7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.22

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

とても残念ながら、お客様にもそれぞれご事情があり、2席キャンセルが生じました。もしお出掛けになろうかなってお考えの方がまだおいででしたら、ぜひご参加いただければ幸です。お問い合わせは、メールで、herakozu@yahoo.co.jp「オカダミノルほろ酔いLive 2023」係までお気軽に! Liveの詳細は、3月16日のブログをご参照願います。

「これだよ、これ!」。

「ああっ!」。

写真は参考

「お前が切り抜いたんじゃないのか?」。

「木乃葉だわ!そう言えば、昨日もあの子新聞を見ながら、確か変な事いってたわねぇ」。

・・・・・ねぇママ。今日、土曜日でしょう。何で“わがままドミソ”やらないの?これって明日の日曜日のアニメになってるんだもん。

木乃葉は不満げに、新聞のテレビ欄を指差してママにたずねた。

写真は参考

「何でって、ママだってわかんないわよ」。

ママはボサボサの髪のまま、木乃葉の脇から新聞を覗き込んだ。

「何言ってるのよ、ちゃんと6時から“わがままドミソ”って書いてあるじゃない!」。

「うそっ!書いてないん・・・だ・・・もの・・・???」。

木乃葉は、ママが指差す新聞を見つめた。

「ほら、ここ。嘘なんかじゃないもん!」。

「ちょっとコンチャン!あんた熱でもあるんじゃないの?」。

そう言うといきなりママは、木乃葉の額に手を当てた。

「熱なんてあるわけないもん!何でママには見えないの…?ほらここも、あっ、ここにも。ほら明日のテレビの番組ばっかじゃん!」・・・・・

「そして今朝は今朝で」。

ママは、今朝の木乃葉とのやりとりを思い返した。

・・・・・「あっ、この新聞まただ!」。

「なにがよ?」。

「だって今日、日曜日でしょう。なのに何で月曜のプチモンが載ってるの?絶対変だよ・・・この新聞。昨日だってそうだったし・・・」。

「またかいな?どれどれ・・・」。

ママは木乃葉の額に手を当てた。

「・・・。おかしいな?コンチャン、この暑さでボケちゃったのかなあ?」。

「ボケてなんかないもん」。

「じゃあ今日は病院がお休みだから、また明日の新聞もそう見えちゃったら、眼医者の先生の所へ行ってみようか?」。

「コンチャンがおかしいんじゃなくて、ママの目がおかしいんじゃないの?」・・・・・

「ちょっと待てよ。そういえば、俺も子供の頃、そんな時期があったなあ。そうそう、ちょうど巨人のONが全盛時代の頃。やっぱり木乃葉と同じように、翌日の出来事が新聞に載ってたんだ。『明日巨人V9達成!見事ONアベックホームラン』っていう、スポーツ記事さ。俺は得意になって学校で友達に話したんだが、やっぱり誰も信じてくれる筈も無く、皆から散々バカ呼ばわりされたよ。でも翌日になったら皆の態度が一変して、気味悪そうに俺のこと見てんだよ!まいっちゃったよ、まったく」。

写真は参考

「あなたの自慢話なんてどうだっていいんだけど、・・・って言うことは、あなたと同じ事がコンチャンにも起こったって事かしら?」。

「そうかもなあ。それに新聞を切り抜いてまで、持って行かなければいけないような、木乃葉にとって重大な何かが起こるって事なんだ!」。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.21

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

とても残念ながら、お客様にもそれぞれご事情があり、2席キャンセルが生じました。もしお出掛けになろうかなってお考えの方がまだおいででしたら、ぜひご参加いただければ幸です。お問い合わせは、メールで、herakozu@yahoo.co.jp「オカダミノルほろ酔いLive 2023」係までお気軽に!        

●日 時:2023年 4月16日(日)

     14:00開場、14:30頃開演、16:00頃終了

●会 場:MUSIC & BAR 『C♭』

 岐阜市神田町7-7-3 神田セブンビル 2F 058-266-4477

●出 演:オカダミノル & ヤマもモ(友情出演)

●参加費:お一人様Live Charge \4,000-(「キリン・一番搾り」「キリン・氷結レモン」「キリン・ホワイトホースハイボール」「キリン・グリーンズフリー(ノンアルコールビルー)」の飲み放題)*感染症予防への取り組みで、缶商品でのご提供となります。

*ソフトドリンクをご希望の方は、「C♭」で1ドリンク500円でご注文いただくことも可能です。またソフトドリンクの持ち込みも可能です。

*おつまみは参加者各自1品持ち込みで、みんなで持ち寄ったおつまみをみんなでシェアーしていただきます。(おつまみは、自作自慢の1品でも、スーパーのお惣菜でも、市販のコンビニおつまみや、缶詰とかお菓子類でもOK)

*参加者全員に、KIRIN BEERさんからのお土産もご用意いただけます!

