今日の「天職人」は、愛知県岡崎市の「表具師」。
母の十八番の 芋饅頭 どれどれどれが 大きいか 迷う間に 手が伸びて あっと言う間に 姉の口 憎つくき姉に 跳び蹴れば 襖ぶち抜き 大目玉 それが因果か わからぬが 今じゃ表具師 襖貼り
愛知県岡崎市の錦昌堂(きんしょうどう)に、二代目の原田直好さんを訪ねた。

初代の父、好光の口癖は「わしの腕の分かる者は、この岡崎にゃあおらんだぁ」だったそうだ。なぜなら好光は戦前、宮内庁より「大経師(だいきょうじ)」の位を得、職人としてますます磨きがかかっていた頃。東京大空襲で焼け出され、止む無く妻の在所を頼り疎開した。そして戦後再び上京し、東京で店を再興するものの、戦後の荒波と逆風に翻弄されることに。「そんな時代、ほとんどが喰うが先。こんな仕事は贅沢品らぁ」。直好さんはぶっきらぼうだったと言う父の呟きを真似た。

昭和25(1950)年、一家は再び岡崎に舞い戻った。父は大経師の位もうっちゃって山へと分け入り、木炭車用の薪を切り出し一家を支えた。
一方直好さんは中学を出ると上京。婦人靴職人を目指し、浅草の製靴会社に就職。
昭和37(1962)年、ついに父は大経師の腕に積もった埃を叩き落とし、岡崎の地で錦昌堂を再興。その二年後、東京五輪は世界の人々に、焼け跡からの復興振りを示して閉幕。その年の暮れ、一日に三十五足も婦人靴を仕上げる、熟練の靴職人となった直好さんが帰省。オートメーション化の波が押し寄せ、職人から手仕事を奪い取っていったからだ。「今更、会社員にもなれんらぁ」。直好さんは父の跡を継ぐ決心を固め、修業を始めた。
掛軸の主役となる書画を、大和和紙で二回裏打ちし、周りを装飾する金蘭などの布(きれ)にも「着物着せたらんと」と、労わる様に二回裏打ちを行なう。次に布継(きれつぎ)と呼ばれる工程で、書画を引き立てるため布の柄や色合いと配置を決める。「一に色彩、二に技術。まあどれもこれも、持って生まれた勘だらぁ」。最後に揚裏(あげうら)と呼ぶ仕上げの裏打ちが施され、柴の木の軸棒を巻き、上部には風帯(ふうたい)を垂らし無地の部分に風合(ふうあ)いを飾り、軸先を取り付け一幅の掛軸が完成する。

「国宝級の物だったら、まず一年はかかるらぁ。四季を通してゆっくりと仕上げたりゃあ、何百年先もこの国の湿気に耐えられるだ」。直好さんの言葉に、京都で修業積んだ三代目の国男さんもうなづいた。「孫を仕込むまでは、死んでも死に切れん」と、口癖にしていた初代好光であったが、その願いも虚しく昭和57(1982)年、仕事中に倒れ還らぬ人に。だが大経師の心根は、孫子の代へと見事に受け継がれた。

何百年もの時の彼方で滲んだ、一幅の墨痕。親子経師は今日も、刷毛を片手に永久へと続く新たな生命を、一幅の掛物に注ぎ込む。
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おはようございます。
表具師のお話ですね。
・原田さんは、靴屋さんに就職してから家業(表具師さん)修行を、したのですね。
・掛け軸を、作ったりするのが、表具師さんのお仕事なのですね。
勉強になりました。
・刷毛が、商売道具なのですね。
・私は、実際に表具師さんのお仕事を、見た事有りません。
・掛け軸の写真の仏様良いですね。
子供の頃に、自分が書いた書を掛け軸にして貰ったことがあります。
暫く部屋に飾ってあったけど、今は何処へ行ってしまったんだろう^^;
きっとお上手だったからでしょうねぇ!
見て見たい!
ホント!お恥ずかしいけど またまだ知らない事がたくさんある事に このブログで気付かされ 知識が1つずつ増えていってます( ◠‿◠ )
ありがたや〜
「表具」という看板のお店 よく見かけますが 実際のところ どんなお店なのか知りませんでした。
これまた古い歴史があるようで…
興味が湧く湧く!
見方が変わりますね( ◠‿◠ )
後継者不足で暖簾、看板を下ろす、今の時代ですが、
後継者がみえる、ありがたい話です!
知り合いに山県市で「表具屋さん」をしている方がみえます。
お子さんが、後を継がないと言う事で「廃業」されるそうで、
まぁ~!需要がなくて普通のサラリーマンをしてくれた方が・・・
自分が苦労してきた分、子供には苦労させたくない「親心」でしょうか?
私が生まれ変わったら、
歌舞伎町ナンバーワンホスト「ローランドさん」のような
「ホスト職人」になりたい!
でぇ!ブイブイ言いたい⤴
まあしかし、生まれ変わっても「ご盛ん」をお望みとは!
なかなか枯れませんねぇ。しかし
京都に居た頃、喫茶店でアルバイトしていました。近所の常連さんが表具師さんで、一度何かお手伝いして、ご飯を食べさせて頂いた記憶があります。何をしたかは、、、忘れた!