでチョット思う事!
主に旅館で使うタオルって、持ち帰ってもイイもの何か?
いつも、悩む!
結局、貰っては来ませんが、
中には親切な旅館だとタオルお持ち帰り下さい。
と、注意書きが・・!
タオルって何枚あっても良いもんですからねぇ!
プチ自慢!
以前、東京の帝国ホテルに宿泊した時の事!
バスタオル等タオル関係がフッカ⤴フッカ⤴
めちゃ!気持ち良かった!
やっぱ!金に物言わすと、凄いねぇ!
まぁ~!
後にも先にも帝国ホテルに泊まるなんて一度きりですけどねぇ!
こりゃあ、ものすごっいセレブじゃないよぅ!
おぼろタオル 絵柄タイプ〜( ◠‿◠ )
なんだか粋な絵柄ですね。
手を拭くと色鮮やかに…
2度楽しめるじゃないですか⁈
私が時折使うマスクは お医者さんとタオル職人さんが一緒に考えたマスクを使ってますが 肌に優しくて気に入ってますよ( ◠‿◠ )
へぇーっ、そんなスグレモノのマスクがあるんですねぇ。
マスクはコロナで目覚ましい発展を遂げているようですね。