「聞こえないほどの小さな拍手」⑤


自分の出番まで、どうにも落ち着かず、如何にしてこの難局を切り抜けるべきか、ただただそれだけが頭の中を駆け巡っていたようです。

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しかし、運命の時間は容赦なくやって参りました。

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ぼくは、自分のオリジナル曲の、ラジオの深夜番組のテーマソングとして今流れている曲から唄い出し、自分のペースを作って、少しでも自分に有利な展開へと持ち込み、それから不得手な演歌を唄うつもりでいたのです。

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ところが50代後半以上の、一番ラジオの深夜番組になど縁遠い人たちを相手に、そんな姑息な手など通用するはずもなく、トイレに立つ人やら、あくびをここぞとばかりにする人たちで、すっかりぼくが想定したペース配分など脆くも崩れ去り、惨憺たる有様となってしまいました。

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「聞こえないほどの小さな拍手」④


会場内に張り出されているプログラムを、こっそり盗み見てこれまたビックリ!

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何とこの集会は、「リウマチ友の会主催の療法研究セミナー」だったのです。

だからそこに集っている方々は、どこかかしらリウマチを患っておられる方々ばかりだったのです。

そのプログラムによれば、第一部、第二部共に、どこそこ医大の教授が「どこそこ温泉の湯が、何とかのリウマチにとても効果がある」とか、スライドを使って、治療方法の説明が行われ、第三部の講義との間に小さく「余興/歌」と表示されているじゃないですか!

実は何を隠そう、その「余興」こそがすなわちぼくのその日の歌の仕事であったのです。

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まぁ、高価な懐石料理の間に供される、箸休めのような、そんなあっても無くてもさほど意味を持たないような存在。


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「聞こえないほどの小さな拍手」③


しかしチェー万と言えば一万円也であり、当時のぼくにとっては、それはもう大変ありがたい仕事であったのです。

その日は、名古屋で著名なパーソナリティーの方から、直接仕事の依頼をいただけた事と、破格のギャラに酔いしれ、後の事を考える余裕さえありませんでした。

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当日になり、名古屋国立病院の講堂へと、指定された時間に伺ってビックリ仰天。

何とそこには満員のお客様。

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しかし!

その多くのお客様を一目見て、ぼくの歌などとても太刀打ち出来ぬと尻込みしたほどです。

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その多くのお客様は、どう贔屓目に見たところで、50代以上の年配者ばかり!


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「聞こえないほどの小さな拍手」②


それからしばらくして、名古屋で著名なラジオのパーソナリティーの方から、ぼくのボロアパートに突然電話が入ったのです。

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「ああ、オカダ君。

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次の日曜日だけど、仕事の依頼があってさ、君にぜひ唄って欲しいと言うスポンサーがあるんだけど。

君、都合はどう?」

と言った内容で、ぼくは一も二も無く「はいっ、喜んで唄わせていただきます」と答えました。

すると「ああ、そう。

それは良かった。

ギャラはチェー万(業界用語で、ド・レ・ミ・ファの音階を、チェー・デー・イー・エフと置き換え、チェーが1、デーが2、といったように使用する)で、会場は名古屋国立病院の講堂だから。

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それから持ち時間は20分。

それから中には年配の客もいるから、オリジナル曲だけじゃなく、適当に演歌なんかも混ぜて頼むわぁ。

じゃあ、そんなわけでヨロシク!」と、半ば一方的な依頼でした。


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新シリーズ「聞こえないほどの小さな拍手」①

今日から始まります、「聞こえないほどの小さな拍手」は、35歳の頃に書いたエッセイです。

文中に登場する名古屋の著名なパーソナリティーS.Aさんも、昨年鬼籍に入られました。正直、随分遠くまで来てしまったなぁと、日々痛感するばかりです。

それではごゆるりとお愉しみください!


それは、ぼくがまだシンガー・ソング・ライターになることを夢見ていた、遠い昔の出来事でした。

参考

ですから、今から(このエッセイを書いた35歳の頃)もう15~16年も前のことです。

当時、シンガーとしてのぼくの収入など、言うに及ばず悲惨なほど少なく、その日歌を歌いに出向くためのバス代さえ事欠き、単行本を古本屋に売って、やっとのこと交通費を工面するような有様。

参考

そんな頃、名古屋のラジオ局からお話があり、深夜放送の番組で使用する、中高生を対象とした「修学旅行レポート」のコーナーの主題歌を依頼され、少しはプロ・シンガーへのチャンスが巡って来たものと大喜びしたものでした。

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特にその歌がラジオから流れて来た時は、思わずラジオの前で正座して釘付けになって聞き入ったと記憶しております。

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「転生の追憶」94話(最終回)

「ボーッと黄昏れてんじゃねぇよ~っ!中高年癒しの楽園ラジオ」FM WATCH 78.5MHz 毎週火曜日15:00~16:00で始まりました‼(※詳しくは、6月19日のブログをご覧ください)※再放送は、毎週火曜日の19:00~20:00です!

