今日の「天職人」は、三重県津市の「生ハム職人」。(平成十八年五月三十日毎日新聞掲載)
土曜の昼の放課後に 母から十円貰っては 市場の中を肉屋へと ハムカツ買いに一目散 千切りキャベツ従えた ハムカツ様のお出ましだ たっぷりソース振掛けて 丼飯でかぶりつく
三重県津市の松阪ハム、工場長の橋本覚さんを訪ねた。

「元々動物が好きでなあ。子供の頃はよう豚相手にお医者ゴッコしたもんやさ」。
覚さんは同市の兼業農家で、四人姉弟の長男として昭和二十一(1946)年に誕生。
久居農林高校畜産科に学んだ。
「当時は動物性蛋白をよっけ取れって時代やったし」。
昭和三十九(1964)年、卒業後松阪ハム(旧伊勢湾飼料畜産)へ入社。
東海道新幹線が開通し、第十八回オリンピックが開幕。
「ハムの製造は一年前に始まったばかりで、技術的に未熟やったもんで、冷蔵庫が不良品で一杯になっとんさ。『これじゃあかん!なとしても独り立ちせんと』って」。
ハムを覆うビニール製のケーシングの中で、肉とつなぎの魚肉がくっつかず加熱の度に離水した。
昭和四十(1965)年頃の主流は、豚・マトン・馬肉に、メバチマグロやカジキマグロを主原料としたプレスハムと、真っ赤なウインナーソーセージ。弁当のおかずには欠かせぬ一品だった。
ところが昭和四十年代も後半には衰退期へ。
「徐々に品質が低下して、お客離れんなってさ」。入れ替わるように、ロースハム・ベーコン・粗挽きウインナー・焼き豚が主力の座へ。
日本人の食への趣向が変わり行く中、橋本さんは昭和四十六(1971)年に妻を得、二人の男子をもうけた。
「昭和五十五(1980)年頃には、欧州式の本格的な商品が求められるようんなってな」。
三十五歳になった昭和五十六(1981)年、本場西ドイツのシュツットガルトの地、キューブラー社で七ヶ月に及ぶ修業に就いた。
「最初の半年間は、プッツェン言うて、器具の洗物と骨抜き、それに骨場へ捨てに行かされる雑用ばっかやさ。ほんで日本へ帰る一ヶ月前んなって、やっと技術的なことをやらせてもうて」。
満足に言葉も通じぬ異国。
朝五時から夜六時までの過酷な作業。雑用の隙にマイスター達の仕事振りを盗み見ては、夜毎日記に綴った。
『日本に帰ったら、日本人好みの生ハムを作ろう。まだ日本には無いものを』。
帰国後、さっそく生ハム作りに着手。
「ところがこれが全然売れやん。時代がも一つ早すぎたんやろな」。
しかしその後も改良を重ね、現在の製品へと松坂ハムを導いた。

生ハム作りの基本は、永年の目利による豚肉の仕入れ。
骨抜きをして脂と筋を取り除き、ロース・バラ・腿・腕・ヒレに分割。

次に赤肉から脂肪を切り落し、円筒形に成型し塩と発色材を肉にすり込む塩漬(えんせき)作業へ。
百㌕の肉に三㌕の塩がすり込まれる。

そして二~三℃で一週間冷蔵。
次にピックレーキと呼ばれる旨味付け。
塩と五種類のハーブと香辛料が調合され、二時間煮込んで抽出された液体に肉を付け込み再び一週間。
次の充填では、円筒形で通気性のあるケーシングに肉を入れ、室温十五℃湿度七十五%でぶら下げて丸一日乾燥。
さらに十八℃前後のスモーク室で丸二日。仕上がりまでゆうに三週間。

松阪牛のハムは無いかと問うた。
「松阪牛は良すぎるで、そのまま食べた方が旨いやろ。まあこれ食べてみ。今、試作中やけど」。
橋本さんの秘蔵作品。
松阪牛の霜降り生ハムだ。
初めて味わう未知なる食感。
しかし後数年もすれば、名高い高級レストランの前菜として、再びお目にかかるかも知れない。
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おはようございます。
生ハム職人のお話ですね。三重県の津市に生ハム工場が、ある事知りませんでした。
生ハムは、職人さんの手作りなのですね。
私は、生ハム好きです。焼いても生でも食べれますね。
肉の霜降りで、ハムが出来るのですね。
以前は何処かのおしゃれなレストランで食べる物って思っていましたが、今では我が家の食卓にも登場しますよ。家の料理長が好きですから(^_-)-☆
だって生ハムは絶品ですもの!
ハム!大好物⤴
生ハムではありませんが
明方ハム、明宝ハム、大好き!
生でもいいけど、こんがり焼いたのも・・
うん⤴たまらん⤴
美食家では、ありませんから!
言わせて頂きます「生ハムにメロン」許せない!!
別々の方が私は絶対!イイと思う!
だって日本人だもん!
メロンと言えば!
今年の奥方の誕生日のケーキ
季節がら「メロンケーキ」18cmとチョット小ぶりですが
大きさより、気持ち・・こころですから・・・(汗)
丸くボール状にくり抜いたメロンがケーキの上の部分に
わんさかたっぷり⤴美味しい⤴
何個でも食べられそぉ~~~!
ヒロちゃんなら、無限に食べるやろなぁ~~~(笑)
まあまあ、姫と仲のおよろしいことで!
そう言えば先日、関ヶ原から「戦国ロード」を走りました。
ついつい落ち武者殿がどこぞかにおられはせぬかと、ヒヤヒヤもんでした。
残念でした。私でも無理です。最近生クリームが駄目になり、きりが良いとこで止めとかなお腹が緩くなるのよ(*゚∀゚)=3
スペインで食べた生ハムの味は格別でしたが、こうして日本独自の生ハムを作るのは、並大抵のことではないでしょうね。松阪ハム、今度食べてみます~!
ぜひぜひスーパーで探して見てくださいな!
生ハム 我が家の食卓には並びませんね〜。私にとっては なんだか贅沢品に思えて…。
外食した時 お料理に生ハムが使ってあると 未だに「あっ!生ハムだ!」って思っちゃうから(笑)
って言うか 私の料理のレパートリーの少なさが原因なんですけどね。
市販の薄めのピザ生地に、とろけるチーズをたっぷり載せて、オーブンでチーズに軽く焦げ目が付いたら、その上に生ハムとイタリアンパセリなんぞを散らして、ハチミツをかけるとどんだけでも食べれちゃいますよーっ。
生ハムメロン 憧れました~ (#^.^#)
友達から、デートの時に ご馳走になった❕って聞いた時 「 どんな味だった?」 とか 興味深く 聞いた事 思い出したました (*^ー^)ノ
サラダにちょっとご馳走感を出したい時 生ハムが良いですね (o^・^o)
しかし生ハムにも、日本人の口に合うものもあれば、インポートものの生ハムは、ちょっと獣臭がするヘビーなものまで様々ですよねぇ。