今日の「天職人」は、岐阜県安八町の「町火消し」。
火の用心マッチ一本火事の元 火消し半纏引き摺るように 声を張り上げ拍子木二つ 父との夜警が小さな誇り 火の用心マッチ一本火事の元 粋な藍染め刺子の半纏 背中に大きく染め抜いた 火消し男の心意気
岐阜県安八町の町火消し、坂重孝さんを訪ねた。

「本当は消防士になりたかったんやけど、長男やったで」。重孝さんは物静かに語り出した。
「ちょ~っと待ったぁ!」事前の調べによれば、泣く子も黙る元カミナリ族「貴婦人」の創立メンバーだったと。「こ、こ、こんな筈じゃあ・・・」。
重孝さんは撚糸業と農業を営む家に、やっと誕生した跡取りだった。
高校を出ると消防士の夢を断念し家業へ。しかし友人たちの誘いで仕事も手に着かず。見かねた父から「他所の冷や飯でも喰うて来い」と、放り出された。元々車好きだった重孝さんは、近くのガソリンスタンドに勤務。自然に車好きの仲間が集まった。
「たまたま同級生の一人が『貴婦人』って書いたステッカーを作って、仲間三~四人と面白がって車に貼ったんやて」。するとそのステッカーだけが人から人へと渡り歩き、気が付いた時には岐阜で勢力を誇る本物のカミナリ族が「貴婦人」を名乗り、そのステッカーを貼っていたそうだ。それが高じて周りから、「おめえ、創立メンバーやったんやて」と囃し立てられる始末。
重孝さんは、安八町第三分団の分団長を務め、今年三月(平成十五年九月九日時点)末で引退。通常三年の任期にも関わらず、皆に推されて延べ十年間、火消し半纏を羽織り誰より先に火事場へと向かった。

まず火事の一報が入ると、町役場がサイレンを鳴らす。しかし重孝さんの工場では、撚糸のモーター音に掻き消されてしまう。重孝さんは工場内に、無線を設置し消防本部の一報に神経を尖らせた。
いざ町内で出火となれば、サイレンを響かせ火事場へ急行。一秒たりと無駄にせぬよう、ヘルメットも火消し半纏も途中で身に着ける。町火消したちの顔が強張る一瞬だ。何はともあれ火元近くの水利に陣取り、襲い掛かる火の手に挑む。しかし装備も満足ではない町火消したちには、燃え盛る炎の中で取り残された人を、救出する術など無い。専門の訓練を積み、最新の防火服を纏ったプロの消防士の到着を待ち、全てを委ねる他はない。「だで俺らに出来る事は、一秒でも早よ火事場へ行って水出すことなんやて」。消防士の夢を断念し十四年。念願の消防団入りを果たした。「早よ順番が廻ってこんかなって、そればっか思っとったんやて」。

郷土を守る町火消し。金や名誉のためではない。ただ愛する郷土と家族を守るため。火消し半纏たった一枚で、敢えて危険に身を晒す。天晴れ!平成の町火消したち。
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