今日の「天職人」は、岐阜県高山市の、「豆菓子匠」。
飛州盆地の 根雪溶け 宮川沿いの 桜も緩む 山王まつり 絢爛と 贅を尽くした 陽明門か 祭囃子に 声荒げ 旦那衆(だんなしゅ)たちも 辻を練り行く 粋な飛騨鰤 男振り 斑鳩(いかる)も歌え 月日星よと
高山市で明治8(1875)年に三嶋治兵衛により製造され現在へと続く。その馬印三嶋豆本舗、四代目女将 長瀬理々子さんを訪ねた。

ある日炒り豆が好物の母が、齢も重ね歯も弱り豆を噛むことも出来ぬと、治兵衛に嘆いた。孝行息子の治兵衛は、何とかして今一度母に炒り豆を食べさせたいとの一心で、試行錯誤を重ね現在の三嶋豆を完成。その後三嶋豆は、治兵衛の三嶋家と、治兵衛の10歳年下だった従兄弟、長瀬久兵衛の長瀬家に代々受け継がれた。その後、三嶋家は戦後廃業。

三嶋豆は国産大豆を一昼夜井戸の湧き水でふやかし乾燥させる。乾燥した大豆を炒り、白ザラメを溶かし片栗粉を混ぜ、再び乾燥させる。この作業を十数回繰り返し、さらに炭火で一週間ほど乾燥させる。何とも気の遠くなる単調な作業の繰り返しが、炒り大豆を絶品の味に仕立てる。

女将は東京永田町で弁護士の娘として誕生。「商売人の処へなど絶対嫁にやらぬ」。父の猛反対を振り切り飛騨高山に嫁し、二人の息子に恵まれた。しかし長男が小学6年の年、四代目当主の夫が他界。「嫁の代で暖簾下ろしたなんて言わせたくない。意地しかありませんでした。それからお爺ちゃんに7年ほどついて、毎日泣きながら豆を炒ったもの」。女将は玄関口の暖簾を見詰めた。
「最初は人の足を引っ張るようなこの町が嫌いでした。でも主人を亡くして、初めてこの町で暮らす人の温もりが身に染みたもの。以前は弁護士の娘ってことで、高見から人を見降ろしていたのかも知れません。主人は死して『この町の人たちに溶け込んで生きろ』、きっとそう教えてくれたんです」。女将の昔語りに続いて、五代目の長男公昭(きみあき)さんが呟いた。「子どもの頃、友達が来ても、母は挨拶一つしませんでしたから」と。

飛州盆地の遅い春に、柔らかな陽射しが一筋舞い込んだ。『世の中は 満免(まめ)でまるうて 屋和(やわ)らかに かみて味阿(あじあ)る 人と奈連(なれ)かし』。昭和天皇の侍従であった小泉さんが、店に遺された歌に、人の世の情け深さと味わいを感じた。
こんな寒い日。炬燵に入って、ウィスキーを傾けながら、三嶋豆をあてに一杯、ついついやりたくなってしまうものです。
*「斑鳩」はスズメ目、二十センチメートルほどの小鳥。各地の山林で一年中見られ、澄んだ美しい声で「ツキヒホシ」と鳴く。異名は「豆回し」。
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おはようございます。豆菓子匠さんの話ですね。三嶋豆食べた事有ります。 甘さ控えめで美味しいですね。硬くないので有難いです。
色々な味が、有りました。三嶋豆さんの店内に入った事有ります。
孝行息子さんがお母さんに豆を食べさせたいので考えたのですね。優しい息子さんですね。
地元に住んでいても詳しい事は、知りませんでした。勉強になりました。
打保屋さんも菓子作っていますね。
三嶋豆さん 徒歩か交通機関で行けます。
明治8年から創業していたのですね。老舗ですね。昔からあるお店ですね。
食べ始めたら止まらない感じですね。
私の好きなタイプです( ◠‿◠ )
お嫁さんが歴史を引き継ぐ…
意地でも暖簾を下ろさない!
胸の奥がギュッとなるくらい わかる気がします。きっと常に神経を張り詰め 心が休まる時など無かったと想像出来ます。女性は 芯が強いですから。
でもある日 何かのきっかけでその意地を自分の殻から外す事が出来たら 周りがよく見えるようになるんですよね( ◠‿◠ )
なかなか難しいですけど(笑)
鎧兜で身繕いしていると、敵に襲われることはなくとも、相手の温もりが感じられないんでしょうね。
そんな時って 自分に向けられた言葉や温もりは 何一つ 心に残らないんです。
そして 自分の想いも表に出せない。
氷が溶けるまで もの凄く時間がかかりますからね。
どんな分厚い氷でも、いつかはきっと雪解けミスのように溶け出すものですよね。
今晩は。ブログを、見て三嶋豆本舗さんに、行きたくなりました。
地元のお菓子の情報が分かりやすく載っていました。
今日2/5(水)仕事帰りに三嶋豆本舗で、三嶋豆(紫蘇味,にっき味,黒糖豆,ココア味,シナモン味,お茶まめ,三嶋豆)を、買って来ました。
今日は、にっき味を、夕食の時に食べました。美味しかったです。
一度食べたらやめられない止まらないですね。
三嶋豆は、前はよく食べたものです。
今は、色んな味があるのですね。
あー、知らなんだ知らなんだ。
また買い求めて食べてみたいです。
とってもほっこりする、お豆さんですよねぇ。
こんばんは
蘊蓄を想いながら三幡豆を食べてみたいと思います。
手元にある東海の天職一芸との趣きの違いを楽しませて頂いています。
モノ造りの背景がわかるとモノ自体にも想いが溢れ出す気がします。
いろいろなところを訪ねてみたくなります。
ぼくも職人探しの取材を、いつも「小旅」と称していたものです。