●定 員:30名(全席自由席)

●申込み:メールで、herakozu@yahoo.co.jp「オカダミノルほろ酔いLive 2023」係まで。*万が一キャンセルの場合は、必ず2023年 3月31日(金)17:00までにメールでご連絡願います。その時点を過ぎると、全額負担とさせていただきます。

●締 切: *先着順、残りキャンセル分2席

●問合せ:herakozu@yahoo.co.jp

●主 催:オカダミノルほろ酔いLive実行委員会

●協 賛:KIRIN BEER

「そちらにもおじゃましておりませんか?・・・そうですか。それじゃあまた」。

電話を切りながらママは溜息を漏らした。

マンションのベランダの遥彼方で淡い稜線を描く鈴鹿山脈に、真夏の太陽がゆっくりと傾き始めていた。

写真は参考

壁の時計は、もう4時30分を回っている。

『あの子ったら、お昼には帰りなさいって言って置いたのに。お約束破ったことなんて、今まで一度もなかったのに。コンチャンはこんな夕方まで、一人で一体どこへ行っちゃったんだろう・・・。あの子に限って・・・・ま、まさか誘拐?・・・い、いや、きっと時間も忘れてお友達と遊んでるんだわ!そ、そうよ、そのうち絶対チャイムを鳴らして元気良く戻って来るに決まってるわ!「ママーッ、お腹ペッコペコ!」って言って』

ママは不安な思いを断ち切るようにキッチンへと向かった。

ピンポーン・ピンポーン

写真は参考

<ほら、やっぱり帰って来たわ!>

「ハ~イッ!」。

玄関のロックを外すと、そこには意外なことに淡いピンクの半袖ボタンダウンシャツに、緩めたネクタイ姿のパパが立っていた。

「ただいま」。

「あらっ、あなた?」。

「明日急に四日市に出張になったから、今日の内にこっちに戻っておこうと思って」。

「あらっそうだったの」。

「電話した方が良かった?」。

「・・・・・」。

「あっそうか!ご飯、俺のぶんが無いんだ!まいっちゃったなあ・・・」。

「ご飯なんてなんとでもなるからいいんだけど・・・木乃葉がねぇ、朝から遊びに出かけたまま、まだ戻って来ないのよ!」。

「まあどうせ仲の良いお友達の家で、TVゲームにでも夢中になって、帰る時間を忘れてんじゃないのか?」。

単身赴任先の東京から戻って来たパパは、冷蔵庫から缶ビールを取り出してソファに腰掛けた。

写真は参考

「そうだったら心配ないんだけど。さっきから仲良しのお友達の家に何軒か電話してるんだけど、どこにもいないのよ!」

「じゃあ、お前の知らない新しいお友達の所とか?・・・おいおい、何か大事な記事でも載ってたのかい?」。

写真は参考

パパは新聞を広げながらママに尋ねた。

「エエッ?大事な記事?」。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.20

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

プッシュー プッシュー

砦岬行きのバスは、峠に差し掛かったところで真っ白な水蒸気を噴き上げて止まった。

写真は参考

「ありゃりゃ・・・またオーバーヒートかいな!」。

ワンマンカーの運転手は、取り分け焦った様子も無く鼻歌交じりに前方ドアからバスを降り、水蒸気が最も噴出しているフロントグリルを覗き込んだ。

車内に乗り合わせた3人の乗客たちも、全く驚いた気配すら見せない。

ただ木乃葉と老人だけが、何事が起こったのかと不安そうな表情で座席から立ち上がった。

「お客さん、すんませんなあ。このポンコツまたオーバーヒートしてもうたようで・・・、なっともなりませんで、すんませんがこっから(あゆ)んで行ってもらえるやろか?本社から代わりのバス呼んでも、何時になるか知れへんしなあ。ほんま、すんまへんなあ」。

