「ギヤマンの欠片(かけら)」No.6

6月19日(月)のブログで、ぼくから緊急発表があります!是非ともご覧くださいネ‼

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 Autumn in C♭」開催決定!!! ★詳細は4/29のブログをご確認願います。

まずはぼくの楽曲「花筏」をお聴きいただきつつ、物語の世界をお訪ねいただければこの上なく幸せです。

「ギヤマンの欠片(かけら)」No.6

「これは、殿のご母堂が輿入れの際、国元の越前より持参された、古九谷の絵皿です。今はわけあって子細を申仕上げるには参りませぬが、この大切な絵皿がいつの間にか欠けてしまい…」

峰が桐箱から欠けた絵皿を取り上げた。

写真は参考

「これは殿にとって、亡きご母堂様のかけがえのない御遺品。このまま放って置いては、ご母堂様が報われませぬ。どうか、どうか急ぎ、金接ぎを施してはいただけませぬか」

峰の憔悴しきった哀れな姿を、見るに見かね辰吉は、二つ返事で金接ぎを請け負うことにした。

「明後日の今時分には、必ず仕上げておくよ。明後日にでも、引き取りに来てくんろ」

辰吉の言葉に、峰はやっと安堵の表情を浮かべ、深々と頭を垂れた。

しかし約束の日が過ぎても、峰は絵皿の引き取りにやって来なかった。

参考資料

とは言え、仕上げた絵皿を、いつまでも手元に置いてはおけぬ。

辰吉は翌朝、一人で高遠藩江戸上屋敷へと向かった。

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.5

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 Autumn in C♭」開催決定!!! ★詳細は4/29のブログをご確認願います。

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.5

うらぶれた長屋が立ち並ぶ、神田明神町の一角。

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表戸の破れ障子には、やっと読めるほどの掠れた文字で、ただ「金接ぎ辰」とだけ墨書されている。

今年七つになったばかりのお藤は、母の金接ぎ作業を眺めるのが好きだった。

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欠けた甕や皿をじっと眺め、割れた小さな欠片を畳の上で繋ぎ合わせる。

