「転生の追憶」59話

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「転生の追憶」59話 

「『世界中にたった二つしかない時計だから、互いに引き寄せあったのだろう』って…なんか香港の裏通りのバザールで、アラジンの魔法のランプでも見つけたような不思議な気分だ」

写真は参考

宮脇と美恵は、懐中時計を互いの手のひらに収めてみた。手巻きの懐中時計は、おそらく何十年とリューズも巻かれず、動きを完全に封じ込めていたはずだ。

しかし僅かに揺れる小さな振動を、二人は掌の中にはっきりと感じとった。

写真は参考

「ええっ、うそ!動いたみたい!」

「俺の方も確かに今」

そんな馬鹿な。不思議な感触が押し寄せる。

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初めて手にした時計なのに、二人の肉体とは隔たる聖域で、遠い日の何かが目覚めようとしていた。


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「転生の追憶」58話

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「転生の追憶」58話 

「どんな人が使ってたんだろう?」宮脇の肩越しに美恵が覗き込む。宮脇が美恵の疑問を、店主に投げかけた。店主は店の奥から、古めかしいノートを取り出してきた。

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「誰と誰のペアウォッチだったかまでは、わからないそうだ。でもこの店に再びこの時計が持ち込まれた記録は残っているそうだ。男物の方は、第二次世界大戦後間も無く香港の老婦人の手で、この店に持ち込まれたらしい。

参考

もう一方の女性用は、それから十年ほどたった一九五六年に、日本の業者の手を経てこの店に持ち込まれたそうだ」

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「なぜ片方が香港で、もう一方が日本だったのかしら」美恵は急に興味をそそられたようだ。


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「転生の追憶」57話

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「転生の追憶」57話 

宮脇の目は一点に集中したまま固まった。視線の先には、濁って鼠色に変色した、銀製と思われる二つの懐中時計があった。

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宮脇は美恵を引き連れ、店の中へと入っていった。

広東語で店主となにやら会話を始めると、ショーウィンドーの中から懐中時計が取り出された。

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「これは一九三七年頃、この店で特注品として作られたものだそうだ。この店は当時、イギリスの時計メーカーの代理店もやっていた。イギリスから時計職人が招かれていた時代に、作られた手作りの代物だそうだよ。今はもう錆び付いてしまい、開かなくなったそうだが、文字盤の裏側にからくり蓋があって、そこに写真が収められるような仕掛けになっている。

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いずれにしても特注品だから、この世にたった一組のペアの懐中時計だそうだ」


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「転生の追憶」56話

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「転生の追憶」56話 

◆   ◆   ◆

キャットストリートの雑然とした街頭。

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宮脇は美恵を気遣うように進んでいった。食料品から電化製品、宝飾品や漢方食材店や食堂が、所狭しと軒を並べる。喧噪に咽返る裏通りが少し怖いのか、宮脇の腕に回した美恵の手にも力がこもった。

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一軒のアンティークショップの前で、宮脇が不意に立ち止まった。煤けたままのショーウィンドーの中には、縁のかけた青磁の湯飲みや壷、それに大ぶりの中華刀から銀細工を施した鳥篭まで、雑然と散らかっている。

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さらにそれらの間には、変色して伸びきったままの輪ゴムで、無造作に束ねられた旧日本軍の軍票の札束が、渦高く積み上げられている。

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「転生の追憶」55話

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「転生の追憶」55話 

しかし翌日には、安形の姿はもうその店から消えてしまっていた。

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義之はその後も新宿二丁目のゲイバーを訪ね歩いては、安形の行方を追ったそうだ。最近になって、香港で安形を見かけたという風の噂を耳にし、今回の出張を利用して、ついに安形を探し当てたんだそうだ」

「でも『日本に一緒に帰ろう!そしてもう一度やり直そう、二人で…』って…」美恵の心の中のわだかまりは、未だ晴れそうにない。

「それは義之君が友人として、安形をこの世界から救い出そうとして…」

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「あーあっ、もうどうでもいいっ!もう、何が何だかサッパリわかんない」美恵はしばらく地上の雑踏を見つめたまま、吐き出すようにつぶやいた。

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「転生の追憶」54話

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「転生の追憶」54話 

「安形が何軒目かのゲイバーに勤めていた二年前、会社の上司に連れられて義之がやって来た。義之は直ぐに安形であることを見破ったらしい。それから義之は毎日店を訪れては、安形に改心を求めたという。

