7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.12

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「だって、その写真のモッくんは、コンチャンの一番のお友達だし・・・おばちゃんもおじちゃんも・・・それにお兄ちゃんも美代ちゃんも・・・みんなみんなとっても大切な人たちなんだもん。・・・それが・・・それが熊や虎に襲われて死んじゃったら・・・」。

写真は参考

木乃葉の目から大粒の涙が溢れ出した。

「この新聞によると、熊と虎に襲われるのは、今夜の9時とあるぞ!」。

写真は参考

「ねぇ、おじいちゃん。今からだったら、まだ間に合う?」。

「ああ、急げばきっと間に合うさ。よしっ!わしもコンチャンと一緒に行こう!」。

「ええっ?だ、だって・・・」。

「なあに心配は無用じゃ。どうせ隠居の身。毎日この無料パスを使って、あても無くバスに乗ってあっちへ行ったりこっちへ来たり。家におっても肩身も狭いし」。

写真は参考

「ほ、本当?本当に一緒に行ってくれるの?・・・あっ、ちょっと待って。それって・・・もしかしておじいちゃんコンチャンを誘拐しようとしてるとか?」。

「エエッ?」。

「だって先生やママがいつも言ってるもん。絶対知らない人に付いてっちゃだめだって。・・・だから」。

「ワッハッハッハ!」。

「何がおかしいのよ!」。

「だってコンチャンの目には、このわしが誘拐犯に見えるかい?」。

木乃葉は改めて老人を、頭の天辺から足元まで隈なく眺め回した。

「う・・・ううん」。

「じゃあこうしてはおられん!さあ急ごう」。

老人は立ち上がった。小ぶりのセカンドポーチにぶら下がる、ぬいぐるみ人形の鈴がなった。

写真は参考

チリチリ チリリ~ン

「あっ、そ・・・そのお人形・・・」。

幼い頃の記憶の欠片が、カラカラっと音を立て、木乃葉の頭の中を駆け巡った。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.11

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「お嬢ちゃんもバスに乗るんかい?」。

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「うん!・・・でもどこへ行けばいいのかわかんないの?」。

「なんじゃい、それは?」。

老人は、木乃葉が握り締めている新聞の切り抜きを指差した。

「これ?・・・新聞だよ」。

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木乃葉はそう言うと、新聞を老人に差し出した。

「なになに・・・三重県英虞湾のキャンプ場に熊と虎が・・・」。

「エエッ?!」。

「一家5人が襲われたって・・・」。

「な、何でおじいちゃん・・・それが読めるの?」。

「アッハッハッ。そりゃあわしじゃて、尋常高等小学校には通ったからのう」。

「ううん、そうじゃなくって。そこに書いてある事が、ママにもお菓子屋のおばちゃんにも、違うことに見えるんだって。だからママはコンチャンの頭が暑さで変になっちゃったんじゃないかって言うの!でも・・・おじいちゃんには、コンチャンと一緒のように見えてるんだよねぇ!」。

「コンチャンと一緒のように見えるとなあ・・・。しかしそれが何か大変な事なのかい?」。

写真は参考

老人は鼻先でズリ落ちそうになっている眼鏡を掛けなおしながら、木乃葉の顔を見つめた。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.10

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「バスに乗ってどこへ行けばいいんだろう?」。

木乃葉は独り言を繰り返し、バス停に続く交差点を左に回った。

「あれっ?」。

バス停のベンチに老人がうずくまっていた。

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「おじいちゃん、・・・ねぇ、おじいちゃん大丈夫?・・・気分でも悪いの?」。

木乃葉は老人の肩を揺すった。

「うぅうぅ・・・・・」。

老人は苦しそうだ。

木乃葉はバックパックから、さっき買ったばかりのジュースを取り出し、封を切って老人の口元に差し出した。

写真は参考

「うぅう・・・あぁ・・・」。

「しっかりして!おじいちゃん!」。

写真は参考

老人はゆっくりと顔を上げた。

「ああ助かった。もう大丈夫じゃ。心配かけてすまなかったねぇ」。

「あれっ?ジージ?」。

「・・・・・・・・」。

ジージとは、3ヶ月前に亡くなった木乃葉の祖父だ。

木乃葉は、その老人があまりにも元気な頃の、祖父に似ていたため驚いてしまった。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.9