それは物心付いた頃から、いつしかお藤の独り遊びとなっていた。

欠ける前の甕や皿の姿は元より、描かれた絵柄も分からぬ。

それでもお藤は、欠片を手にして語りかけ、まるでその声でも聞くように、小さな欠片同士を繋ぎ合わせてゆく。

写真は参考

「あらっ?もう出来たのかい?その甕はまだついさっき、始めたばっかしじゃないか」

腕の良い職人だった、辰吉の面影を宿すお藤を見詰め、志乃はこっそり小さな溜め息を吐いた。

辰吉が忽然と姿を消したのは、路地端の枝垂桜が、色付き始めた春先の事。

写真は参考

高遠藩江戸上屋敷へ、金接ぎで仕上げたばかりの絵皿を、納めに行くと言って出かけたきり、突然消息が絶たれた。

想い返せば、辰吉が姿を消す、三日前のことだった。

「ごめんなさいまし。こちらが江戸で評判の、金接ぎの辰吉さんで?」

西に向いた障子戸を、茜陽が染め始めた夕刻。

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辰吉の膝頭へ伸びた茜陽が、突如として陰った。

障子の向こうで、高遠藩江戸上屋敷の、峰と名乗る奥女中の声がした。

「へいっ。辰吉はあっしですが。なにか御用で?」

障子戸を開けると、純白の絹織物に包まれた桐箱を抱え、真っ青な顔で峰が立ち尽くしている。

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.4

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.4

「大殿、そして若君様。惣兵衛一生の不覚にござりました。斯くなる上は…」

控えの間の中央に坐した惣兵衛は、そう震える声で独り口上を述べ、天井を仰ぎ見た。

参考資料

長年若君の側用人として、内藤家にお仕えした遠い日々が、走馬灯のようにまざまざと蘇る。

惣兵衛はまるで、その懐かしさに抗うよう首を大きく左右に振った。

そしておもむろに白装束の前をはだけ、痩せ衰えた腹を突き出し、剥き身の脇差を懐紙に包み、逆立てたまま握り締める。

写真は参考

後は作法通り、三方を尻に宛がい、最後の力を振り絞り、刃を腹へと突き立てるだけ。

「定安、さらばじゃ。父の分までしっかりと、若君にお仕えするのじゃ。では、介錯頼む」

惣兵衛は晴れやかな表情で、一度だけ己が嫡男を見詰めた。

定安は唇を真一文字に結んだまま、父に頷き鞘を抜き払う。

参考資料

「では、ごめん」

惣兵衛は、切っ先を腹に突き立てようと、渾身の力を込めた。

「爺、早まるでない」

襖が大きな音と共に開かれ、これまで一度足りと耳にしたことも無い、喜八郎の途轍もない大声が響き渡った。

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.3

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.3

惣兵衛は、飾り棚の前で(くずお)れた。

写真は参考

「若様…、一大事にござりまする」

「爺!いかがした」

濡れ縁の踏み石に足を掛け、喜八郎が座敷の中を覗き込んだ。

写真は参考

「神君家康公拝領の家宝、高遠藩三万三千石、内藤家伝来のあのギヤマンの酒壺が…」

写真は参考

淡い春の陽射しを浴び、座敷に仄かな光の帯を放っていたギヤマンが、跡形も無いほどに砕け散ってしまっている。

「嗚呼、なんたること…」

惣兵衛は、砕け散ったギヤマンの欠片を、必死の形相で拾い集めた。

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.2

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.2

「ああっ!」

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勢いよく振り下ろされた喜八郎の太刀筋を、慌てて受けようと惣兵衛が面を庇う。

しかし喜八郎の太刀筋の鋭さが勝り、惣兵衛の木刀は跳ね飛ばされた。

木刀は開け放たれた座敷を飛び越え、床の間の違い棚へと勢いよく飛び込んだ。

写真は参考

ガッシャーン

忙しく鳴き交わしていた春告げ鳥も、その衝撃音に怯んだのか、突如として美しい鳴き声を止めた。

「ああっ、若君!」

惣兵衛はもんどりを打ち、木刀が飛び込んだ床の間へと向かい、慌てふためき濡れ縁を駆け上がった。

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「なな、なんと」

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「金糸雀(かなりあ)」No.34

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ぼくの「金糸雀」をぜひともお聴きいただきながら、シナリオをご覧ください。

 お風呂のドアが開く。

佳 代「あーあ、やっぱり眠っちゃってる。

   相当疲れてたんだろうなぁ」

参考

ナ レ「既に真夜中。

   佳代は寝付けず、窓越しに星空を眺めている」

写真は参考

ラジオ「(回想) とにかくビッグなこのチャンス!

   さあ、あなたはどうする!(エコーがかかり、「どうする!どうする!どうす

   る!」とゆっくりフェードアウト)」

写真は参考

マリー「(エコー/回想) あんた唄上手いけどさぁ、さっきの唄、何だか泣いてるみた

   いだった!」

マリー「(エコー/回想) だってもしも中学の時、自分の中の女を押し殺して、いやい

   や無理して男で生きる辛さを考えたら、まっぴら御免。

   今の方がよっぽどましだわ」

参考

マリー「(エコー/回想) 人生なんてさぁ、たった1回こっきりよ。

   良くても悪くても」

マリー「(エコー/回想) あんた何悩んで落ち込んでんだか知らないけど、初めてアン

   タを見た時の輝き、すっかりどっかに落っことして来ちゃったんじゃない?」

ナ レ「鳥かごの中のカナリアに、小声で話しかける佳代」

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佳 代「あんた、こんな小さな世界に閉じ込められて・・・哀しくは無い?

   わたしは・・・」

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「ギヤマンの欠片(かけら)」No.1

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今日からは、ぼくが10年近く前に初めてこっそり書いた、なぁ~んちゃって時代物の作品です。はてさてどんな物語となりますやら。お付き合いいただければ何よりです。そう言えばこの作品を書き始めた頃、ぼくの楽曲「花筏」の構想を朧気に抱いたものでした。

まずはぼくの楽曲「花筏」をお聴きいただきつつ、物語の世界をお訪ねいただければこの上なく幸せです。

「ギヤマンの欠片(かけら)」No.1

まるで淡い紅でも引くように、散り初めし桜の花びらが舞う。

写真は参考

信州高遠藩江戸上屋敷の小さな中庭には、国元よりも一足早く、春の息吹がそこかしこに満ちていた。

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桜色した一片(ひとひら)の小さな花弁が、まるで散り行く運命(さだめ)に、抗おうとでもするかのように身を(ひるがえ)す。

