今日の「天職人」は、三重県松阪市の「駅弁屋」。
売り子の声に伊勢訛り 身を乗り出して品定め 松阪一の駅弁は 天に名高い牛弁当 売り子の台詞につい釣られ 折を解けば香り立つ 肉に絡んだ醤油垂れ 酒も限(き)り無し汽車の旅
三重県松阪市の駅弁屋新竹(あらたけ)商店の三代目、新竹日出男さんを訪ねた。

「そりゃあんた、家(うっ)とこの元祖特選牛肉弁当は、発売当初の昭和34(1959)年に、幕の内弁当の三倍の価格。百五十円もしよったんやで、まったく売れやんだ」。日出男さんは記憶を辿るように目を閉じた。
元々松阪駅前で食堂を営んでいた初代が、明治28(1895)年に旧国鉄参宮線の開通に合わせ、駅構内に売店を開設。当時の駅弁は、竹皮におにぎり二つと沢庵漬け二切れの慎ましやかなものだった。

日出男さんは同県神戸で、海苔養殖と貸し舟業を営む貧しい漁村育ち。二十歳になると地元の会社に入社。四年後親類から、婿入り話が持ち込まれた。「写真を貰(もろ)たんやさ。またそれが豪い別嬪ってな」。トントン拍子で縁談話が進み、昭和33(1958)年に二代目の長女、育子さんと祝言を挙げた。
婿入り後は、毎朝誰よりも早く寝床を抜け出し、竈に火を熾し四升(約7.2ℓ)釜の飯炊きに専念。「何でも自分が先頭立ってせやんと、人なんて誰も付いてこやん」。
翌年先代夫婦が「本物の松阪牛使こて、旅情を掻き立てる日本一高い弁当拵えたろ」と、冷めても味の落ちないミニ・ステーキを考案。独特のタレを絡めて牛肉弁当を発売した。今の価格に換算すると、三千円以上の代物。苦戦を強いられることに。
ところが翌年、大阪の有名百貨店から、駅弁大会で実演販売をやってみないかと持ち掛けられた。「『どうせようけ持ってったところで売れやせんで』と先代がゆうてな。百五十食分だけ用意してったら、開店二時間で売り切れやさ。まぁ、おしっこ行く暇もないんやで。食道楽とは聞いとったけど、そんなんなるとは夢にも思わんさ」。連日千五百食を超える大盛況。大阪での成功は、松阪牛肉弁当の名を、瞬く間に全国に広めた。

「父は本当に働き者です。婿養子って事もあってか、実の両親が亡くなった時も、お線香を上げに戻っただけ。だから家族揃って泊りの旅行に出掛けた記憶なんてありませんし・・・」。傍らで長女の浩子さんが、感慨深げにつぶやいた。
今でも(平成十六年三月六日時点)日に二~三千食製造する弁当は、一~十まで全て昔のままの製法にこだわり続ける。
今のような気忙しさや煩わしさとは無縁だった、昭和半ばの何もかもが緩やかでまったりとした時間が、肉汁と共に口の中に広がった。
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おはようございます。
駅弁屋さんのお話ですね。
・製法が昔ながらの駅弁良いですね。リピーターさんが、見えますね。
・牛肉弁当美味しそうですね。
・駅弁は、だいぶ前に静岡県で駅弁 桃中軒の駅弁 龍馬弁当を、買って食べた事が、印象に残っています。(覚えています。) (味)美味しかったです。具材は、覚えていません。
・今の時期 駅弁屋さん大変ですね。(何処も大変ですね。)
・電車もガラガラだから大変ですね。
・駅弁は、スーパーで、全国の駅弁が、売っていた所(コーナー)を、見た事有ります。色々な駅弁が、おいていました。全部美味しそうでした。
折りの箱に入っている駅弁の、木の匂いが付いたご飯が好きって言う人がいましたが、私は反対にその臭いが苦手でした。
スーパーで催される駅弁大会で、時々、買う事が有りますが、今は発泡スチロールに紙箱やプラスチックの容器が多いですね。駅弁を、家で食べるのは味気ない物ですが、紐を引っ張ると温かいお弁当の出来上がりぃ⤴️な〜んて駅弁が現れた時はビックリ‼
ありましたねぇ。
紐を引っ張ると以上に熱くなってくるタイプの駅弁!
でも駅弁ってぇのは、そもそも冷えているのが当然な物じゃないんでしょうかねぇ。
一から十まで 昔のままの製造にこだわり続けるからこそ 今でも皆さんに食べて頂けるんでしょうね。
タレの照りがたまりません。
これはやっぱり電車の旅のお供ですね!
いつかそんな時が再び訪れますように…
ps. パッケージの牛さんの表情が 悲しく見えるのは私だけ?(笑)
旅はなんてったって、駅弁とキリン一番搾りが相棒ですもの。
各地の駅弁を食べまくっていたら、宿の晩御飯が食べれなくなっちゃいますし・・・。
だから駅弁選びは、どちどちどちらにしましょうか?天の神様の言う通り!って、子供騙しな選び方に運命を託しちゃったり。
それも楽しみの一つですけどね。
スーパーでたまに、駅弁フェアーをやっているのを見るのが好きです。
駅弁見ているだけで、ちょっとした小旅行気分が味わえますから・・
以前、中部空港セントレアで空弁のかつ丼を買って食べました。
これが、肉厚でメチャメチャ美味しかったです!
世界各国の方が買われるかも知れないので、
手抜き!の空弁なんて事は決してないようでした。
豚肉の銘柄は忘れましたが、こだわりの豚肉は確かです。
卵もフワトロ⤴で大満足でした!
私も、あの「かつ丼」の様に「味のある男前」になりたいもんです。
あ~ぁ~⤴いつになったらオカダさんより男前になれるやら?
男前って言われて、その語源は何だろうと調べて見て納得がいきました。
「前」は、「腕前」とかのように、人体の機能とか、それらの状態を示すものだそうで、「男前」も本来「男としての在り方や、その姿や姿勢」を指すものだとか。
でもやっぱり、「男後」ではちと・・・。格好が付きませぬなあ、落ち武者殿!
美濃太田駅に最近までみえた駅弁売りさんのことを思い出しました。同時に、昔多治見駅前にあった弁当屋さんのことも。最近は列車で遠方へ出かけなくなったのですっかり駅弁ともご無沙汰です。そういえば新幹線から食堂車がなくなると聞いて乗ったのはもう何年前のことだったかしら?
そうやって時代の世情は、移りゆくものなのでしょうね。