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「これ下さい」

木乃葉は、大型の冷蔵庫からペットボトル入りのジュースと、お徳用袋に6個入ったチビあんパンをおばちゃんに差し出した。

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「えーっと、アンパンが220円で、それにジュースが150円だから・・・全部で370円ね」

「おばちゃん、これ開けて。それでこの中からお金取って」

木乃葉は丸い缶のキティちゃんの貯金箱を差し出した。

写真は参考

「ええっ、これ開けちゃっていいのかい?」

「うん」

「だってこれ、コンチャンの貯金箱なんだろう?」

「そうだよ」

おばちゃんは怪訝な顔をして、缶切りで蓋を開けた。

「ウワーッ!コンチャン、一杯入ってるネェ」

おばちゃんは貯金箱の中から370円を抜き取り、掌の上に広げて木乃葉に見せながらいった。

「いいかい。100円玉が3つだから300円ね。それに50円玉が1個だから合わせて350円だろう。あといくらあれば370円かなあ?」

「・・・10円が2個で、・・・ちょうど370円」

「お見事、正解!」

おばちゃんはそういって、蓋の開いた貯金箱と、おまけとしてラムネ菓子を1袋、木乃葉に手渡した。

写真は参考

「気を付けて帰るんだよ」

「うん。ありがとう、おばちゃん!」

木乃葉はピンクのバックパックの中にパンとジュース、それに蓋の開いた貯金箱を詰め込みながら、公園を横切ってバス停へと駆けて行った。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.8

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

とにかく木乃葉は走り出した。

どうしたらいいのか、誰に話したら判ってくれるんだろう?

そんな思いで、小さな胸が今にもはちきれそうになった。

木乃葉はいつも友達と通う、駄菓子屋の前に立ち止まっていた。

写真は参考

「こんにちは!」。

「あらいらっしゃい。今日はコンチャン一人なの?」。

「ねぇねぇおばちゃん。これ読んでくれない?」。

「どれどれ・・・」。

駄菓子屋のおばちゃんは、木乃葉が手渡した新聞記事を受け取り、両手を伸ばして目を細めながら見詰めた。

参考資料

「えーっと・・・14日午後2時頃、東名浜松サービスエリア付近の上り車線で、大型トラックが中央分離帯に追突し横転。その弾みで後続の自家用車3台が、次々に追突する大惨事となった。自家用車には・・・」。

「もういいよ。ありがとうおばちゃん」。

おばちゃんは新聞から目を上げ、木乃葉を見詰めキョトンとした。

「エエッ?も・・・もういいのかい?まだ記事が一杯書いてあるよ?」。

「うん。でもいいの」。

「へんな子だねぇ・・・」。

おばちゃんは、何が何だかさっぱりわからず、不思議そうな顔をした。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.7

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

木乃葉は、新聞を埋め尽くす小さな活字を目で追った。そして学校で習ったばかりの漢字と、ひらがなをゆっくりと拾い読んだ。

写真は参考

「15日午後9時()○○○(三重県)○○○(英虞湾)のキャンプ()()()○○(出没)し、名古屋からキャンプに()ていた大橋さん○○(一家)5人を○○(次々)()った。5人は○○(病院)()ばれたが、()○○(死亡)していた。()()は、サーカス()○○(所有)○○(猛獣)で、○○○(伊勢市)での○○(公演)()()()○○(勝浦)()けて()()()、トラックから()げ出したものと○○(判明)した。()()は、○○○(警察官)によって○○(射殺)された」。