ほんの一時でも、宙を彷徨い続けていたいとばかりに。

春まだ浅い気まぐれな風に、ただその身を委ねながら。

散り初めし桜一片が、ゆったり舞い落ちるまでの束の間。

たとえそれは花弁が抱いた、儚い未練であったにせよ。

我が目に映るその姿は、何とも馨しい春の女神の、可憐な戯れにさえ見えるから不思議なものよ。

それにひきかえ太平に甘んじ続けた、今時の武門の世は、果たして桜に比べ如何ばかりのものであろうか。

幾度となく(おと)のうた、潔い散り際さえ、遠の昔に失した我が身。

築山脇の池に投じた貧相な己が姿を、石室惣兵衛は今更ながら恥ず想いで眺めた。

写真は参考

老いさらばえ、曲がり果てた腰を、グイッと一つ伸ばしながら。

「どうした爺。まいるぞ」

「ははっ、若君。ただ今」

元服前の総髪を揺らしながら、袴姿に片袖を脱いだ内藤喜八郎が、木刀を上段に構える。

参考

「イャーッ」と一声張り上げ、惣兵衛に向かい大きく踏み込み、瞬時に一太刀を浴びせた。

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「金糸雀(かなりあ)」No.35(最終回)

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ぼくの「金糸雀」をぜひともお聴きいただきながら、シナリオをご覧ください。

18 名古屋駅、新幹線上りホーム                         

  発車のベルが鳴り響く。

駅アナ「14番線の列車は、のぞみ40号東京行きです。

写真は参考

   名古屋を出ますと品川まで止まりません。

   ご乗車の方は、お急ぎください。

   間もなく発車となります。

   お見送りの方は、黄色い線の内側までお下がりください」

ナ レ「佳代はボストンバックを手に、新幹線上りホームで、東京行きののぞみ号

   に乗り込んだ」

写真は参考

佳 代「(涙声)さよなら、たかし。

   さよなら、マリーさん。

   わたし絶対後悔しない!

   ゴメンネたかし。

   わたし金糸雀のくせに、あなたのこと愛しちゃって・・・。

   さよなら・・・」

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  発車のベルが鳴り響き、のぞみ号が走り去る。

(完)

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「金糸雀(かなりあ)」No.33

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  箪笥の開け閉めの軋みと、ボストンバックの開く音。

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  たかしのいびき。

  窓を開ける音。

  風の音に交じって枯葉が舞う音。

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  鳥たちの囀る声。

  たかしのいびき。

  便箋にボールペンを走らせる音。

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  ペンがテーブルに置かれる音。

ナ レ「明け方。

   佳代は、『ゴメンネたかし。わたしは所詮カナリア。

   あなたとの幸せの隙間から、今飛び立ちます』と書いた一枚の便箋を、たか

   しの枕元に置き、ボストンバックを手に佇んでいる」

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佳 代「(小さな涙声)たかし。

   ・・・幸せ、ありがとう。

   わたしの身勝手、どうか許して。

   さ・よ・な・ら・・・」

ナ レ「佳代は窓際にカナリアの鳥籠を寄せ、籠の扉を開けた」

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佳 代「さあ、もうお前は自由よ!

   どこへでも好きな場所へ行って、好きなだけ唄いなさい!」

  静かにドアが開きそして閉まり、鍵が掛かる。

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「金糸雀(かなりあ)」No.32

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  お風呂の湯船の音と、たかしの演歌の鼻歌が聞こえる。

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  台所からは、炒め物の音。

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  茶碗と箸の触れ合う音。

たかし「ご馳走さん。

   旨かったーっ」

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佳 代「どうだったレース」

たかし「まあまあってとこかなぁ。

   復帰第一戦にしちゃあ」

佳 代「もうお布団敷いてあるから、先に休んでて。

   わたしもお風呂入って来るから」

たかし「じゃあ、そうさせてもらおうかなぁ」

  お風呂の湯船の音。

  佳代の鼻歌「You’d be so nice to come home to」が聞こえる。

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  たかしのいびき。

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