「アヒルのガーコ」

鶴舞公園の池で、優雅に泳ぐマガモたち。

実はこの池まで足を延ばしたのには、訳がありました。

シロアヒルの「ガーコ」がもしかしたらいるのではないか?と、ふと思ったからです。

そのシロアヒル「ガーコ」との出逢いは、40年ほど前の事。はてさて、シロアヒルの寿命がどれほどなのか分かりませんが、もしかするともう天に召されてしまったのでしょうか?

もしかしてマガモの群れに混ざっていはしないものかと、しばらく池の畔に佇んでおりました。

「ガーコ」と出逢った時は、CBC TVの「ぱろぱろエブリデイ」と言う番組の中で、「もちょっとニュース」と言うコーナーがあり、その取材記事を書かせていただいていた頃の事。

夕方の報道番組では、取り上げられるはずもない、ちっぽけな雑記を取材して回ると言うものでした。

その日は、鶴舞公園で何かニュースのネタが転がってはいないだろうかと、公園内をフラフラと歩いておりました。

そして公園中央の池に差し掛かると、多くのマガモやアヒルが気持ちよさそうに泳いでおり、ついつい立ち止まって水鳥達を眺めていたのです。

するとすぐ近くの池の畔で、一人の作業服姿のオッチャンが、ビニール袋から食パンの耳を取り出し、「お~い、ガーコ!ガーコ!」と呼びながら、池に向かってパンの耳を投げ込んでいるではないですか!

初めのうちは、アヒルの総称としてオッチャンは、「ガーコ」と呼んでいるものだとばかり思っていると、シロアヒルの一羽がオッチャンの手元に一目散で泳いでくるではないですか!

そしてオッチャンの手から、パンの耳を啄み、呑み込んではまた啄むを繰り返していたのです。

オッチャンの餌遣りが一段落したところで、ぼくはオッチャンに話を伺って見ました。

ある日オッチャン家の子供が、縁日の屋台で雛だった「ガーコ」を飼い、家族で大変可愛がっていたそうです。ところが当然「ガーコ」は大きく成長し、鳴き声も次第に大きくなり、オッチャン家族の暮らす団地では、近所迷惑となって飼うことも出来なくなり、泣く泣く港区の家から鶴舞公園の池まで放しに来たとのこと。この池なら、他のアヒルたちもいて、「ガーコ」も寂しくないだろうと。

それからオッチャンは雨の日も風の日も、自転車の荷台に段ボール箱を括り付け、近所のパン屋で分けてもらったパンの耳を積み込み、港区の団地からこの池まで餌遣りにやって来ていたんだそうです。

オッチャンは団地の側の工場で仕事を終えると、それから片道1時間近くを掛けて鶴舞公園まで、作業服姿のまま自転車を走らせていたのです。

昨今、動物虐待のニュースや、幼児虐待などといった、心無いニュースが報じられる度、アヒルの「ガーコ」のために休むことも無く、毎日毎日餌遣りを続けたあのオッチャンのやさしそうな笑顔が、思い出されてなりませんでした。だから、きっともう「ガーコ」には逢えないだろうとは思いながらも、この池までやって来てしまったのです。

笑うと一本だけ欠けた前歯が、とても印象的だった「ガーコ」のオッチャン。どうかどうかお元気でいてください。

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投稿者: okadaminoru

1957年名古屋市生まれ。名古屋在住。 岐阜県飛騨市観光プロモーション大使、しがない物書き、時代遅れのシンガーソングライター。趣味は、冷蔵庫の残り物で編み出す、究極のエコ「残り物クッキング」。 <著書> 「カカポのてがみ(毎日新聞社刊)」「百人の天職一芸(風媒社刊)」「東海の天職一芸(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸2(ゆいぽおと刊)」「東海の天職一芸3(ゆいぽおと刊)」「長良川鉄道ゆるり旅(ゆいぽおと刊)」

「「アヒルのガーコ」」への17件のフィードバック

  1. おはようございます。
    あひるのカーゴの話良い話ですね。
    オッチャンは、毎日あひるのカーゴに、餌を、あげていたのですね。オッチャン 優しい人ですね。
    あひるのカーゴちゃんが、可愛いかったのでしょうね。 オッチャンの子供見たいだったのかな?
    あひるのカーゴとオッチャン元気でいて欲しいですね。