運転手はあきらめ顔で「すんまへん」を繰り返した。

「おおきになあ」。

乗り合わせた老婆が、背中に風呂敷包みを背負ってバスを降りていった。

写真は参考

「まあ、しゃあないし。ボチボチ(あゆ)んで行くわ」。

そう言いながら子供の手を引いた母親もバスを降りていった。

「どうやら故障のようじゃ・・・」。

「うん、おじいちゃん歩いて行こう!」。

木乃葉と老人も席を立った。

「すんませんなあ。どこまでおいでんなる予定やったんかなあ?」。

バスから降り立った木乃葉と老人の背中に、運転手が話し掛けた。

「終点の砦岬だよ!」。

木乃葉は振り返ってバスの運転席に向って答えた。

「そっ、そうか・・・」。

「なんで?」。

「ここから砦岬までは、徒歩でどれくらい掛かるんかのう?」。

老人が木乃葉の横から尋ねた。

「こっからですと・・・おじいさんとお嬢ちゃんの足やったら、まだまだかかりますやろなあ・・・次のバスはあらしませんしなあ」。

「おおよそ何時間ほどですやろう?」。

老人は再び不安げに尋ねた。

「そうさなあ、まだこっから砦岬までは10㌔以上もあるから、あんたらの足やったら5時間ほどかかるんやろうなあ」。

「5時間も!ねえ、おじちゃん今何時?」。

「今は・・・4時10分前やわ」。

「って・・・ことは、ぎりぎり9時ってこと?」。

「そうなるのう。さあコンチャン、とにかく先を急ごう!」。

「うっ、うん!」。

写真は参考

木乃葉と老人は砦岬へと続く峠の一本道を歩き始めた。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.19

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「おいッ基喜!美代とふざけてないで、さっさとジャガイモとニンジン洗って来いよ!」。

兄の裕也は、慣れない手つきで玉ねぎを刻みながら、そう言って基喜を横目で睨みつけた。

写真は参考

「じゃあぼくにも包丁使わせてよ!」。

基喜は砂まみれの手を、半ズボンで払い落としながら兄に食い下がった。

「だったら言われた通り、さっさと洗って来いよ!」。

裕也は包丁の手を止め、基喜に向き直って怒鳴った。

砦岬キャンプ場は、その名の通り岬の突端に築かれた砦跡を、オートキャンプ場に整備しなおした所で、英虞湾を眼下に見下ろす絶景が売り物だ。

写真は参考

今日のキャンプ場は、お盆の最終日と日曜日が重なったせいか、名古屋や関西からのキャンパーもそれほど多くはない。

スーパーマーケットの名前が入ったプラスチック製の買い物篭を抱え、基喜は一目散に洗い場を目掛け走り去った。

写真は参考

「オニイチャン。ミオもホウチョウでお野菜切るの!」。

美代はまだ幼稚園の年少さんのため、母音と子音の区別がつかずミヨをミオと呼んでしまう癖がある。

「ミヨちゃんがお野菜切るのは、ちょっと危ないんじゃないでしゅかあ!」。

裕也は弟の基喜に接する態度を豹変させ、思わず鸚鵡(おうむ)返しに幼児言葉で応えた。

「いやッ!ミオもホウチョウしゅるもん!」。

美代は今にも泣き出しそうな目で、裕也を見詰めた。

「わっ、わかったから、泣いちゃだめだよミヨちゃん。後でお兄ちゃんと一緒に、ニンジンさんを切ろうネッ!」。

写真は参考

裕也は美代の正面にしゃがみ込んでなだめた。

「いやッ!ミオ一人で出来るもん!」。

「だ、だって・・・もしも包丁でお指とか切っちゃったらさあ、お指から真っ赤な血が出ちゃって、イタイイタイになっちゃうよ。だから・・・ネッ!」。

ビェーン ビェーン ビッエーン

美代は立ち尽くしたままの姿勢で、大声を張り上げて泣き出した。

それまでカナカナカナと木立で泣き続けていた蜩時雨が、一瞬やんだ。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.18