木乃葉はもう一度、新聞記事の顔写真を見つめた。

「・・・・・ってことは・・・15日って今日でしょう・・・エエッ?そ、そんな・・・モッくん家のみんな・・・今夜9時に・・・死んじゃうってこと?」。

木乃葉は読みかけの新聞を持って、ベランダに向って駆け出そうとした。

「あっ、・・・だめだ。ママにはこの新聞見えないんだ・・・」。

木乃葉は新聞記事をこっそり切り取り、自分の部屋へ駆け込んだ。

木乃葉は本棚に背伸びして、やっとの思いでキティちゃんの貯金箱を手にした。

写真は参考

そしてお気に入りのピンクのバックパックに放り込んで、玄関を飛び出して行った。

「ママ!ちょっと遊びに行って来るネ!」。

写真は参考

木乃葉は大声でベランダのママに向って叫んだ。

「お昼ご飯までにはちゃんと帰って来るのよ。あっ、それからちゃんとお帽子被って行きなさいよ!」。

「アッ」。

木乃葉はもどかしそうにサンダルを脱ぎ捨て、帽子を取りに自分の部屋へと駆け込んだ。

写真は参考

「今度は、本当に行って来るからね!」。

「は~い。転んだらチャント起きるんだよ!」。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.6

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「・・・・・。おかしいな?コンチャン、この暑さでボケちゃったのかなあ?」。

「ボケてなんかないもん」。

「じゃあ今日は病院がお休みだから、また明日の新聞もそう見えちゃったら、眼医者の先生の所へ行ってみようか?」。

「コンチャンがおかしいんじゃなくて、ママの目がおかしいんじゃないの?」。

洗濯かごを抱えながらママはベランダへと向った。

写真は参考

「何でコンチャンの言ってること信じてもらえないんだろう。・・・本当に明日のプチモンが載ってるのに・・・」。

木乃葉はブツブツ呟きながら、新聞のページをめくった。

テレビ面の裏のページには、難しい漢字が一杯並んでいる。

写真は参考

何気なく右側のページに目をやった瞬間、木乃葉は驚きのあまり飛び上がりそうになった。

そこには小さな丸い顔写真が5個並んでいた。

「モッくん?・・・ええっ?・・・何で?」。

その写真が何を意味しているのか、木乃葉は直ぐにわかった。

つい先日、隣町の小学生が誘拐される事件があった。

その時ママに事件が載った新聞を見せられたからだ。

『コンチャン。知らないおじさんに声を掛けられても、絶対に付いて行っちゃあだめよ!この子見たいに殺されちゃったら大変でしょう!』

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.5

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「もうモッくんたち、出発しちゃったかなあ?」。

新聞受けの朝刊を取り出し、木乃葉がつぶやいた。

写真は参考

「今度パパがお休み取れて、東京から戻ってきたらコンチャンもキャンプに行きたいってお願いしてみたら?」。

ダイニングテーブルにトーストを運びながら、ママが言った。

写真は参考

「うん・・・でも・・・コンチャン本当はモッくんたちとみんなでキャンプしたかったんだ・・・」。

「じゃあ今度モッくんのおばちゃんに相談してみるから」。

「あっ、この新聞まただ!」。

「なにがよ?」。

「だって今日、日曜日でしょう。なのに何で月曜のプチモンが載ってるの?絶対変だよ・・・この新聞。昨日だってそうだったし・・・」。

写真は参考

「またかいな?どれどれ・・・」。

ママは木乃葉の額に手を当てた。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.4

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

翌朝も夏の太陽がジリジリと照り付けていた。

チーン、チーン。

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「ごめんね、お義母さん、お義父さん。うっかり迎え火焚くの忘れて、今朝になっちゃって。お盆ももう今日一日しか残ってないけど、ゆっくりしていってね」。

仏壇に手を合わせながら話し掛けているママの元に、眠い目をこすりながら木乃葉が歩み寄った。

「オハヨウ、ママ」。

「アラッ、コンチャンおはよう」。

「ねぇママ、茄子やキュウリのお馬さんに乗って、ばあちゃんとじいちゃんがお家に帰ってくるんでしょう」。

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「うん。だけどママうっかりしてたから、今日一日だけになっちゃった」。

「ふぅーん」。

木乃葉は、ママの膝の上に座り込み、小さな両手を合わせた。

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7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.3

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「ただいま~ッ」。

木乃葉は靴を乱雑に脱ぎ捨て、玄関から居間へと駆け込んだ。

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「あれっ、もう帰ってきちゃったの?モッくんと今日は遊ばないの?」。

洗濯物をたたみながらママが振り返った。

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「うん」。

「あれッ?何だ、また喧嘩しちゃった?」。

「喧嘩なんてしてないもん」。

「じゃあどうしたのよ」。

「モッくんち、明日っからキャンプなんだって。それで今日は用意しなきゃいけないから、遊べないって」。

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「ふ~ん。そうなんだ」。

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