  2. おはようございます。
    あひるのガーゴの話良い話ですね。
    オッチャンは、毎日あひるのカーゴに、餌を、あげていたのですね。オッチャン 優しい人ですね。
    あひるのガーゴちゃんが、可愛いかったのでしょうね。 オッチャンの子供見たいだったのかな?
    あひるのガーゴとオッチャン元気でいて欲しいですね。

  3. 「ガー子とおじちゃん」何てタイトルで物語ができますね。自分の家で飼うだけが愛情じゃないんですね。

  4. 「ぱろぱろエブリデイ」お懐かしい!
    よく拝見してました。オカダさんが取材記事を書いていらしたとは、初めて知りました。ガーコちゃんとオッチャンの大らかで、明るくて、チョッピリ切ないお話。ガーコちゃんもオッチャンをずっと待っていたのね。アカン、なんか泣ける。

    1. そうなんです。
      ぱろぱろエブリデイの、九十九さんの「もちょっとニュース」を書かせていただいていました。
      20歳か21歳の頃だったでしょうか?

      1. あっ、九十九一さんですよね。「お笑いスター誕生」の。

        オカダさんが20歳頃で、すでにTVで書いていらしたなんて、改めてビックリです!
        色々な経験をされたのですね。

        1. いやいや、とんでもありません。
          そんな風に、ただただ無器用にしか生きて来られなかっただけですから。

  5. こんにちは
    ガーコの逸話は素敵ですね。
    飼えなくなってもちゃんと世話をし続けているおっちゃんの人柄も伺えます。

    餌やりをニュースで問題視しているのを見かけますが、餌やりに至った話には触れていないので偏向報道に見えてしまいます。表面化した問題だけを取り上げ、そのプロセスはほとんど報じられません。
    もちろん、犯罪や迷惑行為には断固として反対ですがこのおっちゃんのような人柄であれば微笑ましい逸話になるはずだと思います。

    そんな人情味ある社会であることを願いたいと思います。

    1. そうですよね。
      もうかれこれ40年ほど前の話ですから、まだまだ緩い時代でもありました。
      今だったら給湯器さんの仰る通りです。
      しかししかめっ面な人ばっかりの世の中より、昭和のあの頃の緩さも時には必要ではないのかと、この頃そう思えてなりません。

  6. 愛してくれる人のことは すぐ分かるんですよね。 生き物は…。お花も。
    それは オッチャンも同じでしょうね。
    家族で愛に溢れた時間を過ごしていたんでしょうから。
    仕事帰りにガーコと話しをして そして帰宅後 家族でガーコの話しをする。
    オカダさんがずっと忘れなかったと同じように 家族がず〜っと覚えてる。
    優しい時間が続いてるんですね。

    1. 動物には、人の世の貧富貴賤なんて、さらさら関係ないのですよね。
      言葉も通じるわけでもないのですから。
      その人の発する気だけで、自分に危害を加えないと悟り、心を開いてくれるのではないでしょうか?
      だから、お金のかかった餌ではなく、ガーコはオッチャンが毎日毎日運んできてくれる、パンの耳であったとしても、何よりのご馳走だったのだと思います。

  7. 爽やかなオカダさん こんにちは。
    鶴舞公園の池までお疲れ様。「もちょっとニュース」の取材記事 シロアヒルのガーコのお話には こころ温まるエピソードがあったのですね。良いお話をお伝え頂きありがとうございます。

    家にとんびのこどもが入って来たことはありますけど。何もしてないのに 大騒動して 帰って行かれました。羽毛だけ残して。

    1. ええっ、トンビの幼鳥ですか?
      ご家族もさぞかし驚かれたでしょうが、どこでどう間違ったのか、民家に迷い込んでしまったトンビ君の方が、もう一つ腰を抜かすほど驚いたでしょうね!
      って、鳥類に腰なんてあるのかしらん?

      1. 「鳥が入って来た」というのでいつものツバメさんかと思ったら いまどきの子ですね。携帯でパチリ!
        あっ!そうですね。とんび君のほうがびっくりぽん!なるほど〜。なっとく。

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