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「転生の追憶」94話

「香港の逆襲以来、龍之介の夫婦仲は納まらず、目下別居の離婚調停中。

それよりも自分の内部に秘められていた性に、すっかり目覚めてしまった龍之介は、メイ・ファンにぞっこんで。

メイ・ファンを日本に呼び戻したい義之君と相談して、一肌脱いだってわけさ。

日本に戻っても、女として生きていきたいメイ・ファン。

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逆にこれからの人生、メイ・ファン無しでは生きられない龍之介。

それならってことで、龍之介の秘書として採用しようって事で、シャンシャン。

双方の思惑が見事一致したってわけ。

まあ今じゃあ、どっちが社長なんだかわかんなくなっちゃったけど」

宮脇は大声で笑い飛ばした。

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「あの二人もやっぱソウル・メイト?」

「かもなあ。

だとすりゃあ、俺もそろそろ次の再就職口探さなきゃ。

あんな社長じゃ、この先やってられそうにないし」


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「転生の追憶」93話

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「転生の追憶」93話

「次のアポに遅れるじゃない!

モタモタしないでサッサとしなさい!」

何処かで聞き覚えのあるバリトン声が、ロビーに響き渡った。

皮製のブリーフケースを小脇に、長身のスレンダー美女がピンヒールの音を響かせ、颯爽と現われた。

写真は参考

膝上二十㌢以上はあろうかと思われる白いミニスカートに、真っ赤なブラウス。

その後を小走りに龍之介が追った。

「あれが新しく社長秘書に採用されたメイ・ファン」

参考

宮脇が恵美に告げた。

「メイ・ファンってもしかして」

「あれっ?

義之君から何も聞かされなかったのか?」

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美恵は開いた口も塞がらず、メイ・ファンと龍之介の後姿を見つめ続けた。


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「転生の追憶」92話

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「転生の追憶」92話 

「何がどうなってるのかさっぱりわからない」

「課長の時計には、課長と奥さんの写真。

そして私のには、私と義之の写真。

ってことは、半世紀前に同じように同じようなからくり蓋のついた特注の懐中時計を作ったカップルが、二組いたってこと?

参考

あれから何だかそのことばっかりが気になって」

美恵はアイスティーを、一口飲み干した。

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「いや、そうじゃない。

半世紀前にからくり蓋の懐中時計を作ったカップルは、ぼくと君の前世だったのさ。

しかし何らかの事情でその前世を終え、再びこの世に生を受けた。

ぼくと君がソウル・メイトであることはほぼ間違いないだろう。

写真は参考

しかし今生では、君は義之君と歩み、ぼくは妻と歩むという目標を持って生まれてきたと考えるべきなのかも」

「じゃあ勝手に時計の裏側の写真が、入れ替わっちゃったってこと?」

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美恵はどうにも納得がいかないようだ。

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「転生の追憶」91話

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「転生の追憶」91話 

◆   ◆   ◆

宮脇の会社のティーラウンジ。

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「これハネムーンのお土産」

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「どうだった」

「うん、それなりってとこかな?」

「これっ」

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宮脇も美恵も懐中時計を取り出した。


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「転生の追憶」90話

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「転生の追憶」90話 

『ソウル・メイト、つまり魂の仲間。

ソウル・メイトは互いに何らかの関係を保ちながら、互いの魂が成長し合うように影響力を持つ。

参考

ソウル・メイトには、善人ばかりとは限らず悪役も含まれているんだ。

つまり三角関係の妻と愛人の場合とか。

参考

前世では愛人と夫が夫婦で、そこに現在の妻が横恋慕して三角関係になっていたとか。

魂はこの世に生まれ出でる前に、今生で何を学ぶか自分でテーマを決めるそうだ』

『自分の魂が今生において描いたシナリオは、残念ながら現世をこうして生きている君やぼくにはわからないのさ。

写真は参考

ぼくらにとってはまるで「偶然が紡ぎ合わされたような人生だった」としても、それが今際(いまわ)の際になって初めて自分の魂が予め描いたシナリオだったと気付くかも知れないけど』


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