「天職一芸~あの日のPoem 18」

今日の「天職人」は、三重県四日市市日永の、「団扇貼り立て職人」。

振り向けば おかげ参りの旅の空            遥か伊勢路を 偲ぶ追分                間宿(あいのしゅく) 団扇長餅日永足袋         軒を連ねる 呼び込みの声

四日市市日永で明治14(1899)年から続く、日永団扇三代目、稲垣藤夫さんを訪ねた。

伊勢型紙の日永団扇

日永団扇は、江戸時代より、伊勢詣での土産物としてその名を馳せた。日永は旧伊勢街道の四日市と石薬師の宿場に挟まれ、伊勢参宮道との追分となる間宿として賑わいを見せた。伊勢詣での往きに、土産としての団扇を注文し、帰りがけに立ち寄り国へと持ち帰ったとか。「団扇は何より軽いし、腐らんで土産に丁度ええんさ」。稲垣さんが団扇を扇いだ。

松阪木綿の日永団扇

日永団扇は、女竹(めだけ)の三年物に拘り、紙断ち、貼り立て、筋入れと、四十七手に及ぶ工程を経て、二週間の時が費やされる。

江戸時代、農家の夜鍋仕事であった団扇作りに、維新で止む無く一番ビリから参入した庄屋は、日永にたった一軒となった現在も、こつこつ往時を偲ぶ団扇作りに精を出す。「算盤勘定じゃのうて、日永に住まいし者の恩返しなんやさ」。団扇の縁に飛び出した竹骨に、半月型の刃を当て木槌で一刀両断に断ち切りながら呟いた。

日永団扇でゆったりと扇ぐと、花火大会などで配られる、プラスチック骨の団扇とは、一味も二味も違うやわらかな風を感じたものでした。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「天職一芸~あの日のPoem 18」」への7件のフィードバック

  1. 今晩は。団扇貼り立て職人さんの話ですね。伊勢型紙の団扇,松阪木綿の団扇お洒落で綺麗ですね。 お値段が高そうですね。
    全部の工程が大事ですね。(紙を、貼る前の骨組が大事ですね。)

  2. 団扇って もの凄く歴史が古いんですね。
    そんなにしっかりとした骨組みの団扇 手にした事がないです。
    プラスチック製とは違って 仰いだ時に感じる風は きっと優しいでしょうね。
    絵柄も素敵!
    団扇が先か? 浴衣の新調が先か?(笑)
    お部屋のインテリアにしても良いですよね( ◠‿◠ )

    1. 今は、海外へのお土産屋、海外の友人へのプレゼントにいいと思いますねぇ!
      特に、伊勢型紙の日永団扇なんて!

      1. お店に入っても サッと手に出来ないお値段みたいですね (笑)
        たかが団扇されど団扇。
        でも それだけの価値があるって事なんですよね⁈
        その土地に行って 見て触れて学んで…
        魅力的だなぁ〜
        まだまだ知らないこと た〜くさん!
        ブログで勉強させて頂きますよ( ◠‿◠ )

        1. そんなそんな勉強だなんて!
          ぼくはただ、昭和職人の心意気が好きだっただけですから。

  3. こんばんは
    見事な団扇ですね。
    プラスチック製の団扇を先日、大量に処分しましたが竹製の物は捨て難くまた仕舞い込んでいます。
    日永に住まいし者の恩返し!
    素晴らしい言葉に人柄も伺えます。
    和の心宿るモノに触れて和心を育んでいきたいですね(≧∇≦)

    1. 和心こそが、ぼくら日本人のアイデンティティーだと信じています。

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