今日の「天職人」は、岐阜市神田町の「栗粉餅職人」。(平成十八年五月二日毎日新聞掲載)
病の床の母の手が 日毎小さく成り果てる 庭の毬栗眺めては 秋はまだかと繰り返す 毬が色付き落ち出せば 母の好物栗粉餅 初物買うと励ませど 彼岸待たずに召され逝く
岐阜市神田町、明治三十七(1904)年創業のベンテンドー。四代目栗粉餅職人の高井啓光(よしみつ)さんを訪ねた。


「家は代々、高富町(現山県市)大桑(おおが)の土田さんちの栗だけしか使っとらんのやて」。 啓光さんは、鼻先でずり落ちそうになった眼鏡を、指先で持ち上げた。
店内には繰り返し耳馴染みのいいメロディーが流れる。
「♪ベンテンドーの栗粉餅 ベンテンドーの栗粉餅♪」。
懐かしさが漂う曲調に、つい聴き入ってしまう。

「昭和三十四(1959)年頃には、もうテレビやラジオで宣伝に流しとったらしいですわ。久里千春さんが歌って」。
啓光さんは昭和三十五(1960)年、三人姉弟の長男として誕生。
地元小学校を上がると、静岡県の中学へ。
「男の子は外へ出さなかん」とする、先代の厳しい掟の前に、十二歳のいたいけな少年は、親許を離れ寮生活を余儀なくされた。
大学を出ると今度は、愛知県岩倉市の洋菓子店で修業を開始。
「元々創業時は和菓子一本。戦後、父の代から洋菓子も始めて。昔は二階でパーラーって言うか、珈琲屋もやっとってね」。
三年の修業を経て、二十六歳の年にドイツへ武者修行に。
「本当はフランスに行きたかったんやて。でも当時のヨーロッパは失業が多くって。貿易関係の義兄の紹介で、西ドイツのシュツットガルト郊外の『カッツ』という洋菓子店が『三ヶ月だけなら引き受けてもいいぞ』って」。
ドイツ人の兄弟弟子と、二人部屋で寮生活が始まった。
例え三ヶ月とはいえ、言葉も通じぬ異国での修業から、啓光さんは多くの技を学び取った。
「ドイツ菓子は、他のヨーロッパのように、見た目の派手さを競うんじゃなくって、生地自体の美味しさにこだわるんやて」。
ドイツでの修業を終える頃、一人の日本人女性が「カッツ」を訪ねた。妻、朝代さんだ。
「元々両親が知り合いで、見合いみたいなもんやて。婚約中にドイツで修業して、それを終える頃妻が合流し新婚旅行へ」。そのまま二人は、ヨーロッパ各地を一ヶ月かけハネムーン。帰国後に式を挙げ、男子二人を授かった。
ドイツから戻ると、父の元で本格的に名代の「栗粉餅」を始めとする和菓子作りを学んだ。まず栗を蒸し、半分に切ってスプーンで実を掘り出す。実を潰して荒簁(あらどおし)から細簁(ほそどおし)へと順に目を細かくして栗粉へ。
白餡の栗蜜をつなぎ程度に加え、裏漉(うらご)しして粉状に。
搗きたての一口大の餅を、栗粉の上に転がし満遍なく塗せば出来上がり。

「毎朝六時から蒸し始め、一日二千個ほど。売り切れたら終いやて」。
年間三㌧の栗が、啓光さんの手を経て珠玉の逸品「栗粉餅」へと生れ変わる。
「昔の生栗は、九月から二月までやて。でも今は冷凍技術もようなったで、年中ありますわ。でも毎年天候によって、栗の甘味も採れる量も違ってくるし。中国の栗では硬すぎて。やっぱり大桑の栗が一番向いとる。その土地の恵みを素材に、その土地に生きる者の手で、お菓子に加工させて貰うのが一番」。
「井の中の蛙たるな」。
先代の教えと家伝の栗粉餅は、井の外に出た四代目に確(しか)と受け継がれた。
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おはようございます。
・栗粉餅職人のお話ですね。
・栗粉餅は、職人さんの手作りなのですね。作り方は、シンプルですね。
・栗粉餅美味しそうですね。
・私は、実際に栗粉餅見た事,食べた事,買った事有りません。
栗粉餅!
これ絶対美味しい⤴
栗きんとんに負けない!と思います。
私は大好き⤴⤴
ただ!以前、お店にお邪魔した時、賞味期限がないので
その日に「召し上がって下さい」と言われました。
いまは地方へ冷凍して発送するみたいです。
まだ、柳ケ瀬がお客さんでいっぱいだった頃
ベンテンド―の二階に甘味処があって、よく行ったもんです。
懐かしい⤴
皆さん岐阜へ来た時は是非!お土産にどうぞ・・!
絶対!美味しい⤴
もし?お口に合わない時には、返金致します。
もモっちショップでした。
そうなんですって!
その日のうちに召し上がれってぇのが、なんとも潔いじゃあないですか!
まだまだ暑い日が続いていますが、夜になるとリーンリーンって、秋の虫の音が聞こえて来ますよ。
そろそろ栗粉餅の美味しい季節なんでしょうねぇ。
そうなんですよねぇ。
ぼくも今朝、玄関側の通路に置いてある鉢植えに水をやろうと思って通路に出ると、コオロギの鳴き声のようなのを聴きました。
あれっ、ぼくの南蛮や紫陽花と山椒の鉢植えで鳴いているのかと、物音を忍ばせ静かに聞き耳を立てておりました。
しかしぼくの鉢植えからではなく、玄関先の廊下の真ん中あたりから聞こえるようなので、そーっと足音を忍ばせ何処に居る物やらと近付くと、ピタッと鳴き声が止まります。
ところがぼくの部屋のある11階には、ぼくの鉢植え以外、廊下に植物は一つもないのです。
さては、10階か12階からなのか???
いずれにしてもそんな所で鳴いているようで、不思議な思いがしています。
美味しそ〜( ◠‿◠ )
白餡を使ってるようですけど この栗粉餅なら美味しく頂けそう。
今からの時期にピッタリ!
夜風や空の模様が 少しずつ秋色に変わりつつありますよね。
暑さに身体が悲鳴をあげていたので 秋色の気配を感じると少しニヤニヤしている私です(笑)
真ん中の白いのは、お餅なんですよ。
お餅の周りを栗粉が取り囲んでいるんです。
お店の前を通ると「 ♪♪♪ ベンテンドーの栗子餅~ ♪♪♪ 」と昔から変わらない曲が聞こえてくる (^-^ゞ
夕方には売り切れちゃうので、息子達が帰って来る時は 開店を待って買って来ます (●^o^●)
両親 私 息子 そして小さな怪獣君達と四代が大好きな おやつです (o^・^o)
さすがに岐阜の名産ですよねぇ。