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「あっ、ちょっと待ってな」。

事務員はそうつぶやきながら、傍らの電話機を取り上げた。

写真は参考

「ああ、こんにちは。駅前の観光協会ですけどなあ、すんませんけど今日の予約に・・・」。

事務員は受話器を手で塞ぎ、木乃葉と老人に尋ねた。

「なんという方でしたやろか?」。

「モッくん!」。

木乃葉が元気よく応えた。

「モッくん?いやそうじゃなくて、苗字は?」。

事務員は優しく木乃葉に尋ねた。

「苗字は、大橋」。

「どこからおいでたんやろか?」。

再び事務員が尋ねた。

「名古屋市〇〇区ですわ」。

老人が木乃葉に代わって応えた。

「すんません、お待たせして。名古屋市〇〇区の大橋さんという方の予約入ってませんやろか?」。

事務員は受話器を塞いだ手を外して、電話口に向って告げた。

「アッ、ハイ。5人の予約が・・・」。

事務員は受話器もそのままに木乃葉に尋ねた。

「大橋さんて方の予約5人さんで入ってるそうなんやけど?それで間違いあらへんやろうか?」。

「うん!モッくん家は5人家族だもん」。

「どうもありがとうございました」。

老人は事務員に深々と頭を下げた。

木乃葉も老人の傍らで、ぎこちない姿勢で頭を下げた。

「こっから砦岬までやったら、あそこのロータリーからバスが出とるで、あれん乗ってったら直ぐやで」。

写真は参考

事務員は親切にも案内所の外まで木乃葉と老人を見送りに出て、ロータリーのバス停を指差した。

「砦岬いうんわな、戦国時代のむかし、ここらを治めておられた九鬼水軍の砦があった場所なんさ」。

写真は参考

大下大サーカス伊勢公演の宣伝が印刷された団扇が、事務員の言葉に合わせてパタパタと音を立てた。

「あっ、それっ!サーカスの・・・」。

写真は参考

木乃葉は団扇を指差した。

「ああ、これかいな。今日まで伊勢でサーカス公演があってな、それの宣伝なんさ。これ、欲しい?」。

「う、うん。でもおばちゃんの大事なモノでしょう」。

木乃葉は遠慮がちにつぶやいた。

「ええんさ。こんなんまだ仰山あるし。さあ、もろとき」。

事務員は木乃葉の手に団扇を握らせた。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.17

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「ごめんくださいな」。

老人は駅前の外れにある観光案内所の、重そうな引き戸を軋ませながら開け、中を覗き込んだ。

写真は参考

「はいはい、只今。ちょっとお待ちを」。

カウンター奥の事務机で、パソコンの画面と向かい合っていた、50代前半と思われる事務員が“ドッコラショッ”と大儀そうに立ち上がり、老人と木乃葉の前へとやって来た。

「あらーっ、おじいちゃんと旅行?いいわねえ」。

事務員は老人に手を引かれて立ち尽くす木乃葉に問い掛けた。

「・・・・・」。

木乃葉は何と答えるべきか思い悩み、老人の顔を見上げた。

「お宿でもお探しやろか?」。

今度は、老人に事務員が問い掛けた。

「あっ、い、いや。オート・・・なんちゅうたかいなあ・・・コンチャン?」。

老人は木乃葉に助けを求めた。

「オート・キャンプ場でしょう」。

ぶっきらぼうに、木乃葉は応えた。

「まあ、ハイカラなおじいちゃんだこと!オート・キャンプなさるんですか・・・ヘエー」。

事務員は勝手に、一人合点している。

写真は参考

「いっ、いや、わしらは・・・その・・・」。

老人は照れながらしどろもどろになった。

「お友達の家族がオート・キャンプに来てるんだけど、その場所がわからないの」。

木乃葉は気忙(きぜわ)しそうに用件を告げた。

「場所かいな・・・この辺にはなあ、オート・キャンプ場が6箇所あるんやさ。なんちゅうキャンプ場か、名前は知っとんかいな?」。

老人は新聞の切抜きを、ポケットから取り出し読み上げた。

「・・・三重県英虞湾のキャンプ場に・・・」。

「英虞湾のキャンプ場ゆうたら、・・・そうさなあ、ここの砦岬オートキャンプ場と違うやろか?」。

写真は参考

事務員は観光案内マップを取り出し、その中の一箇所を指差した。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.16

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「怖い夢でも見たのかい?」。

「うっ、ううん」。

“間も無く志摩磯部。志摩磯部です”

写真は参考

「さあ、いよいよ救助隊の出発だ!」。

「救助隊って?どこに?」。

「救助隊は、コンチャンとこのわしじゃよ!」。

「ええっ!たったの二人っきりなのに?」。

「二人っきりでも救助隊っていうと、ちょっとは勇ましくって、お友達を救ってやれそうじゃないか」。

「まっそう言われれば・・・」。

「心配かい?」。

「ううん!ぜんぜん、OK!わかった、ラジャー!」。

木乃葉は老人の方を向き、背筋を伸ばして敬礼をした。

志摩磯部駅の改札を抜けると、スペイン村や合歓の里など、観光地の案内が木乃葉の目に飛び込んできた。

写真は参考

「あっ、サンチョパンサだ!」。

「コンチャン。そんな場合じゃないぞ!急がないと」。

「急がないとって、おじいちゃんキャンプ場の場所知ってるの?」。

「いいや」。

「いいやって・・・じゃあ、どうやってモッくんを探すの?」。

「まあそう慌てなさんなって」。

「慌てるなって・・・、さっきは急げって言ったくせに」。

「そうじゃ。わしは、確かにそう言った」。

「そんなの変だよ!」。

「いやちっとも変じゃない。昔の人は、急がば回れと言うたものじゃ」。

「何それ?」。

「急いでいると、多少危険があっても近道をとりたくなるものじゃが、そんな時こそ少し回り道になっても、安全な道を選んだほうが確実に目的地に着くいう(たと)えじゃ」。

「何か変なの・・・」。

「変じゃない。急いでいるから、次どうすれば良いか、次どっちに行けば良いのかを慌てずに考える。もし間違ってしまったら、急いでいるのにちっとも目的地に辿り着けんじゃろう」。

