
コンビニの周辺には、警察車両と機動隊のバスが赤色灯を点灯させ、物々しい警戒態勢が敷かれた。

猛獣車の檻を検証していた、如何にも強面の刑事が、3人に詰め寄ってきた。
「ホラッ、檻の鍵が圧し折れて、この通り荷台に転がってたよ」。
強面の刑事が白手袋に包まれた掌を開き、圧し折れた南京錠の破片を示した。

「熊と虎を輸送するにしちゃあ、貧弱すぎる檻だし、鍵もこんな安物の南京錠だ。別に猛獣なんかじゃなくたって、こんな赤子騙しじゃあ、逃げ出してあったりめぇだぜ」。
刑事は大仰に顔をしかめながら話を続けた。
「ウッワーッ!それにしても何とも獣臭ぇなあ、まったく!おいっ、何とかならねえのかよ!俺は大嫌いなんだよ、このションベン臭ぇ獣の匂いが」。
刑事は腹立たしげに、トラックの後輪を蹴り上げた。
「しかし、いくらドサ回りのサーカス団とはいえ、こんなずさんな檻と鍵じゃあ、管理不行き届きもいいところだぜ。これで罪もねぇ一般市民が巻き添えになって食い殺されちまったりしたら、犯罪だよ、犯罪!」。
「ど、ドサ回りだ・・・!」。
満は刑事を睨み付けた。
「じゃあ違うとでも言うのかよう!熊だの虎だのに、くっだらねぇ芸教え込んで、そいつを見世物に年寄り子供からあこぎに銭ふんだくってんだろうよ」。
「くだらない芸じゃないわ!」。
麻美が満の前に割って入った。
「おっ、なんだいお嬢ちゃん、いきり立っちゃって。そんな仏頂面じゃあ、せっかくの美人も台無しだぜ」。
「熊のテディは、自転車だって、一輪車だってちゃんと乗りこなせるわ!それに虎のティグは、とっても勇敢で火の輪くぐりだったら誰にも負けないわ!」。

「そうだよ!お姉ちゃんの言う通りだいっ!」。
卓磨も前に進み出て、麻美の手をしっかり握り締めながら刑事を睨み付けた。
このブログのコメント欄には、皆様に開示しても良いコメントをドンドンご掲示いただき、またその他のメッセージにつきましては、minoruokadahitoristudio@gmail.comへメールをいただければ幸いです。