「天職一芸~あの日のPoem 6」

今日の「天職人」は、三重県松阪市飯南町の、日本一に輝いた松阪牛の「牛飼い職人」。

早苗色づく 深野の棚田 梅雨に打たれて 実を結べ   夜も明けぬのに 牛追う童 茣蓙を羽織って 菅の笠   五里を下りて ご城下までは 通いなれたる 道なれど  牛の値踏みに 胸躍りだす おらが牛なら 天下一

父の故郷、飯南町。松阪駅から西の山間へと入った、櫛田川の上流。お茶と松阪牛の産地として名高い。

ぼくが訪ねたのは、牛飼い一筋半世紀の栃木さん。栃木さんの牧場には、小さな牛舎がポツリとあるだけ。後は木柵で囲われた、大きな草原が広がる。しかも一度に飼育する牛は、3~4頭。自分の目が届く範囲で、手塩にかけ愛情を注ぎ込み、子牛を約3年間飼育する。だから栃木さんのところの松阪牛たちは、ストレスフリー。木柵に栃木さんが近寄ると、真っ黒な眼(まなこ)をクリクリとさせながら、子牛たちがすり寄って来たものです。「ええ松阪牛はなぁ、背筋がスーッと通り、箱みたいに四角い腹で、ふくよかな尻しとるんがええんやさ」と。

これは栃木さんでもなく、「ふくよし号」でもありません。あくまで参考まで。

栃木さんが育てた「ふくよし号」は、平成3(1991)年の松阪牛品評会で、優秀賞一席に選ばれ、三千万円の高値を付けた。

この松阪牛の肉は、「ふくよし号」のものではありません。

しかし今でも、品評会に出す日が一番辛いとか。牛も今生の別れと知り、真っ黒な大きな眼(まなこ)を濡らすと言う。

取材の帰りがけに、栃木さんから松阪牛のお肉の包みを、「切り落としやけど、食べて見て」と厚かましくも頂戴してしまいました。

切り落としと言えど、すき焼きにして早速いただきましたが、とんでもなく美味しく、栃木さんの牛飼いの精神に頭が下がるばかりだったことを、昨日の事のように思い出しました。ご馳走様でした。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「天職一芸~あの日のPoem 6」」への10件のフィードバック

  1. おはようございます。オカダミノルさんのお父さんの故郷飯南町の牛飼い職人さんのお話ですね。
    栃木さんは、牛さんに愛情を注いで育てているのですね。(自分の子供見たいに牛さんを、育てているのですね。)牛さんとの別れは辛いでしょうね。
    オカダミノルさん 栃木さんから松阪牛の切れ端のお肉を、頂いて良かったですね。
    今日1/25(土)大黒に、行きます。私は、追加liveに参加します。宜しくお願いします。オカダミノルさんとリスナーさんに会える事,お話出来る事,生歌を、聞く事が楽しみです。

  2. 別れの日 牛が車に乗るのを嫌がる場面を何度かテレビで見た事があります。
    足が全く動かず…
    ブログを読んで思い出しました。
    以前テレビで この後 牛が私たち消費者の前にお肉の形となってくるまでの過程を 生々しくもありましたが 実際に見た事を。
    命を育てて 命をいただく…
    食べる物だけではないでしょうが 粗末にしないようにしなければ!

    1. 本当に牛の真っ黒でウルウルと光る眼は、一点の曇りもなく、吸い込まれる様でした。

  3. 栃木県の大田原牛かな?と思ったら三重県の松阪牛だったんですね。
    一度で良いから食べてみたいものです。

    1. 三松のステーキもいいし、伊勢市の伊勢牛を食べさせる、「豚捨」の網焼きもいいねぇ!


  4. ある晴れた、昼下り、子牛をのせて、
    ♪ドナドナどな
     ドナー、子牛を乗せて~
    ドナドナ どな ドナー
    荷馬車がゆれる

    この曲は小学生の時よく音楽でうたったが
    実際は売られる歌なんだな~
    人間は殺生だな~

    あっ、この曲
    五七調だ!

    1. そうだよね。
      そうやって人間は、動物たちや植物たちのお命を頂戴してるんだよね。

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