「そっか・・・。で、どうするのこれから?」。

「そうじゃなあ。まずこの新聞にある英虞湾のキャンプ場というのが、一体いくつあるのかを調べねば」。

写真は参考

老人はそうつぶやいたと同時に、木乃葉の手を引いてスタコラサッサと歩き出した。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.15

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

ピッピッピッピッ

写真は参考

「コンチャン。もうジイジとは、これでお別れだよ」。

「さあコンチャン、ジイジの小さくなっちゃった手、握ってあげよう。サヨナラって」。

ママはハンカチで目頭を押さえた。

「ねぇ、パパ、ママ?もうこれからずーっと、ジイジとは逢えなくなっちゃうの?」。

「このピッピッって音が止まって、ピーッって鳴ったらジイジは天国に行っちゃうんだよ。だけどね、パパは天国ってそんなに遠い所じゃない気がする。だからジイジは、いつだってコンチャンのお側に居て、コンチャンを守ってくれるんだよ」。

「そうよ!ジイジはコンチャンのこと、大好きだったでしょう」。

ママはまた目頭をハンカチで覆った。

ピッピッピーーーッ

「ジイジー!嫌だ!天国なんて行っちゃ!」。

「おおい、コンチャン。大丈夫かい?なんだか夢にうなされておったみたいじゃが?」。

「エエッ・・・?」。

写真は参考

老人の横、通路を隔てた席の子供が、突然「ピッピッピーーーッ」というエラー音を発し、鳴り止まなくなってしまったポケットゲーム機に八つ当たりをした。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.14

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

愛知県と三重県との県境に横たわる、木曽・長良・揖斐の三川が車窓を横切る。

写真は参考

指定席の窓側に座った木乃葉は、座席の上に正座した状態で車窓からの景色を眺めていた。

「幕の内に松坂牛のステーキ弁当、コーヒーにジュースは如何ですか?」。

前方から車内販売の声が聞こえた。

写真は参考

グッググゥー

「あっ、あれ・・・?今鳴ったの、コンチャンのお腹かい?」。

「・・・」。

「そうか、もうすぐお昼だもんな。じゃあちょっと早めに、お弁当でも食べるとするか」。

老人は車内販売のワゴンを止め、松坂牛のステーキ弁当と幕の内弁当、それに缶入りのお茶を買い求めた。

写真は参考

「わしゃあ入れ歯だし、肉は噛み切れんから、コンチャンがステーキの方を食べておくれ」。

写真は参考

「ウッワーイ!コンチャン、ステーキ大好物!お肉だったら一杯いっぱい食べられるんだよ!いつもパパの分まで平らげちゃうんだもの」。

「そうかい、パパの分までなあ。コンチャンのパパは、ちょつと太り気味じゃから、ステーキでこれ以上栄養付ける必要もないからのう」。

「ええっ!おじいちゃん、コンチャンのパパ知ってるの?」。

「うっ・・・ううん。いっ、いやきっとそんな気がして・・・さあ、そんなことはどうでもいいから、温かい内にお食べ」。

「うん!」。

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。

7歳の娘に毎日送ったハガキ~132通の物語『明朝新聞(みょうちょうしんぶん)』No.13

「KIRIN BEER PRESENT’S オカダミノル ほろ酔いLive 2023 in C♭」2023.04.16開催

「ゴ、ゴモ・・・ラ・・・ン?」。

写真は参考

まだ歩き始めたばかりの木乃葉は、お気に入りのぬいぐるみをそう呼び、どこへ行くにもそれを握り締めていた。

だが著しい成長を続ける今の木乃葉にとって、それは果てしなく遠い記憶であった。

しかし鈴の音は、記憶の欠片の一つを確かに甦らせた。

老人はタクシーを止め、木乃葉を後部座席の奥へと押し込んだ。

写真は参考

かすかに線香の香りが漂ったように、木乃葉は感じた。

写真は参考

“パパの膝の上に座って、ばあちゃんとじいちゃんに南無、南無、南無をするときの匂いと同じだ”

タクシーは名古屋駅へと走り出した。

二人は名古屋駅から近鉄特急に乗り込み、一路志摩半島を目指した。

写真は参考

このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。