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義之は大学一年のとき、安形に誘われ一度だけ彼の実家に遊びに行ったことがあったそうだ。安形の行方が知れなくなり、安形の両親が息子の安否を気遣い上京した。義之は安形の両親を引き連れ、当ても無く心当たりを探し回ったという。

参考

丁度二年前の再会時、安形の父親は脳梗塞の後遺症で、右半身麻痺の足を引き摺っていたそうだ。

参考

一人息子の行方を何とか探して欲しいと、安形の母は再三電話で義之に懇願したそうだ。そんな中、安形と再会した義之は執拗に郷里に一度戻るよう説得した。


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「転生の追憶」53話

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「転生の追憶」53話 

トラムが山麓駅に到着した。セントラルのオフィス街まで、二人は寄り添うように坂を下った。

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いつしか宮脇の腕に、美恵の腕が絡んだ。ごくごく自然に、昔からの恋人同士のように。

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グランドレベルまで、束の間の恋人気取りで、二人は見知らぬ人々の間を歩いた。

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ションワン行きのトラムに乗り換え、二階席に陣取った。


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「転生の追憶」52話

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「転生の追憶」52話 

タクシーは、ピーク・トラムの山頂駅に滑り込んだ。宮脇は美恵を伴い、下りのトラムに乗り込んだ。

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「それに今度の結婚も、罰ゲームなんかじゃないさ。言い忘れちゃったけど、さっきリーさんから電話があった。メイファンを起用したのは、リーさんだから。昨日メイファンの素性について調べるよう頼んでおいたんだ。リーさんはさっそくゲイバーを探し回って、直接メイファンを探し出し、事情を聞いてきてくれた。

メイファンってのは、香港での源氏名で、本名は安形大二、二十七歳。和歌山県出身。義之君と同じ大学で、共にフットボール部に所属していた。

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最初の一年は、寮も同じで何処に行くのも一緒、学問とスポーツに明け暮れる普通の大学生だった。しかし二年目になると、安形は講義もろくに出なくなり、フットボール部にも全く顔を出さず、いつしか寮を出て行ってしまったそうだ。義之は親友を心配し、随分探し回ったようだ。

当の安形は、フットボール部の先輩に連れて行かれた、新宿二丁目のゲイの世界で、自分の中に眠っていた『女』の性が芽生えたらしい。

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そのまま怪しいネオンに惹かれる蛾のように、新宿二丁目に吸い寄せられて行った。安形は身も心もすっかり女になっていったそうだ」

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宮脇の告げる一語一句を美恵は、固唾を呑んで聞き入っていた。

参考


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「転生の追憶」51話

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「転生の追憶」51話 

「ぼくに怒りをぶつけて楽になるんだったら、それでもいいさ。ぼくだって男の端くれのつもりだ。だから美恵ちゃんのような美人を、この腕で組臥したいと思ったさ。しかし、二度ともぼくは据え膳に箸も付けなかった。ぼくはそこにこそ、ぼくの魂が描いた今生でのテーマが隠されている気がしてならないんだ。

参考

二度あることは三度あるとか。もし今生でもう一度、君と二人っきりになるという、偶然という名の必然が待ち受けていたとしたら、今度こそ何も躊躇うことなく、君を口説き落として見せるまでさ。例え八十に手が届きそうなほど、(よわい)を重ねていたにせよ。

参考

それがぼくの魂の仰せとあらば」宮脇は美恵の顔を覗き込んだ。

「何か態のいい、言い訳って感じだけど…」


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「転生の追憶」50話

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「転生の追憶」50話 

「さっきも言ったけど、『偶然が紡ぎ合わされて必然となる』ってこと。

参考

目の前に現われた、自分の願望とは一見とても程遠い物として映る試練も、自分の魂が描いた人生と言う名の物語の結びには、欠かせないことかも知れないんだ。

少なくともこの(うつつ)の世においては」

「じゃあ、本心から抱かれたいって思った相手に、二度も振られたこと。

フィアンセのおどろおどろしい男色スキャンダルも。

参考

今まで親任せで、のほほーんと生きてきてしまったわたしの、みーんな、みーんなまとめて、罰ゲームとでも言うつもり?」

参考

美恵はわざとらしく、ちょっと脹れて拗ねる